道路標識②
三鷹が犬の散歩をしているおじさんと会った後いつもの道路標識を見つけた。
相変わらず普通の速度制限の標識の奴だ。
しかし何故か今日だけはいつもと違っていた。
言葉にして言うとしたら不思議な雰囲気がある道路標識だった。
至って普通なのに何故かこういう気持ちを抱いてしまう。
こんな気持ちは生まれてきた中で2回目だ。
1度目は小6の時にアイスが五連続あたりだった時だ。
スーパーラッキーなはずなのにずっと当たり続けるから少し不思議な気持ちになった。
このような懐かしさに浸りながら、三鷹はまた道を歩き始めた。
その時、
「アンさん、とても感が鋭いですな〜。」
後ろから声がした。
振り返るが誰もいない。
多分近くの家の人の話し声だろうと思った。
再度歩き始めた。
「アンさん、まちなはれ。ここにおるやないか!」
三鷹が振り返ると喋っていたのは道路標識だった。
「いぃぃーーーー。」
現実世界では考えられないことに対して驚いてしまった。
「あーー申し遅れてもうたわ、私は道路標識協会の標蔵といふ者や。何卒宜しゅう。」
まだ頭の整理がつかない。
何が起きているのか、そして何故標識が喋るのか。
「まぁーそうなってもしかたねーですわ。今の時代は頭が柔らかくないと生きていけませんで〜。 」
何も言葉が出なかった。
大体こんなものは可笑しい。絶対あり得ない。
人工物が喋る?そんな事あるわけない。
けど今それを目撃している。
三鷹にとって今までにない新鮮な光景だった。
そして同時に興奮も覚えた。
何故か。不変な世界がたった今無くなったからだ。
これ以降三鷹は標蔵に興味を持ち始めた。
そして三鷹は道路標識に現在の自分の生活について話した。
「ふむふむなるほど。貴方は要するに今の人生が不変過ぎて飽きてしまったということですね。」
「はい」三鷹は力強く言った。
「ならばいっそー道路標識になってみやせんか?」
うん?唐突過ぎて聞き返してしまった。
「やけんがいっそー道路標識になってみやせんか?」
「まぁ私達の協会は勧誘も承っておりやすので。勿論給料もあんさんにやるで~。」
ちょっと待てよ。道路標識になる?どういうことだ?
魂が抜かれるのか?それとも人間が道路標識になるのか?
何が何だか分からず考えているうちに寒気がしてきた。
その後三鷹は怖くて標蔵の提案に断ってしまった。そして逃げるように会社へ行った。
「ア~、行ってもうた。勧誘向いてないんか?」
標蔵は困りながら、逃げていく三鷹を見ていた。
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