【臨機応変】

 ○月〇日。

 俺は、EITO大阪支部隊員の用賀隊員と芦屋二美隊員の結婚式に出た。

 俺と澄子と倉持、花ヤン、横ヤンは、2次会替わりに、澄子の店に寄った。

「ホンマによう似てるナア。メイクしてても、芦屋三姉妹は、そっくりや。」

「まるで、三つ子みたいやな・・・って、三つ子やないかーーーーい!!」

 花ヤンと横ヤンは、まるで漫才のような掛け合いを見せた。

「綺麗でしたねえ。」と倉持は、思い出して言った。

「倉持。俺に内緒で付き合っている女、いやへんやろな?」

「とんでもない!彼女出来たら、真っ先に報告しますよ。」

 そう言った、倉持に「馬場みたいな例もあるからなあ。」と、俺は言った。

 馬場とは、EITO東京本部の隊員のことで、暫くの間、EITO大阪支部にオスプレイ操縦士とホバーバイクのドライバーを兼ねて、出張に来ていた。

 馬場は、別れた金盛隊員とよりを戻したが、遠距離恋愛になり、落ち着かなかった。

 理事官と大文字伝子さんの計らいで、本郷弥生隊員とトレードになった。

 馬場は、ある歌謡曲が好きで、カラオケに連れて行くと、その曲ばかりを歌っていた。

 それほど、未練が強かったのだ。

 倉持は、この上ない、いい後輩だ。澄子が家出あいた時、必死になって探してくれた。

 いつか、パートナーが出来たら、喜んで祝ってあげたい。例え、相手がワコでも。

 あ。あれは、夢やったな。

「EITOも南部興信所も、職場恋愛は、御法度やない。尤も、所長と所長夫人は職場結婚やけどな。」と、言って俺は笑った。

「幸田さんは、前から知ってたの?」と、後から入った横ヤンが尋ねた。

「知ってるも何も、総子が所長の部屋に夜這いしにいくとこ目撃しましたがな。」

「えーーーー。凄いな。」と、横ヤンが改めて驚いた。

「ほな。私と同じやな。前から狙ってたんや。ただの常連で終らせたない。そう思って『冒した』んや。」

「澄子。人前で自慢することか?まあ、身内同然やけど、皆。」と、俺は鷹揚に笑った。内心は『堪忍してや』だったが。

「新婚旅行は、行かないんですか?あの二人。」と、倉持ふぁ助け船を出した。

「今の所はな。『子作り』する時間が欲しいから、休暇くれって、大前さんに行ったらしい。それで、この前の事件は不参加。呆れてたわ。普通は、『有給休暇下さい』って言うだけやのに。ウチは変わりモンばっかりや、って。」

「そういう、コマンダーかて、ノリちゃんに手エ出したんやろ?」と、花ヤンが言うので、「ちゃうちゃう。澄子や総子と同じ。総子と二美が唆して、夜這い。」

 俺の言葉に皆「へーーーーーー!!」と感心した。

「何か、表が騒がしいな。」と、横ヤンが言った。

 表に出た俺は、ピンと来た。隣の那珂国料理店だ。ある貼り紙を見た那珂国人が差別だと騒ぎ出したのだ。

「澄子。あれ、持ってきて。」澄子は、俺が以前書いた貼り紙を持って来た。

「仲村さん、コレ貼りや。」

 俺が書いた貼り紙には、こう書いてあった。

【那珂国人のお客様へ

 ウチには、那珂国語を普通にしゃべる店員がいません。料理のオーダーも間違うかも知れません。通訳の方同伴でご来店下さい。また、料理によっては、『持ち帰り』もかのうです。尚、店内で他のお客様のご迷惑になる行為を発見した場合、国籍民族を問わず、警察に通報、逮捕連行して頂きます。料理の代金は『公平に』頂戴致します。

 】

 そして、便乗した、悪辣系New tuberに向かって、「ヘンなことしたら、テロを見ました、って証言するよ。」と言った。

 カメラを持った、ご一行と、問題を起こしている那珂国人は去って行った。

 隣の仲村さんは、何度も何度もお辞儀をした。

 澄子の目が輝いている。しまった。今夜は地獄や。

 ―完―


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る