けがの功名?一寸先は闇?
バークは一匹は避けたが、もう一匹の爪からは逃れきれなかった。
ほんの少しのひっかき傷だが、服に爪が引っ掛かった事でバークはバランスを崩して体を傾げた。
その足に向かって噛みつこうと飛び掛かった一匹を彼は撃ち抜き、しかし、銃の反動で彼は完全に仰向けに倒れてしまった。
彼に向かって飛び掛かる一匹。
バークは再び銃を向けるが、彼は後ろから羽交い絞めにされた。
逃げていた一匹だ。
「ぎゃあはっははは。捕まえた!バークを捕まえた!」
「ひゃははっは。そのまま捕まえておけ!依頼通りに生きたまま引き裂いてやる!情けない声を出して命乞いもさせてやる」
私は隠れ家から飛び出していた。
私に狼男達は狩れないが、敵の虚を突く事はできる。
「きゃあああああ!ひとごろしー!きゃあああああ」
私の叫びでバークに腕を振り上げていた狼男の腕は止まったが、一、二分前にバークに撃たれていた狼男が私に向かって走り込んで来た。
私はその狼男が私に到達する前に今の私の形を捨てた。
どピンクなスタンダードプードルに変化するや私に向かってきた男を交わし、そのまま真っ直ぐ走り抜け、私の変化に驚いて振り向いた狼男の頭目掛けて飛び乗った。
てこの原理だ。
私に頭に乗られた男はよろめき、ただし、私を引き裂こうとかぎ爪を向けたが、私が同じ場所にいつまでもいるわけはない。
思いっきり男の頭を蹴り飛ばして宙に飛び上がり、そして、身をひねって地面に着地した。
再びバークを見返した私の目に映った光景は、バークが屍を二体積み上げたところだった。
自分を拘束する男の腕を隠し持っていたナイフで切り裂き、怯んだところで後ろを振り向くことなく肩越しに銃弾を浴びせ、その銃は間髪入れずにバークの前に立ちはだかっていた狼男の頭をも爆発させたのだ。
私は彼の神業ともいえる動きにうっとりとしていたが、太陽の輝きをする緑がかった瞳は私を冷たく見据え、私に銃を向けた。
「動くな」
ああ、私はここで死ぬ。
ガウン!
弾丸は私の首を撃ち抜くことなく、私の真後ろに迫っていたらしき狼男を撃ち殺したようだ。
私は改めてバークを見返したが、バークは私に対して感謝どころか銃口を向けており、それは今度は完全に私に狙いをつけていた。
「君が黒幕か?助けた振りしてって、よくあることだものな」
「いやーそれは違うよ。その子は僕のペット」
「お前が、仕掛けた?」
「はは、それも違う。大体猿一匹がドブネズミを殺して歩いても僕はどうでもいいからね。さあ、そんな事よりも、いいの?犬男からの怪我をほっといたら犬男菌がうつるよ。君は犬男になりたくなければ、今すぐに聖水でその怪我を洗い清めないといけないんじゃないかな」
ジョスランが首を突っ込んでくれた事に私は大いなる感謝だ。でも、今は犬なので、尻尾を振りながらワンワンと嬉しそうに彼に対して吼えるだけにした。
さあ、お礼も言った。
では帰るのみだ。
とことこと私は彼等から離れようとして歩き始めた。が、私が数歩もいかないうちに、ジョスランが私を抱き上げてしまうとは。
「だめ、僕にありがとうもまだでしょう。帰しませんよ」
耳元にぼそりと囁かれ、私はお礼は言ったはずだとワンワンと吼えた。
「さあ、こんな汚い場所でぐずぐずしないで、僕のお家にいらっしゃい。バーク、君こそ訪ねたかったでしょう、僕のお家。招待してあげましょう」
バークは左の眉を軽く上下させたが、ジョスランの招待を受けることにしたのか一歩踏み出した。
私はバークは私を殺したい男なのだからと心の中で彼を振り払うと、今度はジョスランから逃れようと彼の腕の中でもがいた。
「おっとと。僕のお犬様、暴れないで。帰るよ」
いやだ!
ジョスランの家なんか行きたくない!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます