第4話
僕の朝は遅い。
好き放題惰眠を貪りくらい、二度寝を貪り、睡眠に対してこれ以上ない満足感を得てから僕はベッドから出る。
僕の持つこじんまりとした二階建てのお店。
完全なるお店である一階とは違って個人的な生活空間の広がる二階で身支度を整え、優雅に朝ごはんを食べた僕は一階へと降りていく。
「にょっこいしょ」
外に出て太陽光を数分ほど浴び、満足した後にお店の札を営業中に変えてからお店の方へと戻る。
「ふんふんふーん」
僕はお店のBGMをつける……ちなみに音を出しているのはお店に設置してある人形たちだ。
人形には特別な魔法が込められていて、電源をONにすると歌を歌ってくれるようになっている。
「ふー」
お店のカウンターに座り、コーヒーカップにコーヒーを注いだ僕はほっと一息つく。
「……」
この世界に大した娯楽はない。
僕は時間つぶしも兼ねて呪文の研究を始める……最近呪文を完成させたばかり。呪文の理論構成を決めるところからのスタートとなる。
この世界の魔法はかなり複雑だ。
魔力保存の法則など、この世界そのものに元からある法則。
そこに干渉し、法則を捻じ曲げ、世界にバグを起こさせて発動する魔法。
この世界そのものの法則を改変して新しく作り直した法則。
それを元からある法則とぶつけ、混ぜ合わせることで差を作り、同じく世界にバグを起こさせて発動する魔法。
この世界とはまったくもって違う一から作り出された法則。
それでもって自分が作り出した法則でこの世界に元からある法則を塗りかえ、一時的に世界の法則を牛耳る神となって法則に沿って自分の望むありとあらゆる現象を引き起こす力を手にして起こす魔法。
この世界の法則へと干渉し、奇跡を起こす魔法の呪文にはどこまで行っても世界の法則がついて回る。
正しい知識でもっと世界の法則を知り、一切隙のない完璧な理論で法則へと干渉する術を作らないといけない。
魂そのものに『別世界』の法則がしみこまれ、最も困難と言われるこの世界の法則ではない別の世界法則を一から生み出すというのを生まれながらに出来る僕のようなチート能力者でもない限り魔法の呪文を作ることは難しく、だからこそ呪文研究者は特別なのだ。
「まぁ、今世の僕の頭は普通にチート性能なのでチート能力関係なく呪文を作れちゃったりするんだけど」
誰に説明するでもなく独り言をつぶやいた僕は呪文の理論構成を考えていく。
これをしているだけで普通に一日、二日……一か月とかざらに時間が溶けるので、まともに娯楽の無いこの世界でも僕は暇することなくこの世界を満喫することが出来ていた。
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