ミントとシマリス
魔王を倒して女の子たちを救う、そう決意したミントでしたが、肝心の魔王の居場所、それは誰も知りません。
「困ったなぁ」
スカイフラワーで飛びながらミントは考えていました。
「魔王についての情報を知ってそうな人…か。」
するとミントはひらめきました。
「そうだ!あの子に頼めば分かるかもしれない!」
善は急げ、そう決心したミントは、大きな森の中へ降りていきました。
ミントが向かったのは薄暗い森の中木々や動物たちが住んでるとっても神聖な場所でした。
ミントはそこにあるひときわおおきな木に声をかけました。
「おーい!長老!」
そう呼ぶとその木に顔が浮かび上がりました。
「おぉミントか、元気じゃったか?」
長老と呼ばれたその木はミントの姿を見るなりそう言いました。
「元気だよー。長老も変わってないね。むしろちょっとだけおっきくなったかな?」
ミントは軽口を叩くと本題へ移りました。
「長老、フラワータウンの女の子が全員さらわれちゃった事件を知ってるかい?」
長老は少し怪訝な顔をしました。
「あぁ、少しだけ聞いたことがある。なんでも魔王が突然やってきて女の子を攫ったと。」
「それで頼みがあるんだよ長老、その魔王についての居場所を知りたいんだ。町のみんなに頼まれてさ、お願い!」
長老はミントの顔を見ました。ミントは少し申し訳なさそうに長老を見つめると小さな声で「だめ?」と呟きました。
「わかった。そんなことならあの男に聞くといいじゃろう。」
その言葉を聞くとミントの顔はぱぁーっと輝きました。
「おーいリッキー!」
長老が呼ぶと長老の上から小さなシマリスが降りてきました。
「はいはいなんですかい長老って…うわ!ミントか!また厄介事だな?」
シマリスはミントを見るなり不機嫌そうな顔でそう言いました。
「リッキー久しぶり!元気してた?」
ミントの問いにリッキーは不機嫌そうに言いました。
「あぁ元気だったよ!お前が来るまではな!」
ミントは少し困った顔をしました。リッキーがイライラしてる姿は見慣れてますが、顔を見ただけで不機嫌になるなんて嫌な気持ちになるに決まってるからです。
でもミントは聞きました。
「リッキー頼みがあるんだけど…」
リッキーは話を遮りました。
「あぁわかってんだよ!お前の言いたいことは!魔王の居場所を知りたいんだろ!わかるわけねえだろそんなの!」
わかりやすいくらいシラを切るリッキーに長老は口を挟みました。
「リッキーや、今回はミントの言うことを聞いてくれ…魔王がフラワータウンの女の子を全員さらってしまったじゃ…町のみんなが困り果てておる。お前の知ってることは話しておくれ。」
リッキーはやれやれと首を振りました。長老が言うなら仕方ないとムスッとしながら話しました。
リッキーは木の棒をひとつ取ると近くにあった木にそれを突き立てました。ミントは切り株の上に座って話を聞きます。
「結論から言う、魔王の居場所は俺も知らねぇ。」
いきなりの答えにミントは「えーっ」と落胆の声をあげました。
それを遮るようにリッキーは続けます。
「まぁまぁ最後まで聞け。魔王の居場所は知らねえが手がかりはある。まずな、魔王のとこから女の子が1人逃げちまったんだ。」
そう言ってリッキーは豚の魔王の絵と女の子の絵を描きました。本人にとっては自信作のようですが、そこまで上手ではありません。
「その女の子はどこにいるの?」
ミントがそう訊ねます。
「その女の子はな、この森を抜けた先にある小さな小屋にいるらしい。なんでもクマと遊んでるそうだ。それ以上のことはわかんねえがな。」
ある程度の話を聞き終えるとミントは切り株から立ち上がり善は急げとすぐ出発しようとします。
ですがリッキーは引き止めました。
「待ちなミント、何か大事なものを忘れてねえか?」
ミントは聞き返します。
「大事なものって?」
リッキーはじれったいといわんばかりに言いました。
「どんぐりだよ!どんぐり!俺から情報もらった時はいつもくれるだろうが!もしかしてただで帰る気じゃねえだろうな!」
ミントはそのことを完全に忘れてました。でも平静を装い口を開きます。
「お、覚えてるよ。でも今日は持ってきてないんだよ…この事件が終わったらあげるからさ…お願い!ね?」
ミントは頭を深々と下げ、申し訳なさそうにリッキーを見つめますが、そんなことでは折れません。
「そうやって先延ばししようたってそうはいかねえ!渡せったら渡せ!じゃないと友達の縁を切るぞ!」
リッキーの言葉に困り果てているミント。すると長老が自分の体をゆらします。すると上からたくさんのどんぐりがポロポロと落ちてきました。
「あ、どんぐりだ!仕方ねえな、今日は長老に免じて許してやる。」
リッキーはそういうと手で追い払う仕草を見せ、一気にどんぐりを頬張ります。
「え、ほんと!?ありがと~。」
ミントは顔をパァーっと輝かせました。ミントの様子を見た長老が口を開きます。
「クマの小屋の場所をこのカラスが案内するから、その案内にしたがって行動するがよい、応援しておるぞ。」
そう言うと、長老の上から1羽のカラスが飛び立ちました。
「かァー!かァー!俺についてこい!かァー!」
ミントは長老とリッキーの方を向くと、また頭を深々と下げて、勇気に満ちた顔で言いました。
「では長老!行ってきます!」
そしてスカイフラワーに乗り、再び出発しました。
その姿を見送る長老とリッキー、リッキーが呟きました。
「ほんとは居場所しってたんですがねぇ~~」
「知ってたならなぜ言わなかったのじゃ?」
長老の問いにリッキーは白い歯を見せて言いました。
「自分で見つけた方が楽しいじゃないですか!」
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