第16話 女心を何も分かってないんじゃないの

 最近は簡素で親兄弟だけというものもある。親でハッとなった。

 親=両親である。しかし母が居ない。死別なら仕方ないが、これを息子は彼女にどう説明しているのであろうか。この場所に孝之の母が居ない事になんの違和感を抱いていないようだから、既に事情は話してあると思われるが。孝之の話では来年の五月頃を予定していると云う。

 そうなると遅くとも正月明けに、相手の両親へ挨拶に出向かなくてはならないのだが。


「お父さん、なにを心配しているの? はぁお母さんの事でしょう」

 香織に心の中を覗かれたような気分だった。

「な! なにをつまらないことを……」

「心配しないで、私が連絡してみるから」

「お前知っているのか?」

「だって娘だもの。私にだけは教えてくれているもの」

 予想していないことだった。しかし今は香織を頼るしかない。離婚しても親として子供への、最後の務めである。先のことは分からないが、せめて息子が晴れて結婚するのだ。祝ってやるのが親だろう。


 

 思わぬ展開となった。娘の香織が兄の結婚式へ、母の出席を交渉すると買って出た。

 妻が離婚届を出した時、俺は正直なにも言えなかった。浮気して子供まで作り、おまけに家庭を顧みない俺だ。いつかはそんな日が来てもおかしくないと思っていた。

 それは全てに置いて自分に非があると思っていたからだ。

 娘に以前言われたことがある。『お父さんは女心を何も分かってないんじゃないの』と

 その意味が最近になって少し分かったような気もする。

 あの時、『俺が悪かったこれからはお前の為に尽くしから別れないでくれ』そう云うべきだったのか?


つづく

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