プロローグ
「ルアーナ、お前を辺境の地ディンケルに
アルタミラ
お父様の
だけど、辺境の地に私を派遣? よくわからない。
「どういうことでしょうか?」
「言葉通りの意味だ。辺境の地に我が伯爵家から
「……なぜ私なのでしょうか?」
アルタミラ伯爵家は魔導士の一族なのだが、派遣ということは伯爵家の代表として辺境に行くということだろう。
お父様達は私を「アルタミラ伯爵家の人間ではない」と言い続けていたはずなのに。
「お前が一番、この派遣に
そう言ったお父様の顔は、とても
何か裏があるらしいわね、そうじゃないと私にそんな大事な仕事を任せないはず。
「派遣って、いったい私は何をすれば……」
「うるさいわね! もうあなたに話すことはないわ! 早く私の前から
お義母様がいきなり私にそう
私が
「これであなたと一生顔を合わせないで済むんだから、せいせいするわ」
お義母様の言葉に疑問が
一生? 私はディンケルという辺境の地にずっと住むということ?
わからないけど、またここで質問をするとお義母様に
「……かしこまりました。失礼します」
私はこれ以上お義母様を
ドアに手をかけた
「何をすればいいか、と聞いたな。お前は何もしなくていい。ただ、私達の
「そうね、あなたは死んでくれれば、それでいいわ」
「……」
私は
自分に用意されている部屋に
生贄、死んでくれればいい?
あの二人にそう言われたことに対しては、特にショックを受けているわけじゃない。
仮にも両親だが、いつもそのくらいのことは言われてきた。
お前を産ませたことは失敗だ、死ねばいいのに……そんなことは何回も言われている。
だけど今回のは、本当に私が死ぬことが確定して喜んでいる、というように感じた。
辺境のディンケルに派遣とは、何なのだろうか。
そんなことを考えながら歩いていると、目の前に二人の男女が現れた。
どうやら私のことを待っていたようだ。
「よう、ルアーナ」
「ふふっ、
「グニラお
この二人はお義母様──デレシア伯爵夫人の
私よりもいくつか年上で、婚外子の私を見下している。
「何か
「別に、お前の顔が見られなくなるから、最後にお前のアホみたいな顔を拝みに来ただけだ」
「ほんと、
二人も醜く顔を歪めながら笑ってそう言った。
何のことか全くわからないので、私は何も反応ができない。
「私は辺境の地ディンケルに派遣されるようですが、それで一生会えなくなるのですか?」
「なんだ、お前知らないのか? ディンケルがどんな場所なのか」
「ああ、やっぱり無知で
二人はまた馬鹿にしたように言う。
外の
まあもう家族だなんて、私もあちらも思っていないけど。
「しょうがない、馬鹿なお前に教えてやろう。ディンケル辺境伯領というのは、魔物に
「襲われ続けている?」
「辺境のディンケルでずっと魔物の
「そんな死地に行くなんて、死ねと言われているようなもの。私もグニラお兄様も死にたくない。そこで……あなたに行ってもらうことになったのよ」
……なるほど。
ディンケル辺境に派遣されると魔物と前線で戦い続けることになる、ということか。
魔導士の一族と言っていたが、私はこの人達に魔法を
それなのに行け、というのか。
「お前が家に来た時は邪魔だと思ったが、まさかこんなところで役に立つとはな」
「本当に、出来損ないの妹だけど、私達のために生贄になって死んでくれるのは、本当に嬉しいわ」
心底安心しているように、二人は私のことを妹ではなく、もはや人間としても
本当にこの人達は、救いようのない人間だ。
「じゃあな、もうお前と会うことはないだろうが」
「あなたは死ぬくらいでしか役に立てないんだから、せいぜい前線でも味方の
とても醜い笑みを浮かべて、私の反応を
私が
しかし私はできるだけ
「教えていただきありがとうございます、お義兄様、お義姉様。前線で
「……ふん、つまらない
「あなたじゃどうせ、肉の盾にすらなれないわ」
二人はそんな最低な捨て
私は自分に用意されている屋根裏の部屋に戻った。
私は婚外子で、平民の母親から生まれた。
十歳の
だから私だけ本当の家族ではない、ということでとても嫌われていた。
アルタミラ伯爵家の中で、一人だけ
家族全員が真反対の色、赤色の髪だったからだ。
平民の子だから魔法の才能も一切ない、と
髪も手入れできないので、ごわごわしている。
毎日を屋根裏のほとんど光もないこの部屋に押し込められて過ごしていた。
自分でもよく
まあ、ちょっとした理由はあるんだけど。
これから、私はアルタミラ
だけど簡単に死ぬつもりは、一切ない。
こんな家族から捨てられるなら、むしろありがたい。
絶対に、生き延びてやるわ……!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます