第46話 魔導都市ラケイル
人族の王国ザハルから北西。エルフの王国ミスティナスからは北に位置する魔導都市ラケイル。ここは世界有数の巨大都市だ。どこかの国に所属しているわけではなく、独自の政治権力を有する都市国家となっている。
「凄い防護壁だな……。城郭都市ってやつか」
王城の周りだけでなく、都市全周を城壁で囲んだ都市。ミスティナスの王都付近にも防護壁はあったが、ここの壁の方が高く、外部に威圧感を与えるほどだった。
「でっかい街だニャ」
「ミーナもここに来るのは初めて?」
「ここ、魔導都市だニャ。魔法に縁遠い獣人が来ることは滅多にないニャ」
そりゃそうか。
ガレアスやザハルは土地勘のあるミーナが案内してくれた。ここまでの道のりも街道が整備されていたから、時間はかかったが迷わず来ることができた。
問題はどうやって中に入るか情報がないという点。
お金で入れるのか、身分証がいるのか、はたまた魔法が使えないと入れないのか。どんな感じで入都審査が行われるのか分からない。検問所っぽいのはあって、そこに多くのヒトが並んでいるので入都審査があるのは確かだろう。
お金だったら多分大丈夫。
奴隷商人から貰った資金がある。
身分証も問題ない。ガレアス滞在中、グレイグに頼んで作ってもらった。俺たちは今、ゴールド級の冒険者ってことになってる。
魔法が使えることが条件になっている場合がマズい。魔導都市なので、その可能性はあるのではないだろうか。もしこのパターンだったら、ミーナが中に入れない。
俺はそれを懸念していた。
ラケイルは冒険者ギルド連盟には加盟しておらず、ゴールド級の冒険者であっても独自の審査を受ける必要があるようだ。
「悩んでたって仕方ないニャ。もしダメだったら、ウチはしばらく外で待ってるから、ちゃちゃっと用事を済ませてきてニャ」
「うん、それはダメ」
「ん? なんでニャ?」
「この周辺には町が全くない。全てが魔導都市内に集約されているんだ。都市の中に入らなければ、野宿以外に選択肢がない。こーゆー都市の周りって、中に入れなかった奴らが潜んでいたりするから、夜になると治安が悪くなることが多い」
そんな場所にミーナをひとりで残したくない。
「あー、確かにニャ」
ミーナが都市周辺の森の方に目を向けた。どうやら彼女の五感が、潜んでいる者の存在を捕らえた様子。やっぱり、そーゆー奴らがいるんだ。
だから何としてでも一緒に魔導都市の内部に入りたかった。
最悪の場合、水魔法で城壁を飛び越えてしまおう。
──***──
そんな違法行為も候補に考えていたのだが、俺たちはわりと普通に魔導都市へ入ることができた。
ゴールド級の
「一般人にとって50ギルって高いよな」
ザハルの都市に入るのもそれくらい必要だった。そちらはゴールド級冒険者のライセンスでふたりとも免除されたが、別の都市に行ったりする度に50日分の食費に相当する金額を払っていたらすぐに破産してしまう。
「この世界は力があって冒険者になったか、国に使える兵士、外交が必要な貴族や商人、その護衛とかでもなければ生まれた都市から一生外に出ないヒトも多いニャ。これだけの巨大都市ともなれば内部に工業区や農業区があるから、外に出なくても食料や職に困ることはないニャ」
「なるほど」
「それに外は魔物がいるニャ。城壁に守られた安全圏から危険な場所にわざわざ行こうって奴の方がレアなんだニャ。ちなみに入都税はそうした外の魔物から都市の住人を守るための貴重な収入源でもあるニャ」
「だったら逆にゴールド級の冒険者からは多めに入都税をとるとかしないの? ゴールドになるようなヒトなら、たくさんお金を持ってるだろ。それが免除って」
「金持ちの商人から多めにとることはあっても、冒険者から多くとることは滅多にないニャ。だってその強い冒険者が都市の中にいれば、魔物や魔族が攻めてきた時に戦ってくれる可能性があるニャ」
「あぁ。そうか!」
「この魔導都市の場合、その頼りにしてるのが冒険者じゃなくて魔法使いだってことだニャ。だからいざという時は頼りにさせてもらうニャ。水の魔法使い様」
「はーい。50ギル分は頑張りまーす」
そんな会話をしながら、俺はミーナと綺麗に整備された魔導都市の内部を歩いていった。ここに来た目的はシャルロビさんから紹介された魔具師のガロンヌさんを探して、俺の杖を作ってもらうこと。あとミーナの鎧に防御強化魔法も付与してほしい。
「ところで、魔具師が防具への強化魔法も使えるのかな?」
「ウチもよくわかんないニャ」
ガロンヌさんが杖を作れて、強化魔法もできるなら全部お任せしたい。すごいヒトなのか、まだ会ってないからなんとも分からないけど……。そもそも彼の居場所が分からない。シャルロビさんに聞き忘れてた。
「じゃあ、適当な魔道具屋に入って、そこで情報収集しよう」
「りょーかいニャ!」
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