知らないお姉さんに告白された!?
モンステラ
第1話 初めましてからの告白
みなさんこんにちは。変わりなく健やかにお過ごしでしょうか。
緑色の葉っぱはだんだんと紅葉し、夏も終わって過ごしやすい季節になってきたことと存じます。
はい、では突然だけど、ここでクエスチョンです。
いや本当に突然だなと驚くかもしれないけれど、それはごめんなさい。
と、まあ謝罪もしたいうことで質問に戻りまして。
みんなは告白された経験というのはあるだろうか。
そんなことありすぎて逆に困っているよなんていう人や悲しいことに一度も経験がない人もいることだろう。
わたしは後者だ。
この世に生を受けて十六年。自分から告白をしたこともないので、彼氏いない歴は年齢とイコールである。
十六年くらい生きていたら、自分がモテるようなタイプではないことはわかる。
別にそれが悲しいとかもっとモテたいとかそんな気持ちになったことはないけど、漠然とわたしはこのまま誰とも付き合えずに一生を終えてしまうのだろうかと不安な気持ちが一瞬よぎったことがある。
まだ十六歳なんだから気にしなくて大丈夫だよ、そうだよねあははって話を友達としていたのがつい昨日の話。
だけど今日、いやたった今。わたしのそんな不安が覆るような状況に直面していた。
「あの…… わたし、あなたのこと好きになっちゃったみたいなの。付き合ってくれないかな?」
……これは間違いなく、今まさにわたしの目の前で告白イベントが展開されている。
そんな大イベントを展開しているイベント主はわたしの目の前で頬を赤らめながら、にこやかに微笑んでいる。
どういうことだろうか。
返事を待っている人にわたしは驚きすぎてしまって答えを返せずにいた。
理由は三つ。
まず一つは人生初の告白だったこと。
まさかわたしが告白される日がくるなんて驚き以外の感情は出てこない。
そして次にわたしに告白してきた人が女性だったということ。
わたしよりも年上の大人オーラが溢れ出ているお姉さん。
ふわふわに巻かれた髪、色白の肌に色素の薄い瞳。スラっとしていてスタイルもよく、特に細くて綺麗な手と腕が特徴的だった。
わたしが女の人に告白される想像なんて生まれて一度も考えたことはない。
ただそんな二つの理由よりも三つ目の理由が一番の驚きポイント。
声を大にして言わせてもらおう。
「いやこの人誰ー!!!(心の声)」と。
わたしの勘違いでなければ、どこかで会った気がするような……なんてことも全くない。完全に初めましてだ。
しかも、わたしが今いるのは美容室。
もう一度言います。わたしが今いるのは美容室。
そろそろ髪が伸びてきたから切りに行こうと思って予約した美容室。内装がオシャレで雰囲気が良さそうだなと思って予約した美容室。
まさか初めて来た美容室で知らない美容師のお姉さんに告白されるなんて夢にも思わないじゃん。
いやいやいや、そんな今日初めて会った人から告白されるわけないって思うよね。
うん、わたしもそう思う。
わたしもう頭の中がぐちゃぐちゃを通り越して真っ白になってきちゃったよ。
「あの……」
「あ、はい」
「返事はどうかな?」
「へ、返事ですか……」
わたしは喉の奥から声を振り絞って答えた。
「えっと、ごめんなさい──!」
☆
「ねえねえ、この服似合うかな?」
「あ、はい。いいのではないでしょうか……」
「じゃあこっちはどうかな?」
「それも似合うと思います……」
……わたしは何をしているのだろうか。
具体的に言うと、なぜわたしはショッピングモールで昨日告白されたお姉さんと一緒にお買い物をしているのだろうか。
「なんか
茉莉ちゃん。わたしの名前は
「え? ああ、なんでわたしがお姉さんと一緒にいるのか不思議で……」
「それは昨日わたしが明日一緒に遊びに行こうって誘ったからでしょ?」
「いや、それはそうなんですけど……」
わたしは昨日、このお姉さんの告白を断った後、まずすぐに連絡先を聞かれた。
フラれたすぐあとに連絡先聞いてくるなんてすごいメンタルだよ。
急に連絡先を聞かれるのは怖くて断ったんだけど、あまりにもしつこく聞いてくるものだから、教えてしまった。
まあ一応女の人だし、別にそこまで気に留めていなかった昨日の自分にドロップキックをしつつ、連絡先の交換を
「いやあ、茉莉ちゃんが来てくれてわたし本当に嬉しいなぁ」
「お姉さんがしつこく誘ってくるからじゃないですか……」
昨日の夜、お姉さんから電話がかかってきた。
スマホを手に取って確認したところ、スマホの画面にはお姉さんの名前が表示されていた場面の記憶がありありと思い出される。
わたしがその状況にどう対処したかって、わたしは一度頷いて、電話をそのまま無視することにしたのだ。
人からの電話を無視するなよとか思わないでください…… だってだいぶ面倒くさいなって思っちゃったんだもん!
ただすぐに問題が発生した。
どんなに時間が経っても一向に携帯から音が鳴りやむ気配はなかった。
わたしだって今を生きる現役JKの現代人だから、スマホを使って動画を見たり、何もすることがなくてもスマホを触っていたりする。
ずっと電話が鳴り続けて、スマホが使えないのは困るのだ。
この瞬間にわたしはなんで連絡先を教えちゃったんだと深く後悔した。
もう電話に出ないとこの状況は終わりそうにないし、仕方がないのでわたしはため息をついたあと、電話に出た。
そこで明日一緒に遊びに行こうとこのお姉さんに誘われたというわけ。
嫌ですとはっきり断ったんだけど、「来るまでずっと待ってるから!」と待ち合わせの場所と時間だけ言って一方的に電話を切られてしまった。
わたしは本当にとんでもない人に連絡先を教えてしまったことをさらに深く後悔した。
「でもわたしのこと無視してもよかったじゃない? それでも来てくれたのが嬉しかったの!」
「そりゃ、来るまでずっと待ってるとか言われたら誰でも来ますよ!」
そんなこと言われて行かなかったら、謎に申し訳ない気持ちになってしまう。
だからお姉さんのために行ったというよりは自分のために行ったというわたしの気持ち的な部分の方が大きい。
「いやー…… わたしが言うのもなんだけど、普通なら来ないと思うけどなあー……」
「え、そうですかね?」
「知らない人について行かないようにって教わったでしょ? お姉さん不安になっちゃうよ」
「いや教わりましたけど、わたしももう十六ですし…… そこら辺の判断はちゃんとしてついて行ったつもりなんですけど……」
「じゃあわたしだからついてきてくれたってこと? え、嬉しい、好き!」
そう言ってお姉さんがわたしに抱きついてくる。
「ちょっ、くっつかないでください!」
(やっぱり無視した方がよかったのかも……)
わたしは昨日、このお姉さんにわたしを好きな理由を聞いてみた。
会ったこともないのに急に告白するなんてさすがにおかしすぎる。
するとお姉さんから返ってきた言葉は一目惚れ。
さすがに意外な答え過ぎた。
わたしがそもそもそんなひとめぼれされるような顔をしていないので、正直疑わしいところではあるけど……
「それより茉莉ちゃん。わたしのことはお姉さんじゃなくて、雫って呼んでって言ってるじゃない」
このお姉さんの名前は
綺麗な名前だ。まあそんなことは置いといて、やっぱりわたしにそんな名前の人の知り合いはいない。
「昨日初めて会った人を名前で呼ぶのはちょっと……」
嘘も嘘、真っ赤な嘘です。別に学校で初めて会った人のことは、普通に名前呼びします。
わたしがこのお姉さんを名前で呼ばないのはお姉さんに対する対抗心みたいなところからきている。
このお姉さん、とてつもなく強引。昨日初めて会ったばかりなのにこの強引さだ。
わたしが振り回されているような感じがするのが少し悔しくて、名前は呼ばないことにしている。
結果お姉さんと呼ぶようになった。
「えー。じゃあこれから呼んでもらえるように頑張らなきゃ」
「え、まだこれからがあるんですか!?」
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