第5話

 気分よく魔法の呪文を作っていた僕のお店の扉がノックもなく開けられ、僕は視線を上に向ける。


「……?」

 

 お店に入ってきたのは僕のリスタと……それを囲んでいる三人の女子。


「へぇー、あんたがこのゴミを買ったカスってこと?」


「いった……」

 

 三人の女子の中で最も高そうな装飾品をつけた少女がリスタの髪を強引に掴んで揺らしながらぼくへと悪態をついてくる。


「……えぇ?正気?」

 

 僕はそんな少女に対してまず真っ先に怒りではなく心配と困惑が浮かび上がってしまった。

 僕に対してため口で喧嘩を売ってくるとかこの国の国王でも無理ぞ?あの人僕に対して敬語だよ?

 

「お店の看板みたぁ?」


「ん?見たわよ?でも、こんな小さくて稼げてなそうな特許庁なんてどうでもいいに決まっているじゃない。ふふふ。呪文研究者ってだけで無条件に尊敬を得られるわけじゃないのよ?残念だったわね」


 ……無知すぎんか?

 僕ってばがちがちの呪文研究者ぞ?めちゃくちゃ稼いでいるよ?この国の魔法使いとかその呪文のほとんどを僕に頼っているよ?

 

 世界でも結構上澄みだよ?

 特許庁が国という枠組みを超えた特権階級でいられる根拠たる確固たる武力の一つとしてちゃんと数えられているんだよ?僕は。


 確かに僕のお店は小さくて、他の特許庁は全然持っている金が違いそうではあるけどね?間違えちゃうのもわからなくないけど……所詮侯爵家の次女如きが特許庁なんて普通入らないだろうし。

 ……結構このこじんまりとしたお店気に入っているんだけどなぁ……木の建物で落ち着くのだ。ここは。

 オシャンティーだしね、欧州風で。


「いいこと?こんな学園に相応しくない庶民を着飾り、綺麗にされたら私たちが困るの。同じに見られちゃうじゃない。虐められて泣いているこの子なんて身だしなみが汚い状態で、周りと違いを作るのが身だしなみなの。おわかり?」


「えぇ……」

 

「小さな個人特許庁風情が侯爵家の次女である私に逆らわない方が身のためよ?この町で商売を続けたいのならね?まぁ……現状で商売出来ているのもかも怪しいけど」


「おーん」

 

 どう対処しようかなぁ……一応僕の者であるリスタをいじめられっ子のまま放置というわけにもいかないしな。

 ここでこの女の子をボコして脅せば虐めもやむかな……?目に見えない形での陰湿ないじめ始まらないかな?

 うーん。どうしようかなぁ……僕は目の前の少女たち三人を、リスタがいじめられっ子であるという現状をどう対処にするかに対して頭を悩ませた。

 

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