第554話 贅沢2

北翔の宏介の所に技術指導に行く時に伊勢さんも衣装係で招聘されたり自分たちの東光祭まで時間あるとは言え忙しい日々。

毎日学校行って、バイトして、バスケして…普通に過ごしてたある日、珍しく帰り道に玲奈さんに出会った。


『玲奈さん!今帰り?』


『承くん?承くん!』


帰り道にコンビニ寄るとこだった玲奈さんをすぐそこだけど家まで送る。

…年末までにって宣言したものの…相変わらずロイン位しかしていない。


あれから10日ほど。

さほど変わったかとなんかありゃしない。

そんな世間話の中で、


『望が食いしん坊モンスターで困っちゃうよ。』


『ふふー!お兄ちゃんも食いしん坊さんでしょー?

修学旅行北海道だったもんね?望ちゃん駄々こねたんじゃない?』


見て来たように言い当てる玲奈さん。


『そうそう。大変で…

前の鉄板焼きもそうでさ?』


『あー…いっぱい写真撮ってたもんね?

美味しかった?』


『うん、美味しかった!

…望がそれで駄々こねて…今度鉄板焼き連れてくって約束させられちゃって…

そうだ…玲奈さん、どこか良いお店無いかな?

あれより少しお安いお店…俺がお金出せるレベルの…。』


思わず玲奈さんに相談してしまった。

…いや、ほんと何処が良いのかも値段もサイト見ても良くわかんないの!


玲奈さんは形の良い顎に指を当てて、


玲奈『ふむふむ…ここは玲奈お姉さんがなんとかしようかな♪』


『えっ?俺が望連れてくからお店紹介してくれれば…?』


玲奈さんはにっこり笑って、


『いいのいいの!任せて!

これこれこうだと…どうかな?』


『え?良いの?』


玲奈さんはいたずらっぽく俺が自転車を引いてる周りをくるりんと回って。


『まかせて♪

…で、日程だけど…土日のどっちか空いてるかな?』



☆ ☆ ☆

『本日はお招き頂きましてありがとうございます!』

『ありがとごじゃります。』


ぺこって頭を下げるのぞひー。

望は以前に伊勢さんに選んでもらった上下。スカート短く無い?

ひーちゃんは…なんか七五三の時ジャケット着用のおぼっちゃまスタイル。

日曜日の昼、俺たちはターミナル駅で待ち合わせた。


『可愛いね!望ちゃんもひーちゃんも!』


『『えへへ…♪』』


照れるふたり。玲奈さん提案でふたり連れてきてと。

玲奈さんは部活帰りらしい。

天月がターミナル駅にあるからね。

着替えて来たのか私服姿。

白いブラウスに水色ロングスカートにベージュの上着にベレー帽。

可愛い…!


ここはあの…お高い鉄板焼きのお店の真下。

…玲奈さんの勧めでまたここに来た。

ランチタイムは割安な事、優待券があり一万以上の飲食すれば5000円引き…。

どうゆう商売なんだろう。

このエレベーターみたいに耳がキーンってする。


高層階へすごいスピードで向かうガラス張りエレベーターにのぞひー大興奮!


『ハハッ、見ろ!人がゴミのようだ!!ハッハッハッハッハッハッ!!』

『ブロックのせかいみたい…!』



窓に齧り付くふたりを優しい目で見る玲奈さんが尊い…。

もし玲奈さんがお姉さんならきっと…世界一優しく有能な姉になるんだろうな。


お店のある階に着き店の前。


『ふふー!予約の立花です♪』

※初めて立花って名乗りました。

イメトレ通り自然でしたw


ウェイター『お待ちしていました、こちらへ。』


…この男の人も…また…手練れ。

動きが綺麗で所作が美しい。


窓の外が見やすいカウンターに4人で座る。

俺、ひー、望、玲奈さん。

って順番。


玲奈さんは望を見ながら、


『この間承くんが食べた品目が良いんだよねあ?』


『はい!テンダーロインとサーロインとガーリックライスとジェラード!

そして『ほあぐら』を…!』


『はいはい♪大盛りでお願いしておくね♪

ひーちゃんも同じ感じで子どもせっとかな?』


『はい!なんでもたべれるよ!』


『お兄ちゃんはどうかな?』


『はい!俺も同じで!』


玲奈さんは店員さんを呼んで手際良く注文してくれた。

…スマート。


『シャレオツ…!いつものラーメン屋さんの上にはこんな世界が…!』

『ぼくラーメンもだいすきだよぉ!』


『ふふ♪今度お姉ちゃんも連れて行ってね?』


玲奈さんは俺の目をチラッと覗き込んだ。

…玲奈さんにラーメン…なんか…しっくりこない…。


『もう来た!』

『もうきた!』


のぞひーのリアクションに目を細めて微笑む玲奈さん。

その場で焼くから調理時間はかからないんだよって言うとほえー!って感心してた。

ひーちゃんはまだしも望驚きすぎ!


シェフ『黒毛和牛100gです…。』


目の前鉄板で焼かれるって言うライブ感!

じゅー!って音を立てて良い匂いがする…。


『じゅるり…!』


妹から乙女が出しちゃいけない音がした。

横の玲奈さんは上品に微笑んでいる。

…こう育たないかなぁ…無理だよなぁ。


鉄板の上で指定の焼き加減で焼かれた魅惑のお肉にナイフであっという間に綺麗な断面がお披露目。


『きゃあ♡』


乙女な歓声をあげて望が両手を頬に添える。

…見た目だけは可愛い妹なのだが…上品って言葉よりワイルド…!



『いただきます!』

『いただきます!』


ひーちゃんと玲奈さんは50g、俺のぞは100g。

パクリ。望が頬張る。



『うま!うまだよぉ!』


両手でまたほっぺを抑えて恍惚の表情。

目がイッてる。


『…うまひー!』


最近のひーちゃんの美味しいリアクション!うまひーが出た。


『あ、ライス大盛り2つお願いします♪』


玲奈さん!ライス!

望が横の玲奈さんに恥ずかしそうに、


『…先輩、あたしもライス…大盛りで注文してください…。』


玲奈さんはにこって笑って、


『知ってるよ♪承くんも望ちゃんも美味しいお肉でご飯もりもり食べたい人でしょ?さっきのがふたり分だよ♪』


『なんでわかるのー!先輩しゅごい!』


望は嬉しそうに玲奈さんの腕にしがみついた!

玲奈さんはわかってる…!


『ガーリックソースにトリュフ塩…わさび醤油だれ…タレでご飯食べれるよぉ!』


もりもり食べる立花家の面々…恥ずかしい…。

でも玲奈さんはニコニコしてて…。


店員『…次はフォアグラです。』


『ほあぐら!キタコレ!』


望大興奮!望はレバー好きだから気に入ると思うんだ。


『ほえぇぇ…。』


焼かれるフォアグラを熱い視線で見つめる望。

ランチはお通しや海産物は無いらしいけど全然問題無い。


出されたフォアグラを一口食べて…。


『…いくらでも食べれる…。

レバーの宝石箱やぁ♡』


言ったあともくもく咀嚼してて余韻に浸ってる。

レバー好きだもんな。



『…毎日とか無理は言わない。

…でもたまに家で出ないかなあ?』


『出ないだろ…流石に。』


ここで玲奈さんも白米を注文、俺のぞも追加。

ひーちゃんは『うま!』を連呼してはむはむ食べてる。

頬張る姿に玲奈さんメロメロ♡

ひーちゃんまじ天使!


店員『テンダーロインです。』


『これがテンダーロインって奴か…!

あ!!』

『わぁ!!』


店員さんのフランベに驚くのぞひー!

初見驚くよな!


『…シェフ太泉以外でやる人初めて見たよぉ!』

『ばん!ってひがでた!』


そして出た油でガーリックライスを炒めてのぞひーが良い匂いに感動!

もりもり食べる。

二回目だけどなんか今回の方が味がわかる気がする!


そして専用の鉄板が持ち込まれて…

急速冷凍する鉄板の上で牛乳、生クリーム、いちごが潰されて混ざられて、シャーベット風になっていき…ジェラート!!


『うま!うまだよぉ!』

『これはうまうまひー!』


特にひーちゃんが感動して目の前でアイスが出来るってことに感激!


『しゅみません。このてっぱんはどうやってつくるんですか?

たいへんですか?

とってもおいしかったです、ありがとうごじゃります!』


って店員さんにお礼を言うと、店員さんは嬉しそうだったんだよ。

わかる!


☆ ☆ ☆

大満足だったらしい、ふたりはカフェタイムも窓際できゃっきゃ展望台のような眺めを楽しんでいた。

それを離れたテーブルから眺める。


『…良かった、ふたりとも楽しんでくれたみたいだね?』


俺は頭を下げて、


『ありがとう玲奈さん、玲奈さんのおかげ。

鉄板焼き屋さんなんて調べても良く分からなくって…本当助かったよ。

望との約束も果たせたしひーも喜んでくれた。』


『…私がして貰ったことに比べたら…。

承くん、またこうゆう時間作ろうね?』


イタズラっぽく笑う玲奈さんを直視できなくてあぁとか気のない返事をしてしまう。

…香椎玲奈は綺麗なだけじゃない。

可愛い上に気が利いて有能で…俺が釣り合うか?って問いがいつも発生してしまうお高め女子。

何気ない玲奈さんの視線が直視出来なくて俺はトイレへ逃げ込んだ。




☆ ☆ ☆

理由   side香椎玲奈


『美味しかった♪幸せ!先輩あざーす!』


窓にかぶりつくひーちゃんを残して戻って来てアイスティーを飲み干す望ちゃん。


『…今日、香椎先輩企画ですよね?

にいちゃんに鉄板焼きお願いしたけど何処が良いか迷ってたのに急に決まって…なんで?』


私は望ちゃんに頭を下げた。


『あの夏の最後の日、私と宏介くんに連絡してくれた事のご褒美だよ。

…ほんとにあれは…危なかった。』


望ちゃんは少し目つきを鋭くして、


『…あたしは香椎先輩が大好きです、昔も今も。

…でも、兄ちゃんが傷付くなら、まして死んじゃう位なら…永遠ちゃんでもなるちゃんでも若葉さんでもイチカさんでも馬井さんでもなんでも良い…。

兄ちゃんに優先するものなんて無いから。』


私は望ちゃんの目を見て頷く。


『…絶対にもうそんな事にはならないしさせない。

…婚約問題も解決した。

もう私遠慮しないよっ!

…まあそれはそれとして今日のはそのご褒美。

この後おみやげも用意してあるよっ!』


望ちゃんはうん!って頷いた後、


『美味しかったよぉ!先輩ありがとぉ!!

先輩好きぃ♪』


この後輩はとても甘え上手なんだよね?

承くん無しでも1番気に入っている後輩なのは間違いない。



『…で、望ちゃん?伊勢さんや永遠はわかるよ?

…それ以外の名前はなぁに?』


☆ ☆ ☆

お会計は俺が払った。優待券使わせて貰ったから玲奈さん分位は余裕で優待券のうち。

コインロッカーで玲奈さん荷物を出した。

なんか箱持ってるなって思ったら別れ際、並ばないと買えないその箱に入ったバームクーヘンをのぞひーにくれた!これローカル番組で見たやつ!


『バウム♪バウム♪』

『クーヘン!クーヘン!』


踊るのぞひー。お礼を言う。


『今日はありがとね?玲奈さん、また!』


ぎゅむ!!


ぎゅむ!!


別れ際!脇腹つねられたぁ!



『なんでっ?!』


俺は抗議するよ!

さっきまでほんわか良い感じだったじゃん!


Shitしっと


頬を膨らませ玲奈さんは大層可愛いんだけどなんら心辺りは無い…。

…最近また玲奈さんイングリッシュを聞く機会が増えた…。

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