第471話 惚れるということ
週末、前回同様通学途中の大河の下流、河と海の境目を目指して集まる男子たち!
俺、宏介、あっちゃん、青井、田中くん、仙道。
そして今回は…
新二『…松方だ。…よろしく?』
松ちゃんはすんごいキャンピングカーで来た!
こうゆうことするよね!松ちゃん!
ちょっと引いてる親友たちに、
『松ちゃんはね!俺の兄貴的な人で…!』
あっちゃん以外は大体のこと知ってるんだけど…
あっちゃんは少し訝しげ。
青井『立花の兄貴なら俺にとっても兄貴みたいなもんでしょ!
俺も松ちゃんて呼んでいいすか?』
体育会系特有の目上の人に敬語っぽい話し方のできる青井にホッとしつつ釣りを始める。
…結論から言うと松ちゃんは持ってるのか?スズキさんを釣った…!
俺はマゴチさんしか釣れない…美味しいんだよ?でも…!
夕飯はまた小幡さんが来てくれたり、翌朝は伊勢紅緒組が来てくれたり。
最後は松ちゃんもみんなと普通に混じってたから良かったよ。
キャンピングカーで釣れたてアジをアジフライにしたのがウケたんだと思うな。
☆ ☆ ☆
…そして今回いつにも増して無口な宏介と深夜話せる機会があって…信頼してた女の子が色々宏介をどん底に叩き込んだ元凶だったんだって話を聞きだした。
…本当に何も言えない。
そんなことある?
宏介寂しい顔で微笑みながら永瀬さんとの思い出を語った。
月明かりの海を見ながら宏介の声と波の音だけが響く。
話終えて宏介は口挟まず聞いてくれてさんきゅって言った。
しばらくの間黙って2人で海を見た。
海はいい。
☆ ☆ ☆
翌朝には宏介は普通…を装っていた。
それは普通に接っして欲しいっていうメッセージ。
それなら食べて騒いで、朝釣りして!
朝9時頃撤収!
…しかしスズキさんを釣り上げるとは…松ちゃんすっげ。
カブトムシに続き自分で釣って思い出を作るって概念を得た松ちゃん。
いよいよ明後日松ちゃんはお母さんに会いに行く。
☆ ☆ ☆
釣りキャンプの翌日。
明日の夕方松ちゃんのママに会いに行くって日。
夕方マンションで松ちゃんに聞かれる。
新二『あれがお前の自慢の親友?』
『そう!』
一も二もなく答える。
俺に過ぎた友人たちだよ。
俺は断ってから語り出す。
宏介は子供の頃からの親友で!1番の理解者!
あっちゃんは同じく子供の頃からの親友!あっちゃんに救われたし、色々な事を学んだ!高校で再会したんだ!
青井は男気あって力強いさっぱりした漢!
仙道は夜は墓場で運動会してそうだけど飄々として自分の世界を持ってる良い奴!
『田中くんは頭が良くて趣味に情熱的で優しい男。
…イジメがキッカケで仲良くなった。』
新二『…どこ行ってもソレあるのな…。』
松ちゃんはイジメってワードに顔を曇らせる。
…小学生時軽くそうなりそうで…家の力がバレてピタっと収まったらしいけど。
松ちゃんはイジメはくそだってつぶやいた。
新二『でも…昨日の見てホントに仲良いんだなって思った。
…承から話聞いてたけど少し仲良しごっこしてんのかな?って思ってた。』
松ちゃんは友達にトラウマがある、コンプレックスでもある。
仲良しごっこ…言い方はアレだけどなんか言いたいことはわかる。
あんまり言いたいことじゃないけどさ?
俺だってイジメられた。でもあの時期があるから今がある。
そう思えるって事は俺は幸せなんだと感じる。
どれだけの子が心折れたり人間不信になったり学校へ社会へ出れなくなっているのか。
『…こんどの映画のはなしなんだけど…』
俺はかいつまんで話しをする。
俺がイジメられて…なんとか撃退して…その矛先は田中くんたちに向いた。
田中くんたちは俺に相談して来て…一回断ったけど香椎さんが心を痛めていたから俺は解決を決意する。
イジメ主犯の襲撃、宏介の策、河川敷のタイマン。
そして解決。
その話を田中くんは撮りたい。
聞き終わった松ちゃんはため息ついて、
『それまじ?
はぁ…人間ってくそだわ。』
…名誉の為に言っておきたい。
『田中くんだって最初イジメっこに言わされて俺を罵倒したし、なんならいじめっ子青井だからね。
…でもぶつかりあって何度も語り合ってわかりあって今があるんだよ。』
新二『は?はぁ?!いじめっ子といじめられっ子が今親友なん?
昨日全然そんな感じ…!?』
『…青井は今もイジメを恥じている。今回の撮影も自分のしたこと思い起こす良い機会だって言ってる。』
新二『…はぁ?まじ意味わかんね…。』
『まぁ色々あったんだよ。ぶつかったし殴り合ったりもしたけど今は親友ってこと!』
新二『そんな奴信じられるんか?』
『こないだの春休みに6人組に襲撃されたけど青井は逃げるそぶりも見せずに俺と一緒に居てくれたよ?』
新二『え?6対何人?』
『俺とふたり。向こうの嫌な奴に青井はこっちについたら見逃すって言われて、
『お前につくより立花とボコられた方が良い!』って言ってくれてさ?』
言葉も無いまっちゃんに続ける。
『あっちゃんはその6人のうち4人を後ろから締めまくってたし、仙道もヒョロイのに真っ青になりながら着いてこようとしてくれたし、田中くんも宏介に何かあれば守ってくれる。』
どうゆう関係なんだよ?
熱血漫画の読み過ぎなんじゃね?
松ちゃんが呟く。
なんて説明したら良いかわかんない。
言語化が難しい…いやコレはこうとしか表現出来ない。
俺のバイブル…花の慶次…!
俺は松ちゃんにこう表現する、
『惚れてるんだよ。』
ひゃ!って顔して少し気持ち悪そうに松ちゃんは、
新二『…きっしょ。
お前そっち系?』
…やめて?まぁあっちゃんは格好良いって思うけど…。
俺は語る。
さっき話した俺がピンチの時に何も言わずに側に居てくれたり、襲撃されるのわかってて一緒に居てくれる。
コイツ良い漢だな、優しいな、誠実だな…色々あるよ?
そうゆうのを感じたらコイツをもっと知りたい!一緒に居たらすっごい楽しいだろうな!こうゆう漢を友にしたい!って惹かれる。
そしたら一緒に居るだけで楽しくなっちゃうし一緒だったらなんだって出来るようなそんな高揚感がある。
その頃にはコイツのためなら何でもしてやりたい、ボコられるくらいなら付き合ってやる、慶次風に言うなら、
『死んでやらねばならん。』
新二『…武士かよ…。』
少し呆れられた?でも本音。
女の子に対しての惚れたとは違う男対しての惚れた。
伝わるかな?
新二『…。』
松ちゃんは考え込んでいる。
…普通の友達が少ない俺が参考になるかはわかんない。
でも、信じなきゃ信じてもらえない。
そうゆう事でしょ?
松ちゃんは何って言っていいかわかんないって言いながら結局何も言わなかった。
…少し驚いた。
何かしら自分に当てはめて仮の答えを出すのかな?って思ってたから。
少なくても『なにか』伝わったらしい。
…俺と松ちゃんの関係は歪な形。
香椎さんを挟んで向かい合ってるような不思議な関係。
でも俺は香椎さんの為って前提はあれども、なんなら一生の付き合いになっても良いと思ってる。
それが伝われば…香椎さんを解放してくれたら良いなと思わずにいれない。
…いざ、お願い出来るのは一度と思い定めている俺はその時まで松ちゃんを兄の様に思い心に寄り添うだけなんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます