第25話「魔を持たぬ者達」
ついに始まった学園祭。
華やかな模擬店にお客として訪れる紳士淑女の皆様方。
大イベントに学園は沸いていた。
一方その頃詩音は決闘祭の準備の為に戦闘服に着替えていた。
「シオン会長、いいんですかそんな服装で。魔術師のローブなら学園の物が・・・」
「いいのよマリア。この方が動きやすいし戦いやすいの。それより生徒会の代表はあなたなんでしょう?準備はいいの?」
「はい。生徒会は全力で裏生徒会をサポートします。これは私の一存です。というか今の生徒会は私と会長しかいませんし。」
「そりゃそうね。さてっと・・・」
半袖半ズボンのぴっちりとした戦闘服に身を包んだ詩音は早速決闘祭の会場へ急いだ。
そこには各クラスやサークルの優秀な魔術師達が準備を整えている。
詩音はその中でも注目の的だ。
何せ生徒会長にして魔女、そして裏生徒会の代表なのだから。
「それでは決闘開始!」
今回の決闘はいつもと違う特殊なバトルロワイアル方式だ。
決闘開始の合図とともに詠唱を始める生徒達。
それらの詠唱が終わると火球が、つららが、雷撃が、詩音めがけて一斉に飛んできた。
「今日はまず一緒に彼女を狙うわよ!」
最も強いとされる詩音を集中的に狙う作戦である。
それを防いだのは詩音ではなく、炎の女魔術師エルデールであった。
「これで貸し借りなしよ!」
彼女は炎魔術のサークルの代表である。
この間のサティアとの一件で詩音に恩義を感じているエルデールは今回の決闘祭で力を貸す事に決めたのだ。
「ふーん、まあいいけどね!杖よ!」
詩音は敵の魔術攻撃を難なくかわし、それなりに手加減して魔術を放つ。
浮遊した杖も加わり手数は増え、万全の状態で戦闘が始まった。
しかし次の一撃で状況が一変した。
バン!
銃声の様な音、いや銃声が学園内に響き渡る。
凶弾に倒れるエルデール。
詩音はエルデールに駆け寄り、速攻で治癒魔法を掛けた。
「ブック!癒しよ!」
見る見る内に傷口が塞がっていくエルデール。
幸い弾丸は貫通しており、中の臓器も十分再生できる範囲内の傷だった。
周囲を見渡す詩音だったが、そこには銃を構えた兵士らしき人物達が生徒達を襲っていた。
必死で逃げまどう生徒や観客達。
詩音は学園がテロリストに襲われたのだなと状況を理解するとすぐ魔術書を呼び出した。
手加減などしていられない。
「ブック!そして杖よ!」
するとテロリストの人数分はあろうかという大量の浮遊した杖が現れた。
杖の魔術弾で気絶するテロリスト達。
後残り一人と言う所で状況は変わった。
「その奇妙な杖を消せ!さもないとこの少女を―」
「この少女を一体どうするのかしら?」
テロリストの男は泡を吹いて倒れていた。
「純度100%の酸素は猛毒なの。錬金術の授業で教わらなかったのかしら?」
不幸にもテロリストが人質に取ったのは天の魔女事アリスだった。
天の魔女の天は天候の天。
テロリスト周囲の酸素濃度を操作する等造作もない事だった。
こうして波乱の学園祭は幕を閉じた。
そして・・・
―
あれから学園祭は中止された。
どうやら魔力を持たずに産まれ虐げられてきた集団によるテロ行為らしい。
幸い詩音や他の魔女達の活躍もあり怪我人が少しでただけで済んだが、
さすがに学園祭の続行は無理で、終幕のダンスだけが許可された。
「怪我はない、シオン?」
「大丈夫ですわ、お姉様」
詩音の身を心配するレオナ。
一歩間違えば死んでいたのであるから当然である。
「それよりお姉様、私と踊っていただけませんか?」
「んもう、心配ばかりかける娘なんだから・・・いいわよ、踊ってあげる」
こうして二人のダンスが始まった。
詩音はこの時間がいつまでも続くようにと祈った。
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