第4話「雷の魔女」
暗がりの一室で数人のローブを着た数人の人影が談笑している。
「エルデールがやられたようだね」
「奴は学園トップ10の中でも最弱・・・」
「そもそも彼女は魔女ですらないからね」
「テンドウ・シオン、面白い娘ね」
「君のお眼鏡にかなうとは彼女も光栄だろう、雷の魔女、いやイクリーサ」
イクリーサと呼ばれたローブの少女は雷を纏うと、その場を瞬時に去った。
そこには雷の焦げ跡だけが残っていた。
―
「はあ、今日も暇だわ」
「会長、書類の審査は・・・もう終わってますね」
書記のマリアが大量の認可済みの書類に目をやる。
前の会長なら1週間かかる山の様な書類を1日で目を通し審査したのだ。
しかもそこには改善案まで添えられている。
「会長宛てに個人的なお手紙も届いていますが」
「ああ、憂鬱だわ・・・」
炎の魔術師エルデールとの一件が広まって以降、ラブレター、ファンレターの山が生徒会室に届き続けているのである。
無論全てに目を通しお断りの書までしたためる詩音。
あまりの完璧ぷりに書記のマリアも詩音に心酔していた。
―
「お邪魔するわよ」
紫の美しい長髪にスレンダーな体系の2年生、雷の魔女ことイクリーサが生徒会室に現れた。
「呼んだ覚えはありませんが”先輩”」
「そちらにはなくてもこちらにはあるのよ」
イクリーサが一枚の用紙を詩音の眼前に突き付ける。
その紙には「魔女認定試験のお知らせ」と書かれていた。
「なんですかこれ?」
詩音は嫌な予感がしつつもイクリーサに尋ねる。
「見ての通り魔女認定試験のお知らせよ?」
「それは分かります・・・でも私魔女なんて興味ありません」
「これは規則だから。さっそく中庭に行くわよ」
「はあ…」
詩音は呆れつつもイクリーサと一緒に中庭に向かった。
しかしまあ魔女と言えば魔術を極めし者の称号。
魔女と戦闘経験を積む事で最強への道が開かれるのでは?
そう考えると今回の申し出はまたとないチャンスである、と考える詩音だった。
―
「じゃあこっちは好き勝手に襲わせて貰うから、好きに抵抗してね」
「なっ!?」
中庭に着くやいなや、腰の日本刀らしき刀を構えるとイクリーサは瞬足の速さで距離を詰めて来た。
イクリーサの剣は魔術の雷を帯びており、エルデールやゲイルの剣等比較にならない程の速度と剣術のレベルだった。
詩音は氷の剣を精製すると、なんなくとは言わないがイクリーサの剣をいなしていく。
転生前から詩音は剣術も極めていたのだ。
そしてイクリーサの剣を見切ったのか早くも反撃に転じる詩音。
しかしそれはイクリーサの罠だった。
「これが全力だと思わない事ね」
まだまだ上がるイクリーサの剣のスピード。
そして纏っていた雷はいつのまにか詩音に絡みつき麻痺状態を与えていた。
しかし・・・
「こちらも全力ではありませんよ、先輩」
詩音は雷の拘束をいとも簡単に解くと二本の氷剣を精製した。
そう、あの大剣豪宮本武蔵が扱う二刀流である。
詩音の二本の剣はイクリーサの神速の剣筋を捉えると片方の剣でイクリーサの剣を防ぎ、もう片方の剣で攻撃に転じた。
そしてイクリーサの喉元に氷剣の剣先が突き付けられる。
「私とした事が、迂闊だったわ。剣術も極めてるなんてね」
「武を極めるのも女子のたしなみですから」
「魔女試験は合格よ。なんの魔女になるかは・・・まだ決められないわね、候補が多すぎて。あなた得意な属性は?」
「全てです」
「そう、全属性の魔女・・・じゃ響きが悪いわね。こちらでも考えるけど、あなたも考えておいてね」
「わかりましたよ、先輩」
詩音が呆れてそう言い終える前にイクリーサは姿を消していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます