ニート(異世界転生者)のすゝめ

@baibaisan

第1話 ニート(転生者)が溢れた世界で。

異世界。

それは現実世界で冴えない者達が転生し、自分の欲望を存分に満たすことのできる     

ユートピア。

ハーレムや賛美を求め異世界へと転生を渇望する者達が現実世界では溢れかった。

現実世界から離れる、つまりは天国と同様であろうとなかろうと良い場所であろうとなかろうとそれを観測した者達が帰ってくることができない以上妄想は妄想であった。しかし幸か不幸か異世界は実際に存在した。

現実世界で体を失った際に地球で転生するか異世界で転生するか選択することが

できたのだ。現実世界でチートによるの賞賛や美男美女との恋愛、モンスター達との戦闘を求め数多くの者達が異世界へと旅立った。

ここで問題が起きた。

それは何か?異世界は1つしかなかったのだ。

その結果として同じ異世界に”全ての転生希望者”が転生した。

転生者は異世界人の腹から生まれるのではなく現実世界のあの世と異世界とを

つなぐGATEで儀式をすることによって生まれる。具体的には、何らかの理由で子供を求めるパートナー同士がGATEを管理する教会に申請を受理された後

GATEに掘られた溝にお互いの血を捧げることによって儀式は完了する。

誕生というよりかは召喚と言ったほうが近いのかもしれない。

GATEによって誕生した子供は元の世界の遺伝子と異世界での親の遺伝子を

足して3で割ったような見た目となる。そのせいか美男美女として確実に転生するのかと、問われればYESとは答え難い。

GATEから生まれた赤子は成長するにつれ以前の記憶を取り戻し7歳前後で

完全に記憶が戻る。

元の世界での記憶を頼りに魔法との混合技術で異世界での生活水準を

高めることに成功した彼らは神の子として、あがめられることも多々あった。

神聖視されたGATEの利用者は増え異世界への転生者も次第に増加した。

世界の総人口2割に達したGATEからの転生者達は記憶補完の7年の年月を過ごし

そして15歳の成人年齢へと達した。期待を込めて育てられ希望を持って生まれた彼らはこう呼ばれた。

             ”NEET”(穀潰し)

と。

異世界へと転生した彼らはまず知識を求められた。

だが彼らはそれに応えることのできる知識を持ち合わせていなかった。

知識で役に立たないなら冒険者として力を求められた。

しかし彼らは協調性に欠けておりモンスター討伐はおろか

日常生活においても足を引っ張ることになってしまった。

しかも自意識だけは高いせいか自分は特別だと思い込み

肉体も育ちきっていない10代前半にまともな準備をすることもなくモンスターへと立ち向かい無惨にも殺された者も居た。味を知ったモンスターが村や街

商人を襲うといったおまけもついてきた。

人生の前半戦で挫けることになってしまった彼らは家事を手伝うこともなく

不平不満を漏らし家族のすねを齧る生活を送るようになってしまった。

もちろんそうではない者たちもいるにはいるが転生者の数%。

GATE出身者の悪名を広げるには十分だった。

魔王もモンスターも討伐されておらず、無闇に増やされた人口によって食糧危機へと落ち入り、堕落したニート(異世界転生者)が溢れた異世界。

いやこの現実世界に”私”は転生者として生まれた。

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