第149話 このままじゃ帰せない!【side香椎玲奈】

私は承くんに抱きついた!


抱きついたつもりだったんだけど、どう見てもラグビーのタックルだったよ。

リビングの大きいソファーに承くんを押し倒した形になったけどなんとか止めた。

承くんは目を合わせずに、


承『長居してごめん、もう帰るから、お父さんにお詫びしておいて?』


私は強く言う、


玲奈『このまま帰せない!

せっかく、せっかく今日けんかしちゃったけど仲直り出来て幸せだったのにこのまま帰したら無駄になっちゃう!』


承くんが身を捩ってうつ伏せから横向きに姿勢を帰る、私は抱き着いて離さない!



承『離して?俺帰るから!』


玲奈『いや!このままじゃ嫌な思い出持って帰っちゃう!

クリスマス気持ちよく迎えられない!

そんなの嫌だし!そんなの悲しい!』


少し見つめ合うと、

承くんは私を見てため息をつくと、優しい目で見つめてくれた、



承『わかったよ、もう怒ってないよ。

俺の方がごめん、あんな美味しいケーキをお父さんの分まで食べて恨み言の一つ二つは仕方ないよ。

きっとお父さんは娘取られる!ってなっちゃったんだよ、あまり怒らないであげてね?』


きっと腹を立てただろうにそれでもうちのパパを思い遣ってくれた。



承『ところで…そろそろ離して?』


このまま承くんを帰すわけにはいかないよ!って必死にソファーに押し倒して、逃がさないように抱き締めていた私は今の体勢に驚愕する。

百歩譲って私が承くんを押し倒してる…。



顔が近い…私の顔が承くんの瞳に映り込んでる…。

承くんの瞳に映る私の顔は可愛く見える。



承『…玲奈さん。』


玲奈『承くん…。』


顔が近い、少しずつ近づける…、



ばんばんばん!!



パパ『ギブギブギブ!!

ママ!タップしてるだろ!!』

※タップ…格闘技の試合で関節技、締め技が決まって負けを認めてポンポンって降参だよって相手や床を叩く行為、認められれば即試合終了。


隣の部屋は騒がしく、よく見たらお姉ちゃんがワクテカしながらこっちのソファーを凝視してた。


姉『流石に初キスは家族に見られてない時が良いと思うよ?』


玲奈『私もそう思うよ。』




承くんが帰る。

ママはパパをまだ締めてる。ママに脅されてパパは承くんに謝罪した。

承くんは謝罪を受けてくれた。



姉『承くん、懲りずにまた来てね?義姉さんって呼んでも良いよ?』


承くんは、私にだけ聞こえるように言った、


承『玲奈さんのお姉ちゃんってなんか望に似てるかも?』


玲奈『あ!なんかわかる!』


ふたりでふふふ!って笑った。

お姉ちゃんにすぐそこまで承くん送ってくる!って伝えて一緒に歩く。

俺は男だから送る必要無いよ!って言う承くんをなだめながら、すぐ近くのコンビニまで一緒に歩く、


承くんがじゃあ、ばいばい!また来年!って挨拶する。

その前に明日クリスマスでしょ?



別れ際、私は承くんの手をそっととる。

承くんが慌てる!



承『!!

あれ?手袋?』


玲奈『ホントはパパのクリスマスプレゼントだったんだけど、

選ぶ時承くんだったらなあって思いながら選んだら若いデザインになっちゃって。本当は承くん用を用意しておけば良かった。

今日はあんなに手が冷たくなるまで私を待っててくれたでしょ?

あの手袋の代わりに使ってくれないかな?』


そうだよね。小5の頃から使ってたらそろそろだよね?でも大事に長く使ってくれて嬉しいな。

私はパパのプレゼントで代用する事を申し訳なく思いながらも意外と良いチョイスだったかも?って思ってた。家まですぐだろうけど暖かくして欲しい。

一応箱と紙袋も渡しておく。


承『え?良いの?

ブランド物の手袋だよ?!』



玲奈『いいのいいの!』



確かに良い手袋なんだよ。さわやかなデザインだし。

でも人のプレゼント流用ってがっかりしないかな?それだけが心配!



承『すっごい暖かいし、格好いい。

ライン入っててオシャレだし!

本当にもらっていいの?』



良かった!気に入ってくれたみたい!

ホッとする。これで少しは良い思い出になってくれたら良いな?

12月で18時頃は陽も落ちて寒い、見送りだけだからコート羽織って来なかったから私は身震いする。

でも寒くっても良いからもうちょっとだけ話していたいよ。



すると承くんが、

しゅるりと自分のマフラーをほどいて私の首に巻いてくれた!



承『大丈夫?寒いんでしょ?

もう家入ってて?俺帰るよ!

マフラーは休み明けにでも返してね?』



承くんが私にマフラーを巻いてくれたことが嬉しくって!返したくない?

いや、返す気なんてこれっぽっちもない!




玲奈『もうこれ私の!このマフラーはもう私のだもん!

返せって言われてももうダメー!』



承『はは!じゃあ交換だね?メリークリスマス!』



玲奈『メリークリスマス!望ちゃんとひーちゃんによろしくね?』


ニコって笑って、承くんは走り出す、何度か後ろを振り返りこっちに手を振ってくれる。



私も見えなくなるまで手を振る!

あーあ、行っちゃった。



家に帰ると、お姉ちゃんは遠くから見てたのか、


姉『プレゼント交換できたじゃん♪』


玲奈『ふふー!

マフラー暖かいなあ!』



お姉ちゃんは不思議そうに、


姉『…って言うか?

なんであんたたちまだ付き合って無いの?

バレると面倒でもみんなに秘密にしてさ?』



玲奈『…卒業式にこだわりすぎたかなぁ…。

まあ今まで断ってしまった人たちへの義理もあるよね。』



姉『義理ねぇ。』

お姉ちゃんは断るのを躊躇わないタイプだからね。



色々あったけど、ケーキも食べてもらえたし、マフラーも貰ったし、手袋渡せたし、クリスマスイブは明日だけど私は幸せ。




…いつかふたりの為のふたりだけのクリスマスをすごせたら良いな。



あ、マフラーすっごい承くんの匂いする…。

くんくん、くんくんくん!ふにゃあ。


姉『…玲奈…顔エッロ!

やべぇ匂いフェチじゃん…』


くんくんふにゃあってしてる私を見たお姉ちゃんが呆れてる。

まあ仕方ないよね。承くんの匂い好きなんだもん。

ご飯3杯はいけるよ!



⬜︎ ⬜︎ ⬜︎

初めてのけんかはこうして終了しました。

感想などコメント是非お寄せくださいな。

香椎さん頑張ったね?って思った方は是非♡、⭐︎お願いします。

明日は10000pv記念 

親友の宏介くんの外伝になります。お付き合いください。

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