駅員さん
あした
1話 終電間近
とある駅。
現在時刻、23:00。
今日も終電までが遠い。
だが、やっとこの時間に辿り着いた。
朝9時から始まった仕事もいよいよ一区切り。この駅の終電は「0:11」なので、残り1時間ちょっとで仮眠を取れる。
今日は連休初日とあって、改札口は朝から晩まで対応に追われた。
きっぷうりばの列が改札口から見えるところまで伸びているのを見た時は、無意識に「帰りたい」と思ってしまった。
駅員にとって、終電間近のこの時間は少しだけ嬉しい。最終電車の案内、明日の始発に向けた準備、たまにやってくる「できあがった」人達の対応。
日中に比べて人が少なく、かつやることもそれなりにあるので、「気楽で時間が経つのが早い」のである。
ペアとなる駅員と会話する時間が取れることも重要だ。
現在時刻、23:24。
「今日、連休初日で多かったっすね」
回収したきっぷを整理しつつ、今日を振り返る。
「ほんと、窓口の外まで並んでるの見たら帰りたいって思ったわ」
ペアはチケッターの日付を変えながら、ため息混じりに話す。
「今日、なんか厄介なのに絡まれてましたよね?」
「そう、あれホント勘弁してって思ったよ。注意書きに書いてあるのに、ゴネ続けてさ」
「結局どうしたんですか?」
「払ってもらったよ。そのまま降ろしちゃったら逆に俺らがルール違反で怒られるからな」
お前も気をつけろよ、と言ってチケッターをこちらに向け、ペアはニカッと笑った。
現在時刻、23:59。
「終電が動物と接触したため、25分遅れて運転しています」
一斉放送の情報を聞いた瞬間、「最悪」の文字が頭に浮かぶ。
「これは睡眠時間返上確定だな」
「勘弁してくださいよ…」
今日も終電までが遠い。
駅員さん あした @Bc_vkbt
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