Vtuber戦国時代録

大正 水鷹

第1話Vtuber潰しの苦悩

20XX年、この時代、Vtuberの全盛期を迎える。


 そして、Vtuberの数は年々上昇しており、つい最近、1億の大台を突破し、人口に対し完全に飽和しきっていた。


 さらには、従来のVtuberというコンテンツは飽きられつつあった。 


 だが、一年前。一人の革命系Vtuberがその状況を打開したかったのかは分からないが。とんでもない文化争いを生み出し、去って消えるという事件を切っ掛けに、Vtuberは人気を出して強奪した己のファンでVtuberを攻撃する。


 Vtuber戦国時代が訪れていた。 


「こんのうじー!どうも、乃田のだです!」


一般足軽『始まったな』


傍観者のふりをする当事者『今一番の勢いのVtuber様のおなーり』  


乃田殿の御家人 ¥250『少ないですが、年貢です、殿』  


 私の目の前にはその他のコメントが大量に書き込まれ、スパチャ等には「有難う!」などの反応した後に本題を切り出す。


「今回はですね。最近話題になっているDXAIパン屋さんキットを破壊する系Vtuber、ウイドロさんを本能寺の変させていただこうと思います!」


乃田殿を支える人類最強の放火魔『流石、有名Vtuber本能寺の変RTAタイトルホルダーは格が違いますね』 


 本能寺の変とは、簡潔に言うと。配信を炎上させて、二度と再起出来ないようにさせる。Vtuber戦国時代のレギュレーションルールだ。


 そんなこと言われると照れるなー。


 そう言えば。何で只のゲーム配信系Vtuberだった私がこんなことになっているの!?


 私は何故、ゲーム系Vtuberになったのか思い出す。


「そう言えばさー、美幸みゆきってさ、ゲーム上手いよね。」


「えー、そうかな?」


「そうそう、美幸はゲーム上手なんだから、最近はやってるVtuberの中でゲーム配信系やったら?」 


「いやー、私には荷が重すぎて潰れちゃうよ。」


「美幸なら、その荷もふっとばして有名になれると思うんだけどね〜。」


 友人の花之はなのが私をキラッキラに光る眼でチラッ、チラッと見てきた。


「もう〜、そんな目をされたら仕方がないな〜。」


「よしッ、それじゃどうやってやるのか教えるよ。」


 そうして今に至る。


 こんな状況になってしまった発端は、とある革命系Vtuberが残した文化争いにまんまと巻き込まれたからだ。


 当時、普通に花之に支援して貰って作った自作のアバター等でゆるく、楽しく、やっていたのに。


 うちのコメント欄にかつての革命系Vtuberを支えた御三家のうちの一人に目をつけられて、有名Vtuber本能寺の変RTAタイトルホルダー。


 なんて、不相応な二つ名をつけられてしまった。


 その二つ名がつけられてからは、トントン拍子も驚く速さで今の、"世襲の革命Vtuber織田乃田"になりました。


 その日は勝った時の報酬を提示して配信を終えた。


 Vtuberのファンを使った戦いは鎌倉時代のご恩と奉公と似ている。


 ファンが奉公でコメ欄等を荒らし、炎上させ。Vtuberを精神攻撃して再起不能にし、その褒美のご恩で、限定イラストなどの物を配布する。  


 はぁー、コメ欄で褒められると嬉しいかったり、頼まれたりして、つい調子に乗ってやってしまうけど、もう辞めないといけないなー。


 その頃、DXAIパン屋さんキットを破壊する系Vtuber、ウイドロの配信のコメ欄は。


無名『頭駄目 捻り出すもの てんで駄目』


ナンロ『この人の転生前を晒します!ここから見てください!(URLを貼り付けてある)』 


チハヤブルドック『AI壊し パン屋はバン 竜田川 良き配信で やる事か?とは』


助けてください(登録者数が1万いったら助かる小学生)『助けてください』


5nk4e『この配信って、何が面白いの?』


 等と、愉快なものからやばいものまで、揃いも揃ってコメ欄全体が地獄絵図の様になっていた。   


 そして、その配信内にウイドロは精神崩壊して、最後には、『DXAIパン屋さんキット壊し、壊れるwww』という、コメントが書き込まれ。




 ウイドロは敗戦した。




「皆さん有り難う!お礼のイラストは概要欄に乗っけておくから、壁紙とかにしてねー。」


戦勝した足軽『うぉぉおぉぉおぉぉおぉぉおぉぉおぉぉお!』 


勝鬨丸『勝鬨ダァァァァァアァ!』


アイリン『DXAIパン屋さんキットを破壊する系Vtuber、破壊終了!』  


乃田殿を支える人類最強の放火魔¥50000『当然の勝利だな』


本能寺の変はいいぞおじさん『本能寺の変はいいぞ』


 など様々な声で溢れていた。


 その後もつつがなく、配信を終えて。私はベットで寝転がり、少し考える。


 何でこんなことになっているの?


 私の中でみんなに見てもらいたいから続けようという、承認欲求の塊と。


 Vtuberを無闇矢鱈に潰してはいけないという、正義感の感情が葛藤を起こしていた。


 革命Vtuber織田乃田として活動していると、とんでもない額がスパチャで投げられる。でも、そのお金をなにかに使ったことはない。


 そのお金に手を付けたら後戻り出来なくなるから。




 早く、こんな生活から抜け出さないと。


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