チョコのレシピ
○月〇日。
今日は、浮気調査が午前中で終ったので、久しぶりに4人でスーパーに行った。
何やら、高校生らしき4人組が店内を、買物カゴ持つ訳でもなく、うろついている。
俺は、花ヤン、横ヤン、倉持に目配せをして、四方に散った。
後で主犯と分かった餓鬼、いや、少年は、俺の目の前で、菓子をセーターの下に隠そうとした。
「君は、どこの学校や?」「あんたは、何や?プータロウか?」
「万引きはアカンで。」「警察か?」「警察ちゃう。」「警備員か?」「警備員でもないな。」「店員とちゃうやろ。」「さあ、どうやろな。」
少年は、その商品を棚に戻した。「これで、ええやろ?プータロウのオッサン。」と言い、俺の横を通り過ぎようとした。
「無かったことにはならんわな。」「返したやんけ。見てたやろ?」
「ちょっと、移動しようか?」少年は、「やかましなあ!」と大声で言った。
どうやら、それが合図やったらしい。少年と、後の3人はダッシュして逃げようとした。
俺は足払いをした。簡単に、前につんのめって、転んだ。
ウチの所員は、俺を初めとして、全員優秀や。すぐに、他の通路で騒いでいた声も収まった。
だが、流石リーダーや。最後まで徹底抗戦する気らしい。
「お前に、逮捕権あるんか?」「あるよ。」「警察ちゃうやんか!」「警察とチャウなあ。」
馬乗りになった、俺の所に、警備員がやって来た。
「ご苦労様です。主任の要請で、警察に連絡しました。」と警備員は言った。
多分、ここのレジ主任は、警察にも警備員にも同時に連絡した筈や。こういう場合のマニュアルは、どこの店でもある。
「未成年への虐待や。訴えたる!」俺は少年に尋ねた。
「成人式はスーツで行ったんか?和服か?」「スーツや。それがどうした?」
警備員は笑っている。『語るに落ちる』とは、このことやからな。
間もなく、駐在と応援の警察官と店長がやって来た。
俺達は、4人組を引き渡した。
警察官と4人組が店の玄関ドアを一歩出たとき、待ち構えていた横ヤンが、少年達のポケットを探り、買物カゴに入れ、店長に渡した。
「万引き確定やな。」と俺が言うと、「俺らは初犯や。みんなやってるから、真似した岳や。」と喚いた。
花ヤンが嫌味を言った。「初犯にしては、手際良かったで。どっかで特訓したか常習かは、すぐに分かるで、。『ほやほや』の『成人』はん。」
澄子の店に寄る途中、バイブが何度か鳴っていたから、所長に連絡したら、「幸田、取り込み中やったか?」と尋ねられた。
俺が事情を説明すると、「高校で『立てこもり』らしい。応援要請があったら、頼むで。」と所長は言った。
現地には、EITOの『お嬢』のチームが向かったらしい。「了解。」と応えたが、多分大丈夫だろうと、自信もないが、思っていた。
お嬢は、成長した。所長夫人でもあり、EITO大阪支部でもある総子は、成長した。
店に着くと、澄子が、チョコレートケーキを出してきた。
クリスマスケーキで懲りていた俺は、倉持に目配せした。
倉持は、恐る恐る食べたが、「上手い!」と言ったので、俺達も食べ始めた。
「藤井さんにレシピ、送って貰ったんよ。犯罪レシピチャウで。今回は、ええ出来やろ?」
「藤井さんって、伝子さんのお隣さんの料理の先生か?成程ナア。」
俺はともかく、倉持も花ヤンも横ヤンも、くれる相手がいない。涙流して、頬張った。
「じゃーん。」澄子が冷蔵庫を開けると、もう『一皿』チョコレートケーキがあった。
俺は嫌な予感がしたが、それはすぐに杞憂だと分かった。
「明日来たお客さんに、配ろうと思ってんねん。」と澄子が大きな胸を揺すって言うのに、「そら、ええ宣伝になるなあ。お前、やっぱり頭ええなあ。ええ嫁はんや。」と、俺は本心を隠して、ベタ褒めした。
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