第305話 紅緒さんと映画
バレンタインデーから1週間。
2月の下旬の三連休でデート三連こなす事になった…。
紅緒さんチョコに同封のデート券…。
香椎さんに宣告されたデート券…2枚。
人生ゲームの勝利特典、のぞひーとデート…デートか?
色々、やり取りした結果。紅緒さん、香椎さん、のぞひーの順番。
初日は紅緒さん。
『夕方からバイトシフトだから…そもそもデートって…。
俺好きな子が居るから…。』
『あー!あー!聞こえないー!
承くんのいじわる!チョコ2個あげたんだからちょっと付き合ってくれても良いじゃん!』
紅緒さんはスベスベほっぺを膨らませて、俺に猛抗議!
食い下がったけど、紅緒さんとご飯食べて、映画見て、家まで送る。って事になった。
土曜日11:00、東光駅
待ち合わせ時間にとわんこは来てない。
…体調悪いとかじゃ無いよね?
『お待たせー!』
紅緒さんはグレーのニットワンピに真っ白のコートを羽織って暖かそうな装い。ニットって体型が出るから…ちょっとドキドキする…!
紅緒『なるみんチョイスなの♪』
『暖かそうだし、スラっとして綺麗…。』
『…!!
もっと!もっと褒めて!』
『服が…とは言えない、紅緒さんスマートで着こなしてる?と?
思う…?』
『なぜ疑問系?』
『女の子服の良し悪しわかるわけないじゃん!』
笑いながら電車に乗り、10分ほどでターミナル駅へ。
ターミナル駅でどうする?って聞くと、
『承くん!ラーメン!ラーメン食べよ!
あの時は断られたから!』
ああ…根に持ってる?
ターミナル駅のすぐそこ大好きなラーメン屋さんへ一緒に向かう。
11:00開店で開店直後だけどもう並んでる。
ここは人気店だから仕方ない。
並んでいても黒髪清楚美人の紅緒さんは注目を集めちゃう。
特にラーメン屋並ぶのはどうして若い男が多い。
紅緒さんめっちゃ見られてる…。
紅緒さんは人の視線に無頓着。
気付いているけど気にしない。そんなスタンス。
見てる男どもは俺がこんな食細そうなスレンダー美人をラーメン屋に連れて来たって思ってるでしょ?
このわんこが自分から提案して?多分あなた達の思ってる倍くらい食べるんですよ?って教えたい。
店員『いらっしゃいませ!』
紅緒さんはぶつぶつ、
『へらっしゅー!じゃないと物足りない…!』
『こっちが普通でしょ?』
入店して、俺はこってりラーメンセット、麺大盛り。
紅緒さんもこってりラーメンセット、味玉トッピング、単品で油淋鶏。
待つ時間もうきうき!
たわいも無い話ししながら紅緒さんとラーメンを待つ!
来た!
『『いただきます!』』
ずる!ずるずる!
『『美味い!』』
俺の好きな濃厚なスープに太麺。
ゴリゴリに煮干しが効いてる風味にざらざらなのにマイルドな口当たり!
一心不乱に麺を啜る!
…。
…。
紅緒さんがニヨニヨしながら俺が食べるの見てて。
『美味しいね?』
『美味しいね。』
俺は頷く。
紅緒さんは嬉しそうに笑いながら、
『退院後ラーメン好きになったんだけどジャンク飯って感じで本当美味しいよね?
病院では出なかったからさ。』
『そりゃ病院にこんなガツンとくるラーメン出せる訳無いでしょ。』
ふたりで笑いながら病院で出せるラーメンを検討する。
…ヘルシーで?減塩、脂カット、糖質カット、野菜マシマシ、麺少なめ、薄味、ビタミン豊富…。
紅緒さんはキレイな顔を顰めて、
『まずそう…。』
美味しいラーメンを食べる為には健康で居なくちゃいけない。
そう結論づけた。…ほんと紅緒さんは特に気をつけて欲しい。
13:00上映だからまだ時間があるから駅ビル内の雑貨屋とか本屋とか見て周る。
あーだこーだ笑いながらふたりで歩く。
紅緒さんはそっと俺の手を握ろうとする…。
その手をかわす、俺…好きな子が居るから…。
それを口に出そうとするけど、
『…わかってる。ふざけただけ。
…承くんは固いね!処女か!』
『…。』
バキバキの童貞ですよ…。
とわんこは俺の手が好きって言ってた…女の子と手を繋いだらドキドキしてしまう…!
それは絶対に良く無い。俺だって男だもん、流されたりしたらいけない。
12:50、シネマに入場する。
映画はラブロマンスで?紅緒さんがチョイス。
でっかいポップコーンとドーナッツ、でっかいコーラ買って場内へ入場するよ。
『…どさくさに紛れて?手を握ったり?そっと手を重ねたり…』
『しないよ?』
紅緒さんはふー!って肩をすくめると、
『私がする。』
『とわんこはタフだなぁ。』
笑いながら席に着くけどさ?
とわんこの目を見る限り上映中仕掛けてきそう…!
映画は両片思いの男女が運命のイタズラで引き裂かれてしまう。
でも離れてもお互いの事を思い続けていたふたり。
数年後運命的な再会をして、ふたりはついに結ばれる…!
それは取り越し苦労だったみたい。
『ふえええぇぇ…ふっふええええええぇぇぇえん。』
紅緒さんは大泣き。
周りの通行人が二度見するほど泣いちゃって。
泣きながらもほぼポップコーンとわんこが食べたんだぜ?
『ほら、おばあちゃん、こっちおいで?見えてる?』
『涙で前が見えないよぉ…承くん…。』
『仕方ないな…こっち。』
キュッ。
(小さいな、白くて、小さくて、すべすべで。)
俺は紅緒永遠が紛れも無く魅力的な女の子だって思ってる。
でも、体感すると
とりあえず、お茶しよ。って伝えて手を引くんだけど。
『…。』
紅緒さん…こう言う時には黙り込んじゃって。
真っ赤になって、俯きながら、俺の目と繋いだ手を交互に見つめて…。
少しだけ口が綻ぶ…。
(可愛いすぎる…!)
やべぇ、玲奈さん…玲奈さん…れいにゃさん…!
あの玲奈さんでも消しきれない…。
やっと席に着き、アイスティーを啜ると紅緒さんは落ち着いた。
離す手を寂しそうに見つめて。
話題は映画。
紅緒さんは良かったよ、良かった!と繰り返す。
結ばれて良かった…!絞り出すように。
『…何年越しの恋愛ってどんななんだろ?
憧れる。
…私にはそんなに時間無いだろうしね…。』
たはは。って妙に自嘲的な笑い方。
俺は何も言えない。
…応えられないなら…やはりデートをすべきでは無い。
俺はそう思う、それを伝えようと口を開こうとすると、
『承くん、わかってる。
でも?せっかくのデートだからさ?今日だけ、今日だけはこのままキレイに終わろ?
…私のわがままだから承くんが気にする必要は無いよ。』
…デートって楽しくて、ワクワクして、ドキドキする。紅緒さんは嬉しそうに寂しそうに笑う。
俺は紅緒永遠の儚い笑顔が嫌い。
ターミナル駅から電車で約10分。
いつもの東光高校の最寄り駅、東光駅。
そこから歩いて10分、紅緒組。
デートはここまで。
家まで送り、終了。
お茶飲んで落ち着いた紅緒さんはいつも通りニコニコ楽しくバカ話しながらここまで一緒に歩いた。
じゃ、ここで。
俺このまま俺カレでバイトだから。
別れ際、紅緒さんはまた真っ赤になりながら、
『…承くん…今日両親出張で?帰って来ないんだ…。』
『戸締りには気を付けてね?』
『むう!乙女のなけなしの勇気を返せ!』
ぽかぽか叩かれる。
『だから?俺カレで夜ごはん☆』
にっこり笑って俺と紅緒さんは肩を並べて俺カレへ歩く。
冬で日が落ちて来たから寒くなってきた。
『紅緒さん寒く無い?』
ひーちゃんと一緒で血圧系のトラブル怖い。
『…寒い…心が…?』
『とわんこはタフだなぁ。』
『…手…俺カレまで…手を繋いで?』
『…いや、良く無いよ、やっぱ。』
ギュッ!
『もうやーめた!聞くと断られるから勝手に握るもーん!』
紅緒さんはイタズラ成功って顔して俺の手を離さない!
あと少しだけど…。
俺カレ手前までだよ?わかってる、
俺カレまで10分ほど手を繋いで歩く。
(…これ、香椎さんに怒られるパターンでは?)
そんな事考えながら俺カレへ着く。
ギュッ!!あ!あ!
とわんこが飼い主引っ張るわんこみたいに俺を俺カレへ引きずり込む!
手は繋いだまま!
女子大生バイト『へらっしゅー!!
お?ヌシちゃん?と承くん?
きゃー!手つなぎ!やったねヌシちゃん!』
紅緒さんはやだなぁって顔しながら、
『ただの同伴出勤ですよぉ♪
彼ったら?積極的で?きゃっ♡』
女子大生『もちょっと詳しく!承くーん?やるねぇ?
後で…いや、ヌシちゃんに聞く!』
とわんこは勝手に空いてる1番テーブルに入る。
女子大生はニヤニヤしながら厨房へ消えて行く。
俺の話しも…
…結局とわんこのペースに巻き込まれてしまうんだよね…。
そして紅緒さんは今日のデート内容を逐一香椎さんに教えて煽ってたんだよ…。
☆ ☆ ☆
私用で明日は出かける為、次回は外伝的なショートストーリー更新になります。
よろしくね!
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