第一章

第1話 『今の主人公』

 迫り来るのは巨大な拳。

 俺はそれを見て、手に持っている長剣ロングソードで自分にダメージが残らない様にいなす。


 まともに喰らえば、かなりダメージを喰らう。


 何たって相手はあの【オーク・・・】なのだから。


「ふうぅぅ⋯⋯」


 大きく息を吸い、大きく息を吐く。


 ───昔の俺とはもう違うんだ。


 と思い、俺は全身に巡らせていた魔力の一端いったんを剣先に篭める。


 そして⋯⋯


「【付与魔法エンチャント暴風剣テンペスト】!」


 ここが勝負どころだと思い、得意魔法である【付与魔法エンチャント】を唱え、握っていた長剣ロングソードは無数の風の刃を纏った。



 全属性・・・の中から選んだのは、風属性。


 風属性を選んだのは【暴風剣テンペスト】の副次効果として自身の“俊敏”のステータスを上昇する効果があり、万が一の事・・・・・に備えるためである。



『グオォォオ!』

「⋯⋯っ!」


 辺り一面に声が響き渡る。


 【オーク】のスキル、【咆哮ハウル】。

 咆哮ハウルを聞いた全ての生物を、一瞬だけ膠着こういゃくさせる事が出来る。


 そのため、体が動けない俺に攻撃が迫ってくる。

 そしてその直ぐ後、俺はいなすのは無理だと諦め、無理やりに回避行動へと移る。



 【オーク】は汚い笑みを浮かべた。

 回避行動を取ろうが、『事前にこの事を知らない限り』自分の攻撃は避けられない、と。



 そうして次の場面では⋯⋯俺が【オーク】の攻撃を避け・・、素早くふところへと移動し【オーク】に長剣ロングソードを突き刺した。


『グ、グォォオ⋯⋯』


 【オーク】は急所を貫かれ、起き上がる事も無く地面に横倒れ魔石と化す。

 そして、いつもの馴染みである⋯⋯



『レベルが3上がりました』

『E級ダンジョン【麗江れいこうダンジョン】を攻略した事により、【麗江れいこうダンジョン】の攻略証が与えられました』


「はぁぁぁあ───ッ!」


 ⋯⋯『ステータス音』が聞こえ、長剣ロングソードさやへとしまい、溜まりに溜まった緊張を解く。



 “冒険者”に成ってから、ここまでくるのに『半年』という期間が掛かった。

 短い様で長い道のりだったと、今でも思っている。


 だが、今日ここで確かな真実が分かった。


 ───今の俺は、昔の俺より確実に強くなった、と。



「これで詩音しおん姉さんとの『約束』には、少し近づけたかな?」


 そう呟きならがら、俺は具体的にどこまで強くなったかを調べるべく、「ステータスオーブン」と言い、目の前にステータスを出現させた。



 

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 涼風すずかぜあおい「15歳」

 Lv13→Lv15(NEW)

 職業『魔剣士』


 魔力「E+」→「D」(NEW)

 筋力「E」→「E+」(NEW)

 体力「E」→「E+」(NEW)

 俊敏「E」→「E+」(NEW)


 保持スキル:【未来視】


 ダンジョン攻略証:F級【西野にしのダンジョン】・E級【麗江れいこうダンジョン】(NEW)

 ──────────────────


 ──────────────────

 【未来視】

 使用回数:一回→二回

 発動条件:未来を見たい対象生物を目視する事

 効果:対象生物の3秒先の未来を見る事が出来る

 ※時間が0時を過ぎると、使用回数はリセットされます。

 ──────────────────



「おぉぉぉ⋯⋯」


 予想の何倍も強くなっていおり、俺は驚く。


 その理由としては、大きく分けて二つ。


 一つ目は、“魔力”のステータス値がDに至ったという事。


 俺の職業は『魔剣士』。

 つまりは、大部分の戦闘で得意魔法の【付与魔法エンチャント】を使用するため、魔力量が上昇した事はとても大きい。


 二つ目は、スキル【未来視】の使用回数が一つ増えたという事。


 先程の【オーク】との戦闘で、【未来視】を使用し危機的状況を回避し勝利した。

 その【未来視】の使用回数制限が一つ増えたという事は、“魔力”のステータス値が上昇した事と同様に、様々な戦闘場面での手数が増やせる。



「⋯⋯さて、長い時間ここにいると【オーク】が出現するかもしれないし、とっととここら出るか」


 ───色々考えるのは後にしよう。


 そう思い俺は、ステータス画面を閉じ、床に転がっていた魔石を拾って【麗江れいこうダンジョン】のボス部屋を後にする。






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次話『準備時間』






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