第14話 東京に戻る

 病院から帰り、幸造に息子が結婚するらしく忙しくなりそうなので予定を変更して東京に帰ると伝えた。

「へぇ~息子さんが結婚するのかい。それは目出度いね」

幸造はおめでとうと言ってくれた。まだ半年以上もあるしもう少し泊まって行けと引き止めたが、しかしいつまでも長居する訳にも行かない。息子の孝之が近い内に彼女に会ってくれと言っている。やはり東京に戻らなければならない。娘の香織とも話し合い孝之の婚約を祝ってやらないと思っている。たが幸造ら頼むからもう少し泊まって行ってくれと泣きつかれ、無下に断る訳にも行かず更に二日程お世話にった。まさかこんなに好かれるとは思わなかった。家族も孫も居るのに、腹を割って話せる友達が居なかったようだ。

 そして寂しがる幸造と翌々日の朝、互いの肩を抱き合い次の再会を楽しみに八戸を後にした。


 それから十和田湖や八甲田山を見物して帰途に着いた。

 たった一週間たらずの旅だったが、一ヶ月分にも相当する楽しさを味わえた事が嬉しかった。

 東京に帰ったが、窓が見えるスカイツリーの高さは変わっていなかった。しかし素晴らしい眺めだ。それから数日後、宅配便が届いていた。大きな箱に入った冷凍食品だった。なんと差出人は八戸の幸造からだ。イカ、帆立など十キロもあるだろうか。その中には手紙と写真が入っていた。二人で一緒に撮った写真と家族写真など。

『浅井さん、いや洋輔さんと呼ばせてくれ。あんたが居なくなり本当に寂しいよ。短い間だったけど楽しかったよ、友情の印として気持ちだけ魚貝類を送ったから食べてくれ。また会える日を楽しみしています、幸造』

 有難い人だ。本当の友達が出来た気分だ。早速お礼の電話を入れた。幸造は泣いて喜んでくれた。あの屈託のない笑顔が浮かぶようだ。


 一週間後、孝之から電話が入った。明後日、婚約者を連れて行くとの事だった。

 ボロアパートでは孝之にも婚約者にも申し訳ない。錦糸町にあるホテルのレストランを予約した。久し振りに俺は背広を来た。背広を着るとサラリーマン時代を思い出す。それと同時に気持ちまでシャッキと締まる思いがする。アパートに来た香織と一緒にレストランに向かった。

「どう? お父さんどんな気分」

「なんか妙な気分だよ。自分が母さんの家に行き、結婚の承諾を得るに行くような気分だよ」

「そうか、いつか私もそんな日が来るといいな」

「そりゃあ来るさ。でも君には家の娘はやれんって言うかもな」

「冗談はやめてよ。まぁまだ先だから」

「そんな先では困るよ。香織のことだからきっと良い人を連れて来るさ」

「ねぇ、お父さん。お兄ちゃんのお嫁さんになる人どんな人かなぁ。ドキドキするわ」


「そうだなぁ、お前の義理の姉さんになる人だもんなぁ」

「そうかぁ私に姉さんが出来るんだわ。今度はワクワクして来たわ」

 屈託のない娘の喜ぶ顔が可愛いい。久し振りに子供達との再会……しかし家族が一人足りない。ふっとそんな事が過ぎったが、香織に悟られまいと空を見上げた。

 真っ青な空の色が眩しいくらいだ。こんな青空の下で披露宴が出来たらいいのにと。想像してみた。

 最近の結婚式は洋風が好まれるらしく。昔と違い結婚式も随分と様変わりしたようだ。

 俺達世代の頃は神殿で行われた。今は結婚式場にある教会で式を挙げるか、キリスト教会で行なう方が多くなった。教会から出ると周りに出席者が花びらを巻いて祝福してくれる。青空の下で披露宴だ。芝生の覆われた中庭で披露宴よりパーティ形式なのか? まさに青空の下での結婚披露宴が浮かぶ。


つづく

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