村の話もしくは木津手山の話
ヨコスカ
ある村の話
辺りは、ススキ野原。時々野ざらしが珍しくないこと
江戸時代
木津手(きつで)村は三十人の村人がいる。
村役(代表)一名
二十玖人の村人
内訳
十ゴ人は大人
十参の子供
子供は色が付いたキモノのなまえで 呼ばれる
キモノが足りない時は
柏子かしわご(みんな一緒)
と呼んでいるそうだ。
白い着物に柏色の紐。
私とあなたと貴方とワタシのような
存在=同義なんだとか。
黑
松葉
萌黄
黑は男児。目をけがしているらしく包帯で巻いている。五歳程度
松葉は女児。右足がない。松葉づえをついている。六歳程度
萌黄は女児。七歳程度。とはいえ年不相応。
村の外のお社は
隣の集落との間にある。
人が来ない。その代わり、いつでも闇が居座っている
こどもを預けにやってきた親は、大体が長期間家を離れるとかであるから
不審なことではない。
いつか、迎えに来てくれる。
集落の習わしを見せてくれるというので
来年八歳になる子が
七歳以下の子を引き連れて
山の中腹にあるお社に向かいに行く。
上の子は今まで生きてこられた事への感謝と
下の子へのこれからの加護を頼むのだという。
晴れて帰ってこれたときは
村総出でお祝いをするのだそう。
甘酒を飲んで、ご飯をたらふく食べる。
明日からはいつも通り
村の手伝いに回る。
さて、月のない日。
萌黄は、松葉を背負い
黑の左手を引いて
闇をまとった緩やかな坂の参道を歩いていくことになる。
その姿をただ見守ることしかできない。
私は、なんて非力なのだろう。
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