あしこちゃんと僕、と地底人

@jiji0001

第1話 ひとめぼれ

 そもそも興味なんかまるでなかったし、今もってしてどうしてもその興味をくすぐる勘所的なものがもうひとつ理解できていないRPG同好会に僕が所属する羽目になったのは、はっきり言って、あしこちゃんのせいであった。

 あしこちゃんは今春に僕の前に現れた、肩口までの黒髪がふわりと漢心を惑わす美少女である。

 誰あろう。

 僕は何とか滑り込んだ私立高校の入学式当日朝に非常に安易に一目ぼれをしてしまったのだが、彼女が並み居る他部に目もくれず真っ先に入会したのがそのRPG同好会であって、僕もそのすぐ後を追って入会したというわけだ。

 どうしてあしこちゃんがRPG同好会に興味を持ち入会に至ったかの経緯について一度下校途中に訊いた事があるものの、何やら異界の言葉で連綿と説明されただけでとんと要領を得なかった。

 僕は彼女に失望されないようにものすごくよくわかったような顔をして、うんうんと頷きながら話を聞いていたら、彼女に、

「そういうあなたはなぜ?」

と聞き返されてしまい、

「まあだいたい、君と同じ感じですよね」

などと適当この上ない内容で返答。

 しかし、思いのほか彼女は食いついてきてしまい、

「一緒にRPG同好会で天下を獲ろう!」

などと言われてしまった。

「もちろんそのつもりさ」

と返事はしたのだが、反面弱ってしまった事も事実。

 僕としては、ほんの少し下心を満足させるのが目的なのにどうしてこんな会の屋台骨を背負わされるのであろうかと、帰宅してから暗い部屋で体育座りをして自問自答を繰り返した。

 しかしだ、と、僕は少ししてから健気に思い直した。

 それでも、あしこちゃんはかわいいし、せっかくの一目ぼれを下らない幻滅やちょっとした面倒事でなかった事にしてしまうのもそれはそれで惜しい気もする。

 もう少しがんばれば、まあいきなり性交渉はちょっと無理にしても、親密めのスキンシップくらいまでにはわりとすぐたどり着けそうではないだろうか。

 僕は自分自身をそうやって励まして夕食を食べて早々に床についたりなどした。


 こうして、僕とあしこちゃんはRPG同好会に、僕らの学年でたった二人きり籍を置く事となったわけなのである。

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