第27話「魔女達と修行」


詩音は今日も半袖半ズボンの体操服に着替え汗だくで筋トレをしている。

転生した詩音には大きな目標があった。それは魔術を極め最強の魔女となる事である。

詩音はその為に1ヶ月前からレオナに頼み込み一緒に修行していた。

レオナに重力魔術で20倍の重力負荷をかけて貰いつつ筋トレする詩音。

健全な肉体に健全な精神は宿るとは良くいったもので、

身体に高負荷な魔術にも耐えられる様に更に身体を鍛えているのだ。

まずは腕立て1000回から始めている。


「998、999、1000!」


「よくできましたシオン。じゃあ少し休みましょうか?」


「はい、お姉様・・・」


若干だが息を切らしていた詩音。

普段ならなんて事の無い筋トレだが、20倍の重力下でやるとなると相当こたえるなぁと感じた。

詩音がそんな風に考えているとレオナが水筒を詩音に差し出してくれる。


「ありがとうございます、お姉様」


「いいのよシオン。それより無理しないでね」


「大丈夫です。じゃあ次はイクリーサ先輩、お願いします」


「剣術の稽古ねぇ・・・言っておくけど手は抜かないわよ?」


「はい、むしろありがたいです」


二人は練習用の木刀を構えると一斉に距離を詰めた。

互いの剣技は互角で中々に有効打が決まらない。


「そろそろ使い時ね・・・。エクステンデッド!」


詩音が唱えた呪文は身体強化の呪文である。

この魔術は術中とその後の身体への負荷が大きい為にこれまで基礎体力を鍛えて来たのだ。

今の詩音は身体が羽の様に軽くなっていてパワーも増している。

木刀を小枝の如く軽々と振り回すのも造作もない事だった。


「くっ、中々やるわね・・・」


「容赦しませんよ、先輩!」


詩音の猛打に後ずさりしていくイクリーサ。

そしてついに剣は弾かれ地面へと転がった。


「次!エリシア、お願い!」


「はいはい、分かりましたよ」


エリシアは氷の槍を召喚すると、詩音に向けて次々と射出していく。

以前は避けるのに手一杯だった詩音だったが、今度は避けずにそれを最低限の動きでかわした。

地面に刺さった氷の槍を手にやる詩音。

詩音はその氷の槍で向かって来る氷の槍を次々と弾き落としていく。

そしてついにエリシアの眼前にまで近づいた。


「な、中々やるねシオンちゃん」


「それ程でも・・・あるわ」


こうして今日の重力の魔女レオナと雷の魔女イクリーサ、氷の魔女エリシアとの特訓は終わった。

ここ一ヶ月は早朝にこの訓練を毎日続けている。

こんな面倒事に付き合ってくれてる魔女の先輩方にも感謝しなくてはならない。


「ありがとう、みんな」


「無理しないで下さいね」


風の魔女シルフィーヌが紅茶の入ったカップを差し出す。

詩音はそれをひとすすりすると興奮した心と体を落ち着かせた。


「ありがとう、シルフィーヌ。ところでお姉様」


「何、シオン?」


「お姉様、このまま鍛えていけばアリス様に勝てると思います?」


「さあ、分からないわ。あのお方の魔術は未知数だから・・・」


アリスは裏生徒会最強の魔女だ。

この世界の魔女全体でも5本の指に入る実力者だという。

最強の魔女を名乗るのなら彼女に勝たなくてはならない。

更にアリスは3年生だから卒業までに決闘をしないといけない。

唯一見た例のテロリストの人質になりかけた時の天候操作、それ位しか彼女の魔術の情報がない。

天候操作というのだから風や水、大地、雷と、火以外の属性は容易に操るだろう。

もしかしたら蛙とか蛇とかとんでもないものまで降らしてくるかもしれない。

アリスの隠れた能力に畏怖する詩音であった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る