お姉ちゃんの匂いがいっぱい

「ん……お姉ちゃん?」

「美葉? 起こしちゃったかしら」


 私はお姉ちゃんの腕に抱えられて、目を覚ました。

 

「美葉があのまま寝ちゃったから、部屋に運ぼうと思ったのよ」


 私が自分の状況を理解していないのを察してくれたのか、お姉ちゃんがそう教えてくれた。

 ……そっか、あのまま、眠っちゃってたんだ。


「……ありがと、お姉ちゃん。もう自分で、部屋まで行けるよ」


 私はお姉ちゃんに下ろしてもらおうと、そう言った。

 恥ずかしいし、私が寝ちゃったんだから、お姉ちゃんに運ばせるのは、悪いし。

 ……いや、いつも無理やり今みたいに、お姫様抱っことかされてるんだけどさ。

 

「大丈夫よ。美葉は軽いもの。それに、好きな人を抱えられるなんて、幸せなのよ?」


 すると、お姉ちゃんは嬉しそうに、そう言ってきた。

 ……そんなこと言ったら、お姉ちゃんは、いつも、幸せってことになるじゃん。……私のこと、いつも無理やり、今みたいにしてくるんだから。


「美葉、扉、開けてくれる?」

「……あ、うん」


 私がお姉ちゃんの言葉に考え込んでると、部屋の前に着いたみたいで、私のせいで両手がふさがってるお姉ちゃんはそう言ってきた。

 私はお姉ちゃんの言葉に頷いて、部屋の扉を開けた。

 すると、そこは私の部屋じゃなくて、お姉ちゃんの部屋だった。

 ……お姉ちゃんの部屋で寝るの、久しぶりかも。

 良く考えれば、最近はずっと私の部屋だった気がするから。

 別に、私のベッドでも、お姉ちゃんのベッドでも、いつも一緒に寝てるんだから、匂いとか、変わらないはずなのに、お姉ちゃんのベッドだと、お姉ちゃんの匂いがいっぱいするんだよね。……って、わ、私、何考えてるの!? お姉ちゃんの匂いとか、別に、臭くなければ、どうでもいいし、そもそも、いい匂いだし。ち、違う、いい匂いっていうのは、臭くないって意味で、普通ってことだから。

 

 私が一人でそんな言い訳をしていると、お姉ちゃんに優しく、ベッドに下ろされて、布団をかけてもらった。


「……お姉ちゃんは寝ないの?」


 お姉ちゃんがベッドに入ってくる様子がないから、私はそう聞いた。


「ええ、私はまだやることがあるから、残念だけど、眠れないのよ。美葉は先に寝てていいからね」

「……うん。分かった」


 そう私が頷くと、お姉ちゃんは部屋を出ていった。

 それを確認した私は、直ぐに目を閉じて、眠りについた。

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