第2話 ダンジョン
ダンジョンの最奥ってどんなところか、みなさんご存知ですか?
正解は「湿気がすごい」です。
どうです? みなさん当たりましたか?
ほら、ゲームとかのダンジョンって、なんかカラッと乾燥してそうな感じがするじゃないですか?
パラパラ……って、たまに天井から石粒が落ちてきたりしちゃって。
そんでもって、謎に壁に松明がかけられちゃったりしちゃって。
なにそれ? 誰がその松明の燃料とか補充してるの? っていう。
まぁ、とにかくそんなイメージじゃないですか、ダンジョンって。
それが、最奥。
しかも「脱出に二千年かかるダンジョンの最奥」といったら、も~! 湿気がすごいのなんの!
深いんでしょうねぇ。深いんだろうなぁ。
なんせ脱出に二千年かかるらしいからなぁ。
めちゃめちゃ地底にあるんだろうなぁ。
んでもって、ここは異世界だから、どんだけ地下に掘っていってもマグマとかなくて、延々掘り進めていけちゃったんだろうなぁ。
だから、こんなに真っ暗でジメジメしてるんだろうなぁ。
でもって、そのジメジメ暗闇の中でジッと体操座りしてこんなことを考えてるオレは、これから一体どうすればいいのかなぁ。
「ステータス、オープン!」
シーン。
反応なし。チ~ン。
マジでどうすりゃいいの。
家でゲームしてた時の上下スウェット姿のままでさぁ、こんな真っ暗な二千年ダンジョンに放り出されてさぁ。
あれでしょ? 転移させられたってことは、あの緑ジジイは実際に神だったってことでしょ?
んで、神だったってことは、オレに不老不死チートも付与してくれて……るよね? 多分。
でさぁ、もしだよ?
もし、このままどこまで行ってもず~~~っと暗闇で、食べ物もなにもなかったとするじゃん?
え? そしたらどうなるん?
お腹空いたままさ、死ぬことも出来ないでさ、永遠に暗闇の中で苦しみ続けるとかになりそうじゃない?
え、それって地獄じゃね?
あれ? オレ、地獄送りにされた?
あの緑神を煽ったから?
いやいや、そんなのあんまりでしょ。
だって向こうが寒いボケをかましてくるのが悪いんじゃん。
あ~、あの緑神……。
今頃オレを見てニタニタ笑ってんだろうなぁ。
性格悪そうだったもんなぁ。
たぶん友達とかいないんだろうなぁ。
友達いたら「そのギャグはどうかと思うよ」って教えてくれるハズだもんなぁ。
そういう注意してくれる友達がいないから、ああいうスベったギャグに暴走しちゃったんだろうなぁ。
わかるわかる。
オレも生まれてこのかた友達なんていたことないから、そういう部分あるわ。
ま、その結果ネトゲのソロプレイにハマって、こんなことになっちゃったんだけど。
そう考えると……あの緑神も可哀想なやつだよな。
友達がいないがゆえの暴走を、オレに突っ込まれて悔しい思いをしたんだろうから。
言ってみれば仲間のようなもんだ。
だろ? 緑神様?
ね?
だから、ね?
ほら、なんかもうちょっとチートとかさ?
シーン。
優しい口調で頭の中で語りかけてみても、なんの反応もなかった。
聞いてんだろ、クソ緑神!
どうせこっそり覗いてんだろ、知ってんだぞ!
同類として哀れんでやったんだから、なんか寄越せよ!
ちょっと煽られたからって、こんな地獄に二千年閉じ込めるとかいくらなんでもやりすぎだろ!
おいっ、聞いてんのかよっ!
パァ……。
突如、小さな光が宙に発生する。
「な、なんだ……?」
やがてそれは、オレの手のひらの上にゆっくりと舞い降りてきた。
「え、なに? 緑神がなんかくれた? やるじゃん、緑神!」
喜び勇んでオレは手のひらの中を見つめる。
空から降ってきたもの。
それは──。
あめ玉だった。
「あめ玉かぁ。ほんとケチだな、あの緑神。まぁ、何もないよりはマシか」
ポイッ。
口の中にアメ玉を放り込む。
「ん? んんん……っ?」
すると、みるみる視界が鮮明になってきた。
「おお、夜目が効くようになるアメか! やるじゃん、緑神!」
さっそく辺りを見渡す。
どうやらオレは、小高い丘の上に座っているようだった。
かなり広そうだ。
東京ドーム何個分? とかそれくらいの広さ。
床がもぞもぞ動いてる気がするのは、まだ目が慣れてないからかな?
目を細め、地面に焦点を合わせてみる。
「……ん? んんんっ……?」
もぞもぞと動いていたもの。
それは目の錯覚などではなく。
全て。
──ゴブリン、だった。
「おぉぉぉおいっ! んだよこれぇ! くっそ~~、あのクソ緑神のヤロー! ここは、とんだ地獄じゃね~~~~か!!!」
オレの声に反応し、ぶわああああああああといるゴブリンたちが、一斉にこちらに顔を向けた。
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