第55話 勇者パーティー(1/3)
トールがいるザハルから遠く離れたファーラムという人族の王国にて。
「どうだった? 関谷さんの情報あった?」
この世界に勇者として召喚された
「いや。ここのギルドにも関谷さんらしい異世界人の情報はなかったよ」
「そ、そうか」
健悟たちは女神に召喚された空間で、3日かけてこの世界のことを学んだ。女神は戦い方などのチュートリアルも実施してくれた。魔族と戦うための装備一式に加え、こちらの世界で過ごすのに十分な資金も提供されている。
彼らがこちらの世界に来てから、まだ1週間しか経っていない。
しかし女神がいる空間とこちらの世界と時間がズレており、トールがこちらに来てからは既に数か月が経過していた。こちらに来る直前にその情報を聞かされ、健悟たちは焦っていた。
「やっぱり、関谷さんはもう……」
拳闘士というジョブを与えられた
「朱里ちゃん! まだ諦めないで」
「ご、ごめん」
「うん。俺たちが諦めちゃダメだ。召喚に巻き込まれた関谷さんは全く悪くないのに、ジョブもスキルも貰えずにこっちに送り込まれたんだから」
「でも流石に情報がなさすぎる。こんなネットもない世界じゃ、聞き込みするかギルドで情報募集するしかない」
戦う力は得ていたが、それで高校生4人で文明が未発達な世界で生き抜けというのはかなり過酷。しかし彼らは関谷 徹がまだ生きていると信じ、その所在を彼らなりに頑張って調べ続けていた。
「やっぱり勇者として活躍して、関谷さんに俺たちの噂が届くようにするしかないんじゃないか?」
「健悟、それは最終手段だって前に言っただろ。勇者として活動するってことは、いろんな人が助けを求めてくることになる。そうすると俺たちは多くの魔物と戦わなくちゃいけない。できれば、それは避けたいんだ」
「私も蓮に賛成。女神様に遠距離攻撃のスキルもらったけど、生き物殺すのはまだ怖いし、気分が悪くなる」
勇者として召喚された健悟たちには全員、複数のスキルが与えられた。女神がどんなスキルが良いかと聞いてきた時、元の世界で異世界物の漫画やラノベを読んでいた蓮が全員のジョブに適したスキルを選択したのだ。
アクティブスキル
・体力自動回復(大)
・防御力強化(大)
・
ジョブスキル
・全ステータス強化
・魔を祓う者
・言語理解
前衛で戦うことが多くなると予測された勇者の健悟には、体力自動回復と防御力強化のスキルを。加えて敵に接近せずに倒せるよう、斬撃を飛ばすスキルを貰った。
ジョブスキルの全ステータス強化は勇者特有のもの。これで彼は素手で魔物を引き裂けるほどの怪力と、ドワーフ以上の強固な防御力を得ている。
同じくジョブスキルの“魔を祓う者”も勇者特有で、魔物や魔族に対しては彼のどんな攻撃でも大ダメージを与えられる。
アクティブスキル
・魔法発動短縮(大)
・ステータス確認
・緊急離脱
ジョブスキル
・魔力高速回復(大)
・全属性魔法
・言語理解
後衛で火力を出す必要がある彼は、魔法の連発速度向上のためのスキルを選択した。ジョブスキルに魔力高速回復があるおかげで攻撃関連のスキルはひとつだけ。
それより彼が重視したのは、勝ち目のない強敵との戦いを避けること。そのため目視した対象の強さをステータス化して確認するスキルを希望した。
さらに緊急時に最寄りの街まで退避できる緊急退避というスキルも得ている。このスキルは一度使用すると3日間は使えなくなるという制限があるが、安全に旅をするなら必要なもの。
アクティブスキル
・体力自動回復(大)
・索敵(範囲:特大)
・
ジョブスキル
・攻撃速度上昇(大)
・言語理解
本来は前衛で戦う剣闘士というジョブだが、中学まで空手をやっていただけの朱里に魔物を殴り殺せなどと言えるわけもなく、蓮は彼女にも遠隔攻撃系のスキルを選択させた。
無用な戦闘しないことを目的に、索敵というスキルも入れている。
アクティブスキル
・範囲回復
・聖属性魔法
・体力自動回復(大)
ジョブスキル
・
・言語理解
詩織はパーティーの回復役でありながら、魔族に対してはアタッカーにもなる。ジョブスキルの蘇生魔法は死後1日以内の者の魂と肉体を結びつけることが可能。スキル以外にも聖属性の通常回復魔法も使用できる。
蓮は非常に合理的な選択をしていた。力を得たからと思いあがらず、魔物と対峙した時のことを考えたスキル構成にしたのだ。
彼らは既に何度か魔物と遭遇し、それを倒してきた。
全て離れた場所からの一撃で仕留め、魔物の死骸に近づくこともしなかったため、それほど精神的ダメージを負うことなく旅を続けられている。
とはいえ、彼らが今いる街ははじめの町から移動してきて2か所目。この時点ではまだ、国から出ようなど考えてもいなかった。
健悟たちはまだ勇者として活動を開始しておらず、加えて遠く離れた国から国外に出ようともしていなかったので、トールがいくら複数の国を跨いで情報を集めようとしても意味を成さなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます