第2話 フェラン精霊界
「ねえ、つつじ、フェランは、どうやって行くの?」「さっき、さつきの携帯を僕は魔法で取り上げただろう。その魔法を使って異空間、転移魔法で移動する。」さつきは「まほうね?」顔が少し疑ってる。そして続けて、「つつじ、まあ、いいわ。魔法でフェランへ連れて行って。」「じゃ、行くよ。」そう言って僕は呪文を唱えた。「ルートアー・ルートアー・キャセドラ・ウブリード」大きな風が吹いた。拝殿前の大きな鈴が鳴った。雨を飛ばし、大きな風は僕らを風の渦の中へは運んだ。僕らは宙を浮いている。移動中、さつきが、「ねえ、つつじ私やっぱり雨女みたい。雨の日には、いつもほんと良いことが起きるの。でも今日は一番特別よ。だって異空間フェラン、つつじの故郷に行けるんだもん。」大きな風と共に僕らは砂埃を上げて広場に舞い降りた。さっきまで少しぼやけた、つつじの姿が少しだけはっきりしてきた。きっと故郷に戻ったからだろうと,さつきは思った。さつきはあたりをキョロキョロ嬉しそうに見て回った。僕らが降り立った広場はいわゆる街の真ん中。両サイドには屋台や商店がずらり並んでいる。見た目は人間とほぼ変わらない。しいて違いを言えば、彼らはみんな魔法が使える。秤でものを計るのも手は使わず、人指し指を1本たてって、その指先から魔法の粉が光とともにでてくる。対象物が光の粉で浮いて勝手に秤の中に入っていく。「はい、50パウンド」店主が言う。お客は「よし、買った。」と、こんな感じの魔法。いたるところで使っている。だからこの街は光の粉であっちこっち輝いている。「ねえ、つつじ、こっちの世界フェランじゃ、みんな魔法が使えるんでしょう。じゃ、私は使えないから人間界から来たってすぐばれちゃうかな。」つつじは得意げな顔で「さつき、大丈夫。僕を誰だと思ってるの。フェランでの実力はかなり上位クラスの貴族なんだぞ。なんでもできるぞ。」そして小さな声で「ちょっと地味だけどね。」続けて、つつじの指先からキラキラ光の粉がさつきの全身を包み込む。「はい。出来上がり。これで、さつきもフェランの魔法が使えるよ。じゃ、さつき、あの噴水の水を空高く飛ばしてみて。」さつきは少し緊張した硬い表情で人差し指を前に出して、「うん。わかった。やってみる。」さつきの指先から光の粉がキラキラ輝き「ビュー」噴水は勢いよく空まで上がった。水しぶきは埃っぽい広場にキラキラとうるおいを与えた。店の店主が「嬢ちゃん、すごいね。あんなに高く水を操れるなんて大したもんだ。でも助かったよ。この広場埃っぽくて、商品にもほら、こんなに白くなることもあって、磨いてばかりで手が、かかってたんだ。助かったよ。」「うちの店も。ありがとう。ところで嬢ちゃん名前は?」「私は、さつきよ。」「さつきね。ここらの子じゃないね。」「そうよ。つつじと一緒に来たの。」「つつじ・・・」店主たちは、ハモって「つつじ公爵。」「つつじ公爵。」みんなとても親しげでニコニコしている。さつきは、きょとんとした顔で振り向き「ねえ、つつじ、みんなが、つつじのこと知ってるの?つつじ、もしかして有名人?」「まあ、僕は地味だけど、とりあえずフェランの貴族だし。」ひとりの女性店主が「久しぶり、つつじ公爵。お元気でしたか。人間界に行かれたと聞いて心配してましたよ。ですがお姿が、」「僕は、ほらこの通り元気ですよ。」みんながつつじを慕っているようだ。さつきは『つつじの嘘つき。人気者じゃないって。人気者だよね。地味だっていってたのに。』「違うよ。さつき。」つつじが振り向いた。次の瞬間。キラキラ魔法の光の粉がつつじを覆い。つつじの姿が人間界で言うイケメンの青年になった。さつきは目が固まったが、『イケメンにだまされないぞ。嘘つき、つつじ。』つつじは、フェランで、もとの姿を完全に取り戻した。みんなは改めて気づいた。「つつじ公爵。つつじ公爵。」さっきの女性店主が「そう、そう。つつじ公爵で間違えない。それで、いきなりで申し訳ないんですが、助けてください。つつじ公爵。お兄様のサクラ公爵が今度のサクラ祭りで、また無茶なことを言い出したんです。」「サクラ公爵が。」店主は「今度のサクラ祭りには氷の彫刻を1作品ずつだすようにと。全く馬鹿げてるよ。私たちが氷魔法は使えないの知ってるのに。できなければ金貨10枚寄こせって。」「ほんと、つつじ公爵には悪いですが、お兄様は底意地が悪いです。サクラ公爵は、本当にばかげている。私達をなんだと思っているんでしょうね。ただの平民としか思ていないんでしょう。」つつじは、すまなさそうに「みんなすまない。あの日僕が負けたから。みんなに迷惑をかけてしまった。」みんなが口をそろえて。「つつじ公爵は悪くないない。お兄様のサクラ公爵がズルしたことは明白だ。人質を取るなんて勝負するまえから勝負が決まってるなんて。」「私達もつつじ公爵が負けたのは悔しかったが、ルチェの命が無事だったことが一番だ。」さつきが、割り込んだ「ルチェって誰?名前から察して女子ですか?つ・つ・じ」さつきの顔がおこった、きつい目になっている。「ルチェはこの街一番の鍛冶屋の子だよ。魔法の粉の作りも一番うまい。ルチェ以上に魔法の粉を作れる職人は他にいない。だから人質に取られたら僕らは言うことを聞かないといけないんだ。」「で、つつじ。ルチェの重要性はわかったから、で、」僕は、さつきに「で、ってなんだよ。わかるように言ってくれ。いつもはズバズバ言うのに。さつき」さつきは両手をおろしてグーにして「で、ルチェは女子なの?つつじが、人間界に追放されても救ったんでしょう。つつじの恋人?」僕は少し驚いたが笑ってしまった。さつきがやきもち?僕の悪い癖でちょっとからかいたくなったが。「さつき、やきもち?」さつきは、赤い顔して僕の頭を軽くグーでたたいた。「ルチェは男子だ。僕の大事な友人だ。ほっとした?」さつきはもう一度、僕の頭を「もーっ」と言いながらグーでたたいた。さつきは、まだ怒った顔をしていたが「つつじ、サクラ公爵ってお兄さんなの?どうして勝負したの?」「そうだな、話は長くなるけどサクラ兄さんに恋人ができたんだ。たしか彼女も人間界から来たようだ。その彼女が来てから僕と兄さんは、よく喧嘩をするようになったんだ。もとは、仲が良かったんだけどね。はじめは、たわいもないことからで、それがだんだん大きくなって。彼女のネックレースがなくなった。靴が片方なくなった。こんなことから始まり、不思議と僕の部屋から出てくるんだよね。」さつきが目を横に細めて「つつじ、そんな趣味あったんだーーー。」と半分からかっている。「さつき怒るぞ。僕にはそんな趣味はないよ。で話はもどすが、サクラ兄さんもだんだんぼくを疑いだして。サクラ兄さんは、僕よりチェリーの言うことを信じだした。最後には「つつじ、いくら僕の恋人チェリーが美しいからと言って、やっていいことと悪いことがある。次何かあったらつつじ、お前と勝負だ。負けたものはフェランから人間界へ追放だ。」ってサクラ兄さんは僕に言いきった。「そして僕ら兄弟の口論中、チェリーは冷ややかな顔をして僕を見ていた。僕はチェリーはあやしいと思っている。ネックレス、靴を僕の部屋に隠したのはチェリーの仕業だ。間違えない。彼女の自作自演だ。」さつきが「なんで、チェリーはそんなことするの?」「知らないよ。逆に僕が聞きたいくらいだ。ただわかっていることは確実にチェリーは僕の敵だ。僕をサクラ兄さんから遠ざけるため。このフェランから僕を追い出すため。そのためにやってる。」さつきが「チェリーって嫌な女子。女子の一番嫌なタイプかも。」「そうだよな。なんでサクラ兄さんはだまされているんだろう。」それに、僕は口にださなかったが、さつきには、あんな嫌な女子には、なってほしくないな。こう思った瞬間。さつきが「ならないよ。」僕は、精霊。僕の心が読まれた。「さつき、どうして返事をしたんだ。」「だって、頭の中につつじの独り言が聞こえたもん。」さつき。僕は神社でさつきと一緒なら”できる。”と、あの根拠のない僕の直感が今、確信に変わった。”チェリーの正体を暴くぞ。
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