戦国サラリーマン
羽弦トリス
第1話プロローグ
僕の名は、保村蒼太。32歳だ。
妻と4歳の息子がいる。ごくごく普通の家庭である。仕事は、医療で使われる聴診器の営業。
今朝も、普通に朝食を食べ、妻が作った弁当を持ち、
「今夜は、飲んで帰るから遅くなる」
「あんた、また、飲み会?11時までに帰って来てよ!明日は家族で動物園なんだから」
と、妻は不満げに言った。
「うん、分かった。じゃ、行ってくる」
僕は自宅から徒歩で15分かかる、最寄り駅へ向かっていた。
信号待ちをしていると、交差点に何か落ちている。それは、時々動く。
よく目を凝らして見ると、子猫だった。
引かれるのも時間の問題だ。
車が来ない事を確認して、交差点の真ん中まで走り、子猫を抱いた。
その時だ、腰に衝撃を受け身体が宙を舞った。
信号無視した4トントラックが突っ込んで来たのだ。
それから、間も無く僕は気を失った。
目覚めると、そこは蚊帳の吊るしてあるベッドだった。
良かった!
僕は生きている。ここは、どこの病院だ?
辺りを見回すと、扉が開いた。
そこには、美女が立っていた。
「すいません。看護師さんここはどこですか?」
そう言われた、女はニヤリと笑い、
「ここは、今で言う中国。まだ、三国時代よ。あなたは、諸葛孔明に生まれ変わったの」
僕は頭を強く打ったのか、話の内容を理解出来なかった。
「僕が孔明?」
「うん、そうなの。あなたは、これから旅をして天竺で生き返る古文書を手に入れなさい」
女の豊胸に目は取られたが、
「じゃ、明日、新幹線で取りに行きます」
「まだ、理解出来ないの?つい最近、後漢が滅びたの。新幹線なんかあるわけ無いじゃない」
僕は、窓から街を見た。田んぼと畑ばかりだ。家は点々と。
「看護師さん、ホントに僕は孔明?」
「えぇ~。しばらく、保村蒼太では無くなります。あなたに、武器を与えます」
そう言って、女はデッカな服は布袋を持ってきた。
「諸葛孔明殿、あなたにこの時代の事が日本語で書かれた辞書と、武器の説明書が書いてあります。あなたの言葉は周りの人間は理解出来ますし、あなたは言葉を理解できます。ただ、文字は挨拶程度しか読めないので、辞書を使い練習して下さい。すいませんね。どの世界もミスはありますので」
僕は自分が持っていた、タバコに火をつけた。
フーッ。頭が段々、冷静になる。理解した。
僕は諸葛孔明として生きて、天竺へ行き甦りの古文書を手に入れる事。
途中、化け物が出るからそれを倒すこと。
これじゃ、三國志ではなく西遊記ではないか?
じゃ、僕は玄奘?
まぁいい。早く甦りたいから天竺目指すぞ。
「孔明さん、馬を一頭差し上げますので、荷物をくくり付けて下さい。利口な馬なので、乗馬も簡単です。さて、西はあの山の向こうなので、向かってください。腕時計とスマホは使える様にします。通話は出来ません。天気予報を見るだけになります。充電不要です。
僕は去り際の女に、
「ありがとう」
と、言うと胸の谷間を開き、おっぱいを見せてくれた。
「サービス、サービス」
武器の説明書をよく読み込み、呪文も暗記出来る部分は暗記した。
ま、追々、必要になったら説明書をまた読もう。
腹が減った。
旅を始めよう。
孔明は馬に乗り、途中5回落馬するも操り方をマスターして、とある村に着いた。
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