第3話 『【中原ダンジョン】一日目』

 翌日。

 早朝から新幹線を使い、荷物をホテルに預け、俺は今【中原なかはらダンジョン】の目の前に来ていた。



「『冒険者カード』の提示をお願いします」


 声のあるじは、【冒険者ギルド】の職員である男性。


 そして、冒険者カードというのは、“冒険者”がダンジョンに入るために必須なアイテムであり、大まかな個人情報が書かれているので、紛失すると大変な事になる物でもある。


 何故なぜ、こんな物があるのかというと、過去にステータスを持たない一般人が勝手にダンジョンへと入り、死亡が確認された経緯から警備が厳しくなったからである。



「これでいいですか?」

「ご協力ありがとうございます。⋯⋯確認が出来ました。どうぞ、お入り下さい」


 【冒険者ギルド】の職員の人に従い、【中原なかはらダンジョン】の中へと入る。




 するとそこには、一面に広がる『大草原』の景色が映り、俺は驚く。


「凄いなここのダンジョン。ある程度の知識として知っていたけど、こんなに凄いとは⋯⋯」


 そよ風が吹き、草原を揺らす。


 俺が攻略した二つのダンジョンは、石の壁で出来たtheダンジョンみたいな場所であった。


 ⋯⋯しかし、この【中原なかはらダンジョン】は本当にダンジョンの中なのかと疑問に思う程、ダンジョンのイメージとは全くかけ離れていた。


「⋯⋯まぁ、ここはダンジョンの中なんだし、気を引き締めるか」


 そう。いくら外見がダンジョンとかけ離れていたとしても、ここはあくまで『ダンジョンの中』。

 モンスターが出ないはずが無い。



 そう思った後、俺は魔力を全身に巡らせ、身体能力を上昇させる【身体強化】を使う。


「今日は、ここら辺のモンスターとの『戦闘慣れ』が目標だな」


 というのも、【中原なかはらダンジョン】は見ての通りとても広大であり、一人ソロで攻略する。

 そのため、ダンジョンの中での寝泊まりが出来ないので、少しづつ様々なモンスターとの『戦闘慣れ』をしていき、日を跨またぐ前までに攻略しないといけない。



「⋯⋯!」


 少し考え事をしていた時、微かに気配がし、俺は気配がする方向へ目を向ける。


 そこにいたのは、ゴブリンの上位種である【ハイ・ゴブリン】が四匹・・

 武器である短剣ショートソードを一本ずつ両手に持ち、佇んでいた。


『『『『グゲゲゲ』』』』

「⋯⋯【付与魔法エンチャント迅雷剣エルトール】」


 長剣ロングソードに、雷属性の【付与魔法エンチャント】を掛ける。


 そして、それが合図かのように、【ハイ・ゴブリン】達は動き出した。


 ⋯⋯が、もう遅い・・


『グゲ!?』


 俺は一瞬で【ハイ・ゴブリン】達の死角へと移動し、四匹の内の一匹を倒す。


 【迅雷剣エルトール】の効果は、長剣ロングソードに雷を纏まとうのと、副次効果として自身の“俊敏”のステータスを上昇する効果がある。

 一見、【暴風剣テンペスト】の効果ににているが、微妙に効果が違う。


 それは【暴風剣テンペスト】よりかは攻撃力が弱いが、速さの部分では圧倒的に【迅雷剣エルトール】の方が速い。


『グゲゲ!』

『グゲ!』

『グゲゲゲ!』


 動揺しながらも、残った【ハイ・ゴブリン】達は攻撃を仕掛ける。

 それを見た俺は、装備しているローブでわざと『攻撃を喰らう』。


 装備しているローブは、【付与魔法エンチャント】を付けた剣の攻撃でも『傷一つ付かない』。

 そんな物が、たかが短剣ショートソードに傷を付けられるはずも無く、弾かれる。


『『グゲゲ!?』』


 俺はその隙すきを見逃さず、長剣ロングソードで二匹の【ハイ・ゴブリン】を斬りつける。

 

『グ、ゲゲゲゲ』


 数の有利が無くなり、最後の一匹の【ハイ・ゴブリン】は即座に逃げ、近くに出現リスポーンする仲間を呼びに行こうとする。


『グ、グゲ⋯⋯』


 だが、俺は仲間が来られると厄介だと思い、スキル【未来視】を使用し、先回りをし最後の【ハイ・ゴブリン】を倒す。




 その後も、俺は近くに出現リスポーンするモンスターとの『戦闘慣れ』をするべく、手当り次第に周辺を探し回った。


 こうして、【中原なかはらダンジョン】一日目は何事も無く終了した。





 ────────────────────

【補足】

 主人公が持つ、長剣ロングソードを入れるさやは、血を拭き取ったり錆つかないようにする少し特殊なアイテムだそうです。



 高評価・ブックマークへの追加をよろしくお願いします。

(疑問に思った点・改善するべき点がありましたらコメントをお願いします)


 次話『【中原ダンジョン三日目】』







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る