零堕の唯一神

リヒト

第一章

プロローグ

 神が魔に敗れて地へと落ち、魔が地上を覆った世界。

 文明が高度に発達していたことを示す旧世代の建造物である高層ビル群は苔に覆われて崩れ、魔の巣窟へと成り果てている。

 そんな世界で人類は地下や洞窟、僅かな力を持った神を祀る祭壇の周りに居住区を作り、細々とした生活を送っている。


「螳壽悄繝?せ繝亥瑞縺阪◎縺」

 

 醜悪な見た目の怪物。

 ヘドロのような汚泥が固まり、幾つもの触手となって蠢く百足の下半身を器用に動かし、いたるところに醜悪な口を持つ黄色いローブのようなものを纏い、何も見えない暗い闇を見せるだけの顔を持つ5mを超える上半身をふらふらと揺らしながら人間の耳では解読することの出来ない言葉を発しながら進んでいく『魔』。


「……」


「……」


「……」


 そんな魔から身を隠すように物陰へと体を潜らせ、息を潜ませる数人の人間が魔のすぐそばに存在していた。


「菴墓腐繝?せ繝医′縺ゅk縺ョ縺?繧阪≧縺具シ溷女鬨灘ォ後□」

 

 魔の持つ百足の一つが振るわれ、人間たちが隠れる瓦礫を吹き飛ばす。


「蜿鈴ィ灘ォ後□縺√?縲∽クュ髢薙ユ繧ケ繝亥ォ後□縺√?縲∵耳阮ヲ繧ュ繝懊Φ繝」

 

 その身を隠していた瓦礫がなくなり、その姿が日の目に晒された人間たちの方へとその黒い顔を向けた魔はどこか嬉しそうに上半身を揺らしてそちらの方へと体を向ける。


「クソッ!気づかれた!俺と零、隼人はここで足止め!他は全員退却!少しでも多くを生き延びさせ、遺物を村へと持ち帰るのだッ!」

 

 人間の一人は焦ったように声を上げながら立ち上がり、手に持ったちっぽけな鉄の棒を構える。

 そんな男を支えるように二人の男も立ち上がってその横に立ち、他の人間は魔から逃げるために走り出す。


「縺ェ繧薙〒螟ァ蟄ヲ縺ェ繧薙※蜒輔?陦後%縺?→縺励※縺?k縺ョ縺?繧阪≧縺具シ」

 

 だが、人間たちが逃げるよりも魔が百足を伸ばし、退路を塞ぐ方が速かった。


「ダメですぅ!逃げられませんッ!」


「くそったれッ!!!なんとかぶち抜けるわけ……ねぇよなァ!」


「最後の最後まで足掻くぞッ!てめぇら!逃げられそうなら一人でも逃げるんだッ!」

 

 絶体絶命。

 そんな状況にいともたやすく追い詰められた人間たちはそれでも決して諦めることなく貧相な武器を構え、魔へと対峙する。


「ハァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアア!!!」


 そんな人間たちの耳に美しい女性の声が聞こえてくる……声が聞こえてくるのは遥か上空からであった。


「蜒輔?繝九?繝医↓縺ェ繧翫◆縺」

 

 大剣を持った一人の女性が遥か上空より舞い降り、その勢いのままに手に持つ大剣を化け物へと叩きつけ……一刀両断。

 いともたやすく一体の魔を女性が殺す……圧倒的な力でもって。


「大丈夫だったかしら?」

 

 魔を倒し、大剣を肩に担いだその女性は目の前の信じられない光景を前に呆然としている人間たちに向けて笑顔を見せた。

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