第521話 シンデレラの帰り道
松ちゃんは寝るって言い、俺と玲奈さんを追い出す。
俺自転車で来てるんだけど…送って行けって…。
※自転車二人乗りの描写入りますが交通ルールを守りましょう!
玲奈さんは俯き加減に暗い声で言った。
『…承くん…上着ちょうだい。』
そうだった!この娘!
服自分で肩のとこ破いて!隠してるけど…ピンク色のブラがチラって…!
俺はしぶしぶ半袖のカッターシャツを脱いで手渡す。
玲奈さんがソレに腕を通し…匂わないのな…安心する。
『…。』
玲奈さんが黙ってる。
黙りこくってるって言った方がいいような状態。
言いたいことは山ほどある…それは玲奈さんも同じ事。
のろのろ俺は自転車を取り出す。
後ろに玲奈さんが横座り。
…なんか女の子と二人乗りって青春ぽくてちょっと憧れたんだけど…
ちょっと空気が違う。
珍しい事だけど2人とも黙ってる。
沈黙が場を支配している。
ひーちゃん風に言うなら沈黙の妖精さんのしわざだろう。
ここ東ターミナル駅からまあ30分位はかかるわが新川町。
玲奈さんと居るのにまったく心弾まないまま車輪は回り出す…。
線路沿いに東光まで行って大河を渡りって少しの香椎邸に送り届けて家に帰ろう。
☆ ☆ ☆
警官『ダメ!二人乗り!』
『『…はい、すいません…。』』
出発早々、警察官の職質を受ける俺たち…。
日付変わった00:30頃。線路沿い。
沈黙の妖精さんはまだ仕事をしていて一言も話さないうちに即呼び止め。
自転車の防犯登録を確認されて当然問題無し。
それなら注意程度ですぐ…
警察官『…一応持ち物見せて貰って良い?』
…あれ?玲奈さんの包丁…?衣服の破れ…大丈夫か?
俺はまずいって思った。
玲奈『はい♪お料理教室の帰りなんです♪』
きゃるん♪ってさっきの陰気さと真逆なコミュ力モンスター玲奈さんが憑依して玲奈さんペースで話がすすむ。
しゅごい…
陽気で清楚、品があって打てば響く会話。
警察官のお兄さんもめっちゃ楽しそう…!
『…それでですね…洋服引っ掛けちゃって…。』
ちら。
玲奈さんは恥ずかしそうに肩の破いたとこを見せた。
警察官のお兄さんは慌てて目を逸らし、
警察官『なにか乱暴されたとか事件じゃ無いんだよね?』
『はい♪ただこの格好だから…彼氏の承くんが人に見られたく無いって…♡
自転車でゆっくり帰ろう?って事になって…。』
『見せられないよ!』
俺は求められる役割を果たす。
☆ ☆ ☆
警察官『気をつけて帰るんだよ!』
『はい!お仕事お疲れ様です!』
『ありがとうございます♡』
にこやかに警察官のお兄さんが自転車で走り去って行くのを見送って…。
『『あはははははは!!』』
ふたりで大笑い!
『包丁持って服破けてたら事件だよ!
なにしてんの!』
『私だって必死だよ!
私が承くんに乱暴されました!って言ったら即逮捕案件だよ!』
『普通は夜中に包丁持ち歩いてたら署に連行案件でしょ…。』
『だから料理本と野菜セット、鞘付きの包丁にしたんだよ!』
そこを注意する頭があるなら何故あんな事をする…!
とにかく急いで帰ろう?もう遅いし。
俺は自転車に玲奈さんを乗せて走り出す。
大事な人だから気をつけて気をつけて運転した。
☆ ☆ ☆
線路沿いに走るといつもの学校が見えて来きた。
『…東光高校だね…。』
俺には毎日見てる光景でも玲奈さんには見慣れないよその高校。
『ね?承くん、一周周って?』
言われるがまま俺は高校の周りを一周グルって回る。
『あそこが一年生の頃の仮校舎だよね?
あそこ?4階の社会科教室に昼休みや放課後集まるんだよね?』
『なんで知ってるの?』
玲奈さんは驚くほど東光高校の事を知ってた!
『永遠が自慢気に話してくれたの。
…毎日、電車から東光高校見てるんだよ?
あそこで毎日承くんが…って。ちょっぴり妬けたなぁ。』
とわんこと玲奈さんは仲が良い。
最近聞かないけどちょっと前まで泊まりっこしてたもんね…
初対面のあのピリピリ…いやバリバリした荒んだ空気からは信じられない。
『…最近ちょっと疎遠なんだよ。
永遠も色々思うところあるみたいでね…。』
『そっかぁ。』
なんともコメントしづらい。
後ろに乗ってる玲奈さんは今どんな表情しているのかな?
そして玲奈さんはイタズラっぽく笑う声がする。
『…毎日通ってる通学コース通って帰って欲しいな?
良いかな?』
もちろんいいよ。
玲奈さんお願いは増える。
『ね?承くんもっとスピード出して?』
『あぁ!』
俺はスピードを上げる!
好きな子と二人乗り!
しかも深夜おかしなテンションで俺は大河の大橋の自転車専用レーンを爆走する!
楽しい記憶、楽しい話しをし続ける俺たちはテンション爆上げ!
玲奈さんスピード出してるから…しっかり掴まって?
下心なんて無かった。
『…じゃあ…失礼して。』
もにゅん!
ふぁーーーーーーー!!
背中におっぱい!
おっぱい!の感触だよぉ!
一度伊勢さんで学習したこの至福の感触!
伊勢さんほどのボリュームは無いけど…凄まじいハリと弾力!
俺の腰に手を回した玲奈さんは俺の背中に顔を埋める様にしてしばらく経ったあと…
『…なんであんな手段を取ったの…?』
ふたりして無意識に避けていた本題に玲奈さんが斬り込んだ。
大河の真ん中。
まだまだ新川町までかかる。
今までのほんわか楽しいモードは消え去り、
また最初の沈黙の妖精さんが仕事を始めた…。
お互いにこの話題は避けては通れない…。
☆ ☆ ☆
裏側 side香椎玲奈
『玲奈さん、スピード出してるからしっかり掴まって…!』
私が煽ったスピード上げてに答える承くん。
男の子だなぁ、必死にスピードを上げてくれる!
早い!力強い!逞しくなったなぁ。
『…じゃあ…失礼して。』
私は思わず彼の腰に手を回して背中に顔を埋めた。
しっかり掴まるとこういうポーズになっちゃうよ!
おっぱい…当たっちゃうなぁ…良いよね?
そんなことより!
くんくん!くんくんくん!
グリグリすーはー!
『…ふーっ♡ふーっ♡ふーっ♡』
バカになっちゃう!バカになっちゃうよぅ!
私は意識が持っていかれる前に、本題を切り出す。
お互いに避けてた話題。
『…なんであんな手段を取ったの…?』
口調はシリアス…でも頭の中は真っピンク!
彼のカッターシャツ着ながら!Tシャツ直にくんくんだよぉ!
もうこのままベッドまで連れて帰りたいです!
…私は唇を噛みながら名残惜しいけど本題の話しを始めたのね…。
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