転校してきて、隣の席のぼっち陰キャ女子に優しくしたら、その子はとんでもなく危険なヤンデレ娘でした。

カイマントカゲ

第1話 雨と彼女

「今日からここでの生活、か」


 俺は松坂まつざかヒロ。

 両親が亡くなって、金銭的な事情により祖父母の住むかなりの田舎である龍宮子りゅうぐうじ村に引っ越してきた。

 仕方なく高校もこの村唯一の龍宮子高校に転校する事になっている。


 今まで住んでいた街とは違い、この村はかなりの田舎で自然豊かで空気の綺麗な所だ。

 かわりに大型ショッピングセンターや映画館、ゲームセンターなんかはない。

 そういったものは電車で10分ほどの所にちょっと大きめの街があるのでそこに行くしかない。

 まぁ町の電気屋とか小さなガソリンスタンド、聞いたことないスーパーやコンビニくらいは一応ある。


「ん? 雨か?」


 明日からの学校の前に村を探索していると急に雨が降ってくる。


「くそ、雨なんて予報出てたか!?」


 俺はスマホを取り出し天気の画面を開く。そして引っ越してきて天気予報のエリアを変えていなかった事に気づくのだった。

 しかし困ったものだ。家まではちょっと遠い距離で濡れて帰るのはキツイ。近くに雨宿りできる所は……と、辺りを見渡すとボロい屋根とベンチがあるバス停が見えた。


「仕方ない、雨が弱まるまでここにいるか」


 俺はベンチに座り、時計を確認する。

 時刻は18時を少し過ぎたくらい。そろそろばあちゃんが晩飯を用意している頃だろう。なんてことを考えていると、目の前に龍宮子高校の制服を着た女性が黒い傘をさして立っていた。


 髪型は腰あたりまである黒髪ロングで、特徴的なのは前髪が長く、左目がほぼ隠れている。制服はしっかりと着ておりスカートも膝くらいまでの長さで黒のタイツを履いていてる。真面目そうだが全身真っ黒で少し不気味な雰囲気を感じる。


「あ……、あのっ!」


 なんて俺が女性を観察していると声をかけられる。


「な、なにか?」


「こ、ここは……バ、バス来ない……です」


「え? ああ、大丈夫だよ。雨宿りでいるだけだから」


 彼女はどうやら俺がバスを待っていると思ったようだ。


「え!? ご、ごめんなさいっ!……こ、この辺で見かけない人だから……その、知らずに待ってるのかなって……」


 そう伝えると彼女は慌てて深々と頭を下げて謝罪する。俺が他所からきて困ってると思って親切で声かけてくれるなんてこんな事、前住んでた街ではなかった。


「そんな気にしなくていいよ。実は今日引っ越してきたばかりで何も知らなくて……」


「そ、そうなんですね。こ、こんな……何もないとこにようこそ……です」


 彼女は恥ずかしそうにそう言うと小さくお辞儀する。


「こちらこそよろしく」


「は、はいっ!……えっと、その……これっ!……使ってください……」


 彼女は傘を畳み、ベンチの俺の座ってる横に勢いよく置く。


「い、いや流石にそれは悪いよ、君はどうするつもりで……」


「い、家、近いのでっ! ……では、わ、私はこれでっ!」


 そう言うと彼女は雨の中を走って行った。


「行っちゃったか……」


 俺は彼女が俺は置いて行った傘を手に取る。

 そういえば名前聞いてなかったな。まぁどうせ全校生徒もそんな多くないだろうし学校に行けば会えるだろう……なんて思いながら俺は傘をさし、祖父母の待つ新しい家へと帰るのだった。

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