第三十一話  第三回戦 終了

 残るは、ライフルを持っている二人の敵キャラだ。二人とも当然、俺のキャラの位置が把握はあくできて攻撃を受けにくい、建物たてもの屋上おくじょうにいた。


 俺はまず、俺のキャラの近くにある建物の屋上にいる、敵キャラからたおすことにした。建物の中に入ると、敵キャラがいないか慎重しんちょう警戒けいかいしながら建物を上った。


 敵キャラがいるせまい屋上までのぼってしまえば、射程距離しゃていきょりが短いピストルの方が有利だと思ったからだ。すると敵も、バカではない。屋上からりてきて、階段かいだん途中とちゅうから攻撃してきた。


 俺は、俺のキャラを建物の中にある物陰ものかげかくした。ライフルは、射程距離が長い。だが狭い建物の中では、それは不利ふりになる。俺は敵キャラに近づき、連射れんしゃできないライフル相手にピストルで連射攻撃をして倒した。ライフルは、射程距離が長い。だから離れた建物の屋上から攻撃されると、手も足も出ない。


 だが連射が出来ないのでこうやって近づいてしまえば、連射が出来る武器の方が有利になる。俺はこれからも『アーツ』では、ライフルを使おうと思っている。やはり射程距離の長さが、魅力みりょくだからだ。でも、連射は出来ない。だからライフルを使う以上、敵キャラといかにして距離を取るか、連射が出来ない欠点をカバーすることが重要なんだなとあらためて思い知らされた。


 そして俺はもう一人のライフルを持った敵キャラも、建物の中で接近戦に持ち込んで連射して倒した。そしてゲームは、俺の勝ちで終わった。一安心していると一応、伊留美いるみはねぎらってくれた。

「そう。普通はやっかいな敵から倒すのが、必勝法。でもこのゲームでは、そうとは言い切れない。倒しやすい敵から倒して、敵の数を減らした方が有利になる場合もある。状況に応じて倒すべき敵を決めることが、大事なの」


 そう聞いて、俺は感想をらした。

「なるほどな。このゲームって結構けっこう、頭を使うんだな……」


 すると伊留美は、冷静に答えた。

「その通り。しかも戦う場所でもまた、戦術せんじゅつは変わってくる。このゲームは、もちろん考えなしに攻撃して勝てるゲームじゃない。それに強力な武器を持っていれば勝てるゲームでもないの。状況じょうきょうに合った戦術を考えられる、頭が良い奴が勝てるゲームとも言えるわ」


 俺は『スコーピオン』の国内ランキング一位の言葉を、かみしめた。

「なるほどな……」


 そして彩華あやかさんと景和けいわも、一人で五人の敵キャラを相手にする特訓を始めた。初めは負けてばかりいたが、先に倒すべき敵キャラを考えながら戦っていると、徐々じょじょに敵キャラを倒せるようになっていった。そして土曜日には何とか二人とも、五人の敵キャラを倒せるようになっていた。


 明らかに強くなった俺たちだが、四回戦では予想外よそうがい展開てんかいが待っていた……。

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