第153話 香椎さんを逃す会
そんなわけで、小幡さん主導で香椎玲奈を校外の不審者に見つからないように帰すための会が発足し、親友の小幡さんが音頭をとってみんなで考える。
『囮はいいんじゃ無い?どんな手を使うにしろ目を分散させるのは?』
『確かに!数人で1人でも女の子居れば目がそっちいくよね?』
『出口は3つで正面の校門、裏門、車の出入り口の3箇所から同時に出る?』
そんな感じで、話が出てる。
小幡さんに強制参加させられた俺は黙ってそれを聞く。
(それで良いと思うなあ?)
小幡さんも香椎さんもチラチラ俺を見るけどさすがに毎回そんなに良い手は思いつかないんだよね。
で、結局変装しかなく無い?って事になった。
小幡『玲奈のイメージと違うキャラ?
成実!お願い?』
成実『えー?あーし?香椎玲奈のイメチェン?』
伊勢さんは麗䕃の入試手応えあり!自己採点でもまずいける!って自信満々。
なんでだろ?俺入試直後はいける!って思ってたのに時間経ったらなんか不安になってきて…いや、今は変装の話。
15分後。
伊勢『じゃーん!…さすがに香椎玲奈、かなりイケてるっしょ…。』
伊勢さんはなんか悔しそう。
香椎さんはというと、髪をコテでクルクルに巻いて盛られて凄いゴージャス!つけまつ毛といつもより濃いメイクだけど、目鼻立ちのクッキリしてる香椎さんは映える!
シャツもボタンを2番目まで外して、リボンも緩くしてる。胸元見えちゃいそう!隠してー!
スカートはウエストのところで巻いていつもよりだいぶ短い!脚がいつもより露出が!隠してー!
いや、可愛い…。
でもね、ゴージャス派手美人ギャル香椎さんなんよ?
香椎『マジ校外の男どもうぜぇ!
…伊勢さん、この口調じゃなきゃダメなの?』
パシャパシャパシャ!
ニマニマしながら小幡さんはスマホにギャル香椎さん写真を保存した。
連写モードで。
小幡『可愛い!でも玲奈ってバレバレなのよね?
あ!私の予備メガネのレンズ外して…。』
派手可愛いギャルメガネ香椎さんにしかならないだろそれは…。
クラスの陰キャ女子がおずおずと申し出る、
『地味女子にしたらどうかな…?』
その子主導で、色々討論する、
15分後
さっきの盛った髪型はストレートになった。ふだんはふんわりさせてるからまた印象が違う。
そしてメイクもほぼ落として、素なんだけど…普段香椎さん目元少ししかメイクしてないからあまり顔の印象は変わらない。
髪を後ろでふたつ結びにして、前髪を下ろして少し目元を隠す感じ?
なんで少し猫背?
清楚な風情と少し野暮ったいメガネがまたイイ!
これ絶対図書委員とか一緒になってすぐに可愛いってバレて恋に落ちるやつ!
香椎『…。
猫背じゃなきゃダメなの?』
小幡さんは慣れた手つきでさっきと同じようにスマホに香椎さんの姿を保存すると皆に意見を求める。
『ギャルよりは香椎さんってわかりにくいかも?』
『そうかな?清楚な雰囲気でテレビ映った印象的にはギャルの方が意外性が…?』
『いや、ギャル香椎さん可愛いって!』
『地味香椎さんの方が合ってるよ!』
『結局、いつもの香椎さんこそ至高!』
話逸れてるぞ?
結局、一回出てみるか?
って事になって、先生が校門前の男性たちに何度目かの注意に行って人が減ったタイミングで地味香椎さんと小幡さんと女子2名で校門から出ようとすると…。
『あ!あの娘だ!』
『ねえ!香椎さん?君が香椎さん?』
『写真撮らせて!』
『アドレス交換して下さい!』
すぐに5人ほどに囲まれそうになり、慌てて撤退。
玄関で見てたけど出た瞬間包囲された感じ?
どうしよう?
そもそも通報案件じゃない?
文化祭の衣装とか無いか?
ジャージで自転車通学者のヘルメット借りて?
もう顔をタオルでぐるぐる巻きにしたら?
そんなおかしな意見まで出てくる始末。
今の俺の発言力では下手なタイミングで意見を言うと罵られて、お前は出てけって言われかねないのでここまで黙っていたけど、煮詰まってるようだから発言する、
『香椎さん、先生に言って先生に送って貰ったらどうかな?
先生達だって何か起こったら困るだろうし?』
香椎さんは困った顔で、
香椎『sy、立花くん、先生たち受験真っ盛りで大忙しなんだよ。
明日からママに送り迎えだから出来たら歩いて帰りたいな。
今日が最後の徒歩での下校かもしれないしね?』
小幡『…玲奈…。』
小幡さんはため息をつくと俺に向かって言う、
千佳『承くん?なんか無い?
私考えたけどもう思いつかないのよ。
承くんなら?また?なにか良い事考えるんじゃない?』
少しニヤニヤしながら小幡さんは俺を挑発するように聞いてくる、
え?立花に聞くの?立花なんて!俺に意見聞くだけで抵抗ある奴も多い。
一部で、体育祭の時だってなんとかしたじゃん!って言ってくれた人も居た。
俺は、
『前に読んだ本で言ってたけど、良い事考えた!って言う場合大体悪い事考えてるんだよ?』
まわりの半分がああ、確かにって反応と、
『え?小幡さんが立花を名前呼び?』
『えー?小幡さんなんでー!?』
残りの半分は小幡さんの俺に対する名前呼びで反応する!
そりゃそうだよ!場がざわめく!
少し赤くなりながら小幡さんは、
小幡『宏介くんが!いつも宏介くんが立花くんの話ばっかりするから名前呼び感染っちゃったの!他意は無いわ!
体育祭のくだりは聞いたけど立花くんは結構アイディア豊富でしょ?
…敵だったから良く知ってる!』
『ああ、宏介くんは立花の親友だからなあ。』
『3組視点だと1組の参謀みたいな感じだったかもね。』
みたいな反応で納得されたみたい。
で、意見を求められたわけだけど、さっき思いついてあるにはあるんだけど…
またみんなに叱られそうなんだよなぁ…。
香椎『sy、げふんげふん。
立花くん?どうかな?』
『あるけどね?
変装の一種だけど香椎さんが我慢しなきゃいけなくて、最後の下校としてはどうなのか?って感じだけど?』
香椎『体育祭の時もそうだったよ!
私は立花くんを信頼してる!どんな方法?』
香椎さんの俺を信頼してる発言に陽キャ達や俺を気に入らない層は不愉快そう。まあ仕方ない。
『男装したらどうかな?体育祭の時みたいに。
あの不審者どもはテレビに映ったすっごい美少女が新川中に居る!って思って来てる訳だから出てくる女の子を凄いチェックするだろうけど、男にはまったく興味ないはず。』
おおお!
その手があったか!なるほど!
ちっ、俺だってそれ位!えー?香椎さん男装?
反応はさまざま。
香椎さんはなるほど!って顔。
小幡さんはなんか悔しそうな顔。
小幡『…良い考えじゃない。それにさっきの囮の策で3組位同時に学校から出して散らばれば確かに不審者どもは女の子が居る囮に寄って来て、女の子の顔を確認するでしょうね?』
香椎『男装…体育祭でもやったし別に問題無いよ!
それなら歩いて帰れるし、学校から離れちゃえばどうにでもなるよね!
さすが立花くん!』
香椎さんの信頼を感じる、嬉しいけどもうこうゆう時間は本当に残りわずか。あと数日だもんな。
卒業式…か。ちょっとセンチメンタルな気分になっちゃうよ。
陽キャたちが一斉に主張しだす!
『香椎さん!俺の!俺の制服着てよ!』
『いや!俺の!記念になるし!』
『俺の制服、クリーニングしたばっかり!』
香椎さんは困り顔。
まあそうだよね?男子の学生服着て帰るって…体育祭は学ランだけだったけど今日はズボンまで着ないとだからちょっと躊躇っちゃうよね。
…でも一回位、俺も主張してみたい。
香椎さんにストレートにオープンに好意を示す陽キャたちに呆れる事も多いけど、そのアクティブさと物怖じしなさに感心してしまうことも多いんだ。
もう、学校が別になったらこうゆう機会も無いだろうし。
みんなに紛れて一回だけ言ってみろ俺!
俺も勇気を出して言った、
『俺の制服着て帰ってよ!香椎s』
香椎『うん!着るぅ!!』
食い気味に返事が来た…。
目をキラキラさせて我らが『完璧女子』は早速上着を脱ぎ始める。
慌てて、男子達は室外へ追い出される。
小幡『玲奈!中のシャツは交換しなくて良くない?』
香椎『え?シャツ着れないの?』
小幡『シャツはそのままで上の学ランとスラックスだけ借りていけば良いでしょ?コートは多分大丈夫じゃ無い?』
なんでー?立花なんて3回告白断ってんのに?
俺の着て欲しかった…。男装香椎さん!
反応はさまざま。
香椎『体育祭で!立花くんに学ラン借りたでしょ!だから慣れてるから!
一回着て慣れてるから!』
なるほど、一回着てるから慣れてるのか。納得。
じゃあ着替えて、囮役どうしよ?ってなった、
『立花!3回告ったお前にきっと香椎さんは気を使って思い出作ってくれてんだぞ?勘違いするなよ?』
『香椎さん、立花に甘くねえ?』
『ちぇ、香椎さんに着て貰えたらめっちゃ良い匂い着いたろうなあ。』
陽キャの一部が帰っていく。
自分が香椎さんと帰ったり、頼りにして貰えないからだろう。
この後、囮役で人数必要なのに帰っちゃう。
主張しなくても、最後まで付き合ってくれる残った奴が信頼できる香椎さんファンだと思う。
香椎さんに助けて貰ったから、香椎さんが心配!香椎さんが困ってるなら!そういう思いでここに残ってる人の数が香椎さんが積み重ねてきた信頼だって思うと自分のことじゃ無いのに俺は誇りに思っちゃう。
用意出来た!
俺はジャージにコート。一応家まで護衛を兼ねて付き添って帰る。
香椎さん家で学生服返して貰ってから家に帰る。
もちろん香椎さん家には寄らない!絶対!
だってこんどこそ香椎さんパパに会ったらSATSUGAIされちゃうよ!
香椎さんの用意が出来た。
不思議な光景。いつも俺の身を包む学生服が憧れの香椎さんを包んでる。
学生服に白いコートを羽織り、小幡さんの予備メガネ(レンズ外した)をかけて、マフラーを顎の上まで巻いて髪は全部マフラーに納める。
マフラーもついこないだまで俺が着けてたと思えない程良い品に見えちゃう。
俺、小幡さん、香椎さんの並びで下校する。
囮役とタイミングを合わせて。
さて、きっと今日が中学生活最後の香椎さんとの下校になるだろう。
楽しく帰れる以前の問題で不審者を撒けるかな?
いざ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます