第7話 嘘でもいいから愛してください

 教室に戻るため、中庭を通り、回廊かいろうをぐるぐると歩き回る。


「まったく、この欧米風おうべいふうなんだか日本風にほんふうなんだかよくわからない回廊、

 お願いだから方向音痴ほうこうおんちのわたしに気を配って、矢印とか目印とか欲しいんだが」


 ひとりごとをつぶやきながら歩いていると、とある先輩がぶつかってきた。


 おぉ、女体にょたいは意外とやわらか


「また、あなたですか。


 はしたなく回廊を歩き回って。


 我が学園にふさわしくない!


 今日こそは学園を出てってもらいます!」


 で、でたー!学園ものによくいる、学園の秩序ちつじょを守ろうと勝手かってにうごいている、なぜか中途半端ちゅうとはんぱ権威けんいを持っている先輩〜!!


 でも、退学たいがくするかどうか決めるのは学園長がくえんちょうだし、なんだかんだ言ってここ名門だし、きっとだけど、どうせ権力者けんりょくしゃになるから、という理由で、調教目的ちょうきょうもくてきで、どんなにはめを外しても、破滅はめつフラグはたなびかず、ゆえに、何年も通ってないのに在籍ざいせきしている、10代以上の生徒もいるらしい。

 

 知らないけど。


「どうすれば、その格好を」


「あ、先輩も食べます?

 このハンバーガー。


 米粉こめこしか使っていないとは思えない

 質の高さ!

 

 先輩の肌のように、きめの細かい米粉を使っているからですよ」


 落ちたな。


 ちょろいな。


 だいたいの場合、女性はこういったほめ言葉になれていない。


 顔がいい、という理由で告白してきた女がいる目の前で、恋文ラブレターを破り捨てた男。


 隣に、正確には少し離れたところに、名門男子校があるのだが、そこに、男目当てで通う生徒はかなり多い。


 女子校だから悪い虫なんてつかないとお思いの良妻賢母りょうさいけんぼを求める保護者ほごしゃのみなさん!


 ビッチ、結構多いでっせ。


 なにせ、名門貴族だから、おこづかいもハンパない額があり、いくら連れ込み宿ラブホテルがなくても、そこらへんの老人に金を貸して、「名門校のものだが」といえば、部屋を貸してくれるので、女の子をはらませた男は数知れず。


 なんでバレないかって。


 そりゃ、酒を飲んで暴力を振るったら金で解決、示談金じだんきんそんな金!金!


 財布がすべてをにぎるのは、うつしよもこの、異世界も変わらない。


 ひどい世界だなぁ。


 もう少し、金で解決できない、道徳的な方法は、学校で学ぶ必要があるだろう、とは思っている。


 生徒の自主性?

 名門だから制服がない?


 結局、貧困層ひんこんそうをおいだして、金持ちだけで、富と知識、情報をひとりじめしていたいだけだ。


 ノブレス・オブリージュという名で、この名門校を出たら軍人になり、死んでいく。


 英霊えいれいといえば聞こえはいいが、結局は、白骨はっこつ無駄死むだじに、はっきりいえば、人間、生きてこそだろう。


 死体が、この下には積み重なっている、土の中からガイコツの、この世界を守ろうとした人間の声が。

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