01 あの二人、信用できない

【名演技篇】


リカは三杯目のプリンを空きにしたら、ベンチの隣に座っている青年はやっと反応があった。


その反応の理由は、恐らく、リカがプリンのカップとレジ袋をまとめて燃えるゴミに捨てたから。


「あの、ごみ分類をちゃんとしないといけないと思うけど」


まるで大人しい小学生が授業をサボる兄に説教するような口調だった。


七三の分け目で頸の根まで整えた髪、ブルーフレームの楕円型眼鏡、ラベンダー色のTシャツに白いジンズ、清らかで陽気な声、どう見ても公園で朝勉強をするいい子の大学新入生。


けど、彼の後ろに立っている「秘書の青野翼あおのつばさ」と名乗った人物は確かにこのように彼のことを紹介した。


「僕のBOSS、グローバル企業『神農しんのうグループ』のCEO、渡海わたるみイズルです。女性が好まれそうな人気タイプのCEOとイメージが違って、恐縮ですが、正真正銘なCEOです。」


異世界のキノコを見るような目でリカはあのCEOをもう一回観察した。


外見はともかく、精神的にとても自称の22歳に見えない。2で割ったらありかも。


「言いたいのは、それだけ?」


リカはティッシュで口元を拭いて、淡々と聞き返した。


「プリンが好きですか?一気に三個も食べてすごい!」


CEOイズルの無垢な瞳は、好奇心が溢れているように見える。


「久しぶりに食べたから、何か不都合でも?」


でも明らかに、リカは個人の好き嫌いにつっこまれたくない。


「違います!おぼっちゃま、いいえ、CEO!リカさんの目に映っている疑いと軽蔑の文字が見えないですか?!今日の目標もお忘れですか?一番短い時間内で、彼女にこちらの最大の誠意を伝えることです!」


もうCEOイズルの無駄話に耐えられない青野翼は、手足を踊らせながら会話に割り込んだ。


CEOより、秘書の存在感が余程強い。


名前の「青野翼」に合わせるためなのか、彼のカジュアルスーツは青色で、左胸のポケットに白い翼の刺繍がついている。




「いいえ、無理矢理な話だから、人に押し付けるのが悪い。ほかの手を探そう」


CEOイズルは首を横に振って、笑顔でリカにバイバイをした。


その様子を見た青野翼は自分の頭を抱えて空に吠える。


「何ということだ!!あの殺伐果敢なイズルおぼっちゃまはどこに行ったのだ!一か月の間にもう百回以上説明してあげたんじゃないか!命に関わっているから、思いやりは禁物!思いやりは禁物!思いやりは禁物だ!」


「落ち着いて翼ちゃん!ここは公共場所だ。思いやりが必要なんだ。大声出さないで!」


CEOイズルは青野翼を抑えようとしたが、逆効果がだったみたい。


青野翼の顔は暴風雨前の雲の色に染まって、声を震わせながらCEOイズルに迫った。


「公序良俗の話はもうやめましょう!今のCEOは殺人窃盗誘拐をやり放題しても、ごみ分類や交通ルールを守るのは絶対だめです!」


「オ、オレをなんだと思った?!」


CEOイズルは強く抗議した。


「お前こそ、治療を受けたほうがいい!今すぐ救急車を呼ぶから!そこから動くな!」


イズルは電話をかけようとする。青野翼は必死に携帯を奪おうとする。


リカは冷たい目線で二人の低レベルの争いを少しだけ見守った。


すると、カバンからA4サイズのプリント一枚を取り出して、彼たちの目の前に置いた。


「もう有意義な話がないなら――これは私の条件だ」


「?!」


青野翼は驚きで背が震えた。


「リ、リカさんはこの仕事を引き受けてくれるのですか?」


「この条件に飲んでもらったら、の話よ」


青野翼の目が光った――


が、プリントの内容を見た次の瞬間、その光は深い悲しみの闇と化した。


「百、百倍の月給に……会社の株?!」


「私を雇用するかしないか、あなたたちの自由だ。さっさと決断すればいい」


リカはかなり上から目線で話を投げた。


どこかの恋愛小説にあるステレオタイプの傲慢CEOのように。

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