いずれは【勇者】になる主人公 〜職業は【魔剣士】なので全属性が使え、スキルは【未来視】なので未来が見えます〜

M.N

プロローグ

 今から数十年前の事。


 この世界に突如とつじょとして、『ダンジョン』。

 更に、『モンスター』や『ステータス』といった数多あまたの非現実的な概念が一遍いっぺんに出現した。


 そして、これらが出現した事により、この世界の経済状況は急激に成長していった。



 その理由としては様々であるが、極端に言えば一つだけ。


 それは、モンスターを倒すと『魔石』というエネルギー資源がドロップする事にある。


 このエネルギー資源もとい魔石は、数十年前の世界では考えられない程、効率的かつ何のデメリットも無く電気に変えられた。


 そのため、日本。いや、世界中の国々がこれらの資源を沢山たくさん使用しようと、各国で【冒険者ギルド】という機関が造られ“冒険者”という職業が現れた。



 “冒険者”は、ステータスを駆使くししモンスターを倒し、魔石を集め、国が直接運営する【冒険者ギルド】が高値で買い取る。



 ⋯⋯このような事があり、数十年前からこの世界は急激に成長していき、“冒険者”は世界中で人気の職業となった。



 だが、こんな世界にも理不尽な事が存在する。


 ───それは、“冒険者”のかがみであるステータス所持者が全員いるとは限らないという事だ。

 もっと詳しく言うならば、およそ2人に1人しかステータス所持者が現れないという事になる。


 その理由は未だ解明できていない。


 しかし、そこには何かしらの『理由』があるのかもしれない、と、とある誰かは言っていた。




 そして、俺こと涼風すずかぜあおいは運良くステータス所持者である。


 ステータスを所持していれば、“冒険者”になって上手くいけば『大金』や『名声』などが手に入る。


 ⋯⋯しかし、俺は『大金』や『名声』目当てで“冒険者”になったとかでは決して無い。



 ただ単に、俺は強くなる事を目指し“冒険者”となった。






 ☆ ☆ ☆


 それは、俺が幼い頃。


 休日にも関わらず、両親は仕事で忙しかったため、二つ年上の姉と公園で遊んでいた時だった。


 その日、公園で運悪く───ダンジョンが出現した・・・・・・・・・・



 ダンジョンが出現し、ダンジョンに巻き込まれた当初、幼い頃の俺は、何が起きているのか全く分からなかった。


 いきなり大きな地震が起きたかと思えば、目の前が公園ではなく『別の景色』になっていたのだから。



 ⋯⋯ただ、俺と一緒に居た姉は、ここがダンジョンの中である事を察して、『最悪の状況』が起きない事を願い、俺の手を引っ張りダンジョンの出入口へと連れて行ってくれた。



 そして、数十分後。

 ダンジョンの出入口が視界に見えた瞬間、神様が嘲笑うかのように『最悪の状況』であるモンスター⋯⋯【オーク】と鉢合わせをしてしまった。


 その時初めて、俺は今の状況を理解し、同時に恐怖を覚えた。


 本来は逃げるべきであった。

 けど、足が震えまともに逃げる事さえ出来なかった。



 ⋯⋯だがしかし、姉だけは俺と違っていた。


 相手はモンスター1匹だと理解し、俺が逃げられないと理解した瞬間、モンスターを倒そうと動いていた。

 

 相手はE級に属する【オーク】。

 一撃をまともに喰らえば、子供など文字通り『ミンチ』にされる。

 当然、掠っただけでもタダでは済まない。

 


 それを承知の上で、姉は【オーク】に戦いを挑み、右目を犠牲・・・・・に勝利を収めた。




 その後、姉が【オーク】に勝利し終わった後に、駆けつけてきた“冒険者”達に俺達は回収された。






『まぁまぁ、落ち着けよあおい


 場所はとある病院。

 姉が【オーク】に右目を潰され、それを見た“冒険者”達が急いで病院へ手配し、治癒魔法を掛けて貰ったが⋯⋯時は既に遅かった。


 右目が潰されてからかなりの時間が経っており、治癒魔法じゃどうにもならない、と病院の先生は言った。



 その事を聞いた俺は、ただ姉に泣きながら謝り続ける事しか出来なかった。


 ───俺が動いてさえいれば、結果は変わっていたかもしれない、と、思い。



『別に、お前のせいでこんな事になったとは、決して思ってなんかない。───だからほら、泣くのは辞めような?』


 俺の言葉を受け止めた姉は、両方の瞳に溜まっている涙を拭き取って、俺の頭を落ち着かせるように撫でた。


『少しは落ち着いたか? ⋯⋯まだ落ち着かない?───ならそうだな、一つ『約束』をしようか』


 姉は俺から離れ、病室の窓を空け、俺に窓の外の景色を見せるように俺に語りかけた。


『強くなれ。例え恐怖に陥ろうが、例え挫けようが、例え泣き喚くわめこうが⋯⋯強くなれ。それが私とお前だけの二人の『約束』だ』



 俺は疑問に思った。

 それだと、右目とでは全然釣り合わないんじゃないか? と。


 しかし、姉は俺の言葉を聞いた後、少し微笑びしょうしこう言った。


『弟の成長は、姉としては掛け替えの無いものなんだぞ?』





 ☆ ☆ ☆


 こういった経緯があり、俺は姉である涼風すずかぜ詩音しおんとの『約束』を果たすべく、“冒険者”となって俺は強くなる事を日々目指している。





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次話『今の主人公』

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