暗黒家族の令嬢は悪役ではないので、婿入り復讐計画を受け付けません

星琴千咲(ほしことちさき)

序章 屈辱!CEOは強制契約された?!

00 あんたの人生を乗っ取るわよ

【キャラ紹介】




万代よろずよ家:


家族で自称するが、本当は新興宗教団体のような組織。異能力者を集め、育て、裏で社会を操ることを目的にしている。




〇リカ:


万代家7代目の長女、継承順位一のお嬢様。


聡明で容姿秀麗だが、冷酷毒舌、融通が利かない。


逆上を狙う友人に嫉妬され、陥れられ、家から追放される寸前。




渡海わたるみイズル:


大企業神農しんのうグループの御曹司、反逆心の強いドラ息子。


家族全員が万代家に殺された「事故」で、なぜか彼だけが異能力が覚醒し、災難から逃れた。


復讐のためにプライドを捨てて、リカに媚びを売るつもりだが、相手に本当のバカにされたみたい……




青野翼あおのつばさ


万代家のライバル組織の幹部。イズルの復讐に手を貸している。


性格が悪い。嫌がらせをするのが得意。




〇エンジェ:


リカの友人で、自分こそが本当のヒロインだと信じ、「悪役令嬢」のリカの人生を乗っ取ろうとしている。ただの夢女ではなく、ちゃんと手段と頭脳を持っている。




*********


*********




とある主人のいない民家の中で、侵入者は毒のような甘い囁きを吐きながら小細工をしている。


「これで、あんたのものはあたしのものになるわ」


盗聴器、盗撮カメラをベッドの下や引き出しの裏側、押し入れの隅にしっかり固定し、それから、変な文字が書かれている数枚の札を部屋の片隅に隠した。


「なんの特別な力もないあんたは、この家族の『王女』に相応しくないのよ。あんたの王位、あんたの王子様、あんたの幸運……全部あたしのものになるの。愚かな部下たちと『蛮族の世界』で余生を送りなさい。世界が変わったら、あんたのない『異能力』が生まれてくるかもしれないわ」


扉の外から足音が近づいてくる。


侵入者をここに案内した家政婦だ。


「まだですか? もうこんな時間だし、早くしないと疑われちゃうよ」


家政婦は扉を開くと、あるイケメンの青年の姿が目に映った。


「忘れ物を見つけました。ありがとう、みずほ姉さん」


「青年」は嘘のことを口にしながら振り返って、母親よりも年上の家政婦に愛想のいい笑顔を見せた。


「今回は本当に助かりました。あれがないと、あいつときれいに別れないからね」


「リカさんもリカさんですね。一族の長女とはいえ、好きな女子のいる男を強引に縛るなんて……お二人はきっと大変でしょう」


ゴシップ好きな家政婦はやれやれと嘆いた。


「いろいろ邪魔されたけど、幸い、皆の助けがあって、なんとかなりそう。エンジェとの結婚式でみずほ姉さんに前列の席を用意してあげます」


「ほほほ、期待していますわ」


この住宅区は特別なものだ。選ばれたものしか入居できない。


よそ者を入れるのを厳しく禁止されている。


だが、毎回も額の良い「お礼」をもらっているし、青年の態度も心地よいもので、家政婦はいつも喜んで青年に便利を提供している。


ただ、彼女が「イケメン青年」だと認識している人は、防犯カメラの中で映された姿は、イケメンでも男性でもなく、青色の染髪を持つ細い女子だった。


――


数か月後、その民家の主人の少女は、呪われたように血まみれな姿で森の祭壇に倒れた。


――


人生の乗っ取りが、成功した……?

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