【5月号】:有栖川魔法学園公式新聞
【5月号】:有栖川魔法学園公式新聞
◇大盛況! 第一学年生初参加の魔法対抗戦!
新一年生諸君たちが有栖川魔法学園へと入学してから、もう間もなく二ヶ月が経とうとしている。
突然だが、ここで君たちに問いたい。
この学園には慣れただろうか。今まで関わることのなかった『魔法』を目の当たりにすることで何を思ったのだろうか。その未知に触れることで何を感じたのだろうか。
きっとその多くは、君たちの内に秘める何かを大いに刺激したに違いない。
しかし、それらはまだ君たちがこれから体験するであろう多くの不可思議な世界のほんの一端でしかないのだ。
今回君たちが参加した『オリエンテーション』もまた、そんな未知の世界へと進むための背中を後押しする良い経験になったことだろう。
さて、そんな今回の『オリエンテーション』だが、その様相はなかなかに白熱した激戦模様を見せていた。
直接的な魔法による戦いこそなかったものの、こと上位入賞者を中心として様々な知略や戦略が巡らされていたことについては、その場に居合わせた誰もが感じ取ったことだろう。
特に上位者五名に関してはそれが顕著に表れていたと言っても過言ではない。
第一位:一年A組
第二位:一年A組 リーナ・ミリオン 記録:四十七分三十七秒 パートナー:
第三位:一年B組
第四位:一年D組
第五位:一年A組
今回上位に入賞したこの五名は、いずれも試験の開始から一時間を待たずして合格を勝ち取った。
一時間を経過したあたりから後続のペアも順次上がる様子を見せていたものの、やはり一時間の壁を越えるだけの力量を見せた彼らには今後も期待せざるを得ない。
また全体的な試験合格者数を見れば昨年よりも人数が増加している点も見逃せない。
個の力で突き抜ける第二学年生に対し、第一学年生は組織力で問題に臨む傾向が伺える。
これからの魔法対抗戦でどのような対決を見せるのか、公式新聞部一同はこれからについて期待に胸を膨らませている。
なお今回の『オリエンテーション』では学園側からはMVPの選出は行われないものとされているが、有栖川魔法学園公式新聞部一同はすべての第一学年生の諸君へと拍手を送りたい。
いよいよ始まる魔法学園での生活を迎える諸君に、上級生を代表してこの言葉を送り締めるとしよう。
――ようこそ魔法学園へ
◇取材班は見た!! 合コン会場でまさかの修羅場を目撃!!
花が香る5月の始まり。
ゴールデンウィークに伴い学園が休校となるも、有栖川魔法学園公式新聞部の取材班は鮮度の高いネタを求めて街中を巡り歩いていた。
その日は晴れ晴れとした青空がよく見渡せる絶好のお出かけ日和。
その影響か労せずして多くの学園生徒を目撃するも、幸か不幸か記事にするような目立った出来事は起こる気配を見せなかった。
そう、その時が来るまでは――。
あるいは平和が一番なのかもしれない。記事になるような出来事などないほうが幸せなのだ。
陽も落ちて人影が薄くなり始めた頃、そんなことを考えながら取材班が帰路へと足を踏み出したその時に、彼らはとある男子生徒が街中へ向かって歩く姿を目撃した。
つい気になったためその跡をつけてみると、その男子生徒(仮名:S氏)は友人と思わしき二名の男子生徒と共に街中へと繰り出し、やや高級感の漂う料理店へと足を踏み入れていくではないか。
もちろんそれだけ見ればS氏たちが三人で夜に連れ添って食事をしているだけに見えるだろう。
だが取材班はそんな彼らの様子にどうにも怪しい気配を感じずにはいられなかった。
まずは服装だ。取材班はその三名の男子生徒をよく知っていたのだが、ことオシャレに無頓着だと公言しているS氏の身なりが普段と比べても整っているように感じた。
またもう一名、よく見知ったブランドの服を上下に着こなし、かつやや大胆な大人の雰囲気を感じさせるファッションを感じさせるその男子生徒は、取材班の知る限りでは女性が絡まなければそこまで気合いを入れることはないと認識していた。
それは詰まるところ、S氏を始めとした三名の男子生徒はただ食事をするだけに留まらない時間を過ごすのではないかと、そんな可能性を示唆しているのではないだろうか。
取材班はその日最後の希望をかけてS氏たちの入店した店を訪れた。
以下はその店で目撃した一部の場面をご紹介する。
******
――なぁ、おい。今日って本当に○○校の女子が来るのかよ。あそこって結構なお嬢様学校なんだろ? ……やべぇめっちゃ緊張してきた!
――ぼくの中学校の友達がそこに通ってるんだけど、男子との出会いがない〜って連絡が来たんだよ。あそこ女子校だしね。
――相変わらずお前の交友関係には驚かされるぜ……。とにかくっ! 今日はなんとしてもお嬢様たちと良い関係を築きつつ、あわよくばもっと親密な関係に至るためにもっ! お前らしっかりと協力してくれよなっ!
――いや、なんで僕がそんなことを……。
――うるせぇぞクソ眼鏡! だいたいこんな悲しい状況になってんのも半分くらいはお前のせいだからなっ! てめぇ一人で良いとこ囲いやがってからに。
――だってさ○○
――いやもう半分はお前だけどな。ってか先に聞いておくけどお前は今日の合コンではどういうスタンスなんだよ。え、いま確か年上の彼女とか居たよな。俺の中で○○(伏字)は今日お助けキャラポジだと思ってるんだが。
――うん。別に○○のフォロー役でもいいよ。特に連絡くれた子は元カノだから興味ないし。
――え?
――あーでも今火曜日が暇なんだよね。もし狙いたいって子がいたらごめんね
――え?
(入口のチャイムが鳴る音)
――あ、もしかして来たんじゃない? ○○、そんな惚けた顔してると笑われるよ。
――おぅ、悪いな。なんか始まる前から終わらせに来たやつがいた気がするがきっと気のせいだな。
――あ、ほら来た来た…………………………来た?
(複数人が近づく足音)
――ふふっ、あらあら皆さん。奇遇ですね。
――ん? なんじゃお主ら。こんなところで会うなど珍しいのぅ。
――やぁ○○さんに○○さん、それと○○さんも。もしかして三人は今からここで食事を?
――変なことを聞きますね。ここにいるのだからそれは当然のことでは? ちなみに今日は女子会なので他にも来ますよ。
――あ、そうなんだ。ちなみに他には誰が来るのかな?
――なんじゃ気になるのかえ。○○と〇〇と〇〇、あと〇〇じゃ。
――……おい、今お前の親族の名前が聞こえたんだが。
――え、なに? よく聞こえない。
――さて、次はこちらが尋ねる番ですが。あなた方は何をしにここに来られたのですか? 随分おめかしをされているようですが。 ……あなたに聞いているんですよそこのメガネ。
――なんじゃ、よく見れば今日はまた随分と身なりに力を入れているではないか。 ……まさかお主。
――私としてはなんでも構いませんが……面白そうですので一応お話だけ聞かせてもらえますか?
――……なぁ、おい。ここはこいつを差し出して俺らだけで楽しく合コンって案はどうよ。むしろそれしかなくね?
――マジかー。僕なにか悪いことしたのかなー。
――さっさと一人に……いやなんでもねぇ。そうだよなお前は悪くねぇよ。
――うんありがとう。涙出そう。
――もう正直に話した方が早いでしょ。場合によっては場所変えて仕切り直しとかになるかもしれないから時間もないし。――〇〇さん、あのさ――
――………………………………………………は?
******
残念ながらそれより先は諸事情により音声データを紛失したため情報をお届け出来なくなってしまった。
しかし我々は引き続き彼らのスキャンダルを追い求め、いずれ陽の目に曝け出して見せよう。
有栖川魔法学園新聞部に乞うご期待いただきたい。
◇先取り! 六月行事予定!
■六月度定期試験
六月に開催される定期試験の内容は『キングス・ファイブ』です。
また例年同様に七月の定期試験も『キングス・ファイブ』を予定しております。
今後の予定:
・六月:クラス対抗戦(一クラス対一クラス)
・七月:学年対抗戦(四クラス総当たり戦)
・八月:日本プロチームを招いての夏合宿
※『キングス・ファイブ』の試験は二、三年生のみ。一年生には別途課題を設けます。
■その他
・六月下旬に学力定期試験を予定しています。三科目以上赤点を取った補修を受ける義務が発生するためご注意ください。
・六月に魔法の指輪の定期メンテナンスがあります。担任教師から連絡が届いたクラスは指示に従って魔法の指輪を提出してください。
以上です。
◇掲示板
・今月も落とし物が届いております。心当たりのある方は事務員にお尋ねください。
※五月の落とし物:カードケース、眼鏡、教科書、ほか
・図書館館長からのお知らせですが、要望のあった新書を取り揃えました。興味がある方は図書館までお越しください。
******
※今月の『突撃料理研究会!』コーナーも取材班の体調不良につきお休みとさせていただきます。(今年三度目)
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