第二章「不香の花は咲かない」
幕間・ある少年の追憶Ⅱ
◆
化け物だと、彼らは言った。
お前は醜いと。人の心がないと。血に酔った獣でしかないと。
だから、剣を振るい続けた。
善人は救い、何物も奪わず。己と同じ獣を殺し、必死で人間である振りをした。
何度も。何度も。何度も。――何度も。
安らぎはない。救いなどない。臓腑が腐り果てるほど無為な日々。
だけれど、あの日。夕闇の峠道。燃えるような色の空の下で。
獣は、一人の少女に出会った。
『人殺しなんかじゃない。君は、やさしいひとだよ。』
あの時。獣はきっと人間になれた。初めて、守りたいものができたから。
だけど、彼女はもういない。
遠くへ。
俺の手の届かないところへ、行ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます