確信


リア・ケイブス



翌朝、ガイとメイア、クロードはギルドへ向かうため宿の外に出た。


朝から天気は快晴。

昨日の雨がなんだったのかと不思議に思うほどだった。


「雨は昨日だけかよ」


「運が悪かったのかも」


そんな会話をするガイとメイアだが、クロードは別の方向を見ていた。


「クロード、どうしたんだ?」


「いや、なんでもない。行こうか」


こうして3人はギルドへと向かった。


クロードが見ていたのは宿の横、昨日セリーナが荷馬車を停車させた場所だが、そこにはもう何も無かった。



____________




ギルドに到着した3人は、カウンターへ向かう。

そこには以前に対応したブロンドヘアの受付嬢がいた。

相変わらず目が虚で何を考えているのかわからない表情だ。


「お待ちしておりました」


「え?」


突然の発言に驚くガイ。

クロードは眉を顰めるが、ハッとしてメイアがすぐに口を開いた。


「あ、昨日、マーリンさんに助けてもらったの。それで私たちが、この依頼を受けると言ってしまって……」


「マーリン?……そうか。そういうことか」

 

クロードは妙に納得した様子だった。

逆にガイは首を傾げている。


「助けてもらった?」


「ええ、カレアの町から来た冒険者に誘拐されそうになって……その時に助けてもらったのよ」


「はぁ?なんで、そんな大事なこと言わないんだよ!」


「ごめんなさい……」


メイアは申し訳なさそうに俯く。

確かに、自分の命が危うかった状況を考えれば、このことはパーティメンバーに報告するのは当然のことだ。


「まぁ、無事だったんだ。いいじゃないか。それより、マーリン……と言ったか。一つ聞きたい」


「依頼に関係すること以外は、お話できません」


「関係することさ。この依頼書にある盗賊団員のデレクは元パーティメンバーだろ?」


クロードの言葉にガイとメイアは驚いて顔を見合わせた。

さらに無表情を貫いていたマーリンは少し顔を顰めたように見える。


「誰からそれを?まさか……」


「誰から……は質問の答えになってない。これは重要なことだ。僕たちは命懸けで湿地帯まで行くんだからね」


「……」


「僕らが入手した情報をまとめると、デレクがギルドマスターの妻と子を殺害し湿地帯に逃走。謎の盗賊団が関係しているため王宮騎士団が派遣された。だが、いつまで経ってもデレクを捕まえられないから、ギルドマスター自ら依頼書を出した」


「間違いありません」


「だが、デレクはギルドマスターと君とパーティを組んでいたと聞く。それ以前か、その後かはわからないが、デレクが盗賊団と関係を持っていたとして、ギルドマスターの妻と子を殺害する理由がわからない。君に聞きたいのは、その動機だ」


「なぜ、その動機が……この依頼に関係しているのですか?」


「その答え次第で、僕たちの敵が増えるからさ」


「どうしてですか?」


「この依頼は"デレクの捕縛"で完了する。だが盗賊団が関係しているなら、"何か"を奪うために、この犯行が行われたと思うのが自然だ」


「なるほど。では、その"何か"とはなんでしょうか?」


「さぁ?なんだろうね。だが、それがなんだったとしても、この依頼を完了することで、敵が増える可能性があるとなれば、僕たちとしては不都合だ」


そう言って笑みを浮かべるクロードだが、目は笑っていない。

マーリンも明らかにクロードを鋭い眼光で睨んでいた。


「動機……私にはわかりかねます。ただ……」


「ただ?」


「"彼"は優しすぎた」


「……」


「私から言えることはこれだけです。ご武運を」


「最後に一つだけ聞いてもいいかい?」


「なんでしょう?」


「デレクは風の波動の使い手か?」


「違います」


「そうか。ガイ、メイア行こう。」


「あ、ああ」


ガイとメイアは戸惑いつつも、クロードと共にギルドの入り口へ向かった。


ガイは先を歩くクロードに駆け寄る。


「どういうことだよ」


「詳しくは後で説明するが、恐らく、この話に出てくる盗賊団の狙いは"ロイヤル・フォース"だ。だとすると、やり方は違えど、この盗賊団の目的は僕らと同じということになる」


「なんだって!?」


これがクロードが言っている"敵が増える"の意味だった。

狙いが同じロイヤル・フォースとなれば、行く先々で、この盗賊団を目にすることになる。


「メイア、彼女に助けられたと言ったが、マーリンは波動を使ったか?」


「ええ、多分ですけど、"風の波動"でした」


「なるほどな。そういうことか」


そう呟くと、クロードはニヤリと笑う。

何かを確信したような表情だ。


そのまま3人はギルドを出ると、東の湿地帯へと向かうのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る