回転寿司の皿

しおじり ゆうすけ

  因縁は続く、永遠に、、

西日本にあるH県H市内、夕方 ある町内、

二人のお母さんが小さな公園で喋ってる、保育園の迎えで一緒になった顔見知りの二人が

自転車を止めて、休憩して、そこから眺めてる新築ビルを眺めてる。


「あそこの古い屋敷がなくなっちゃったのは淋しいわね」


「そうかなあ、私ん家(ち)隣りでしょ?あの空き家から塀を越えてやぶ蚊が来ちゃうので、保健所にどうにかしてもらえない?って言った事あったし」


「でもさ、あなたの家にお邪魔しての帰り道時、あの朽ちた土塀から見える中の雰囲気がうちの子は好きだと言うのよ、あそこの中に入って遊ぼうと言うのよ」


「そっちはさ、マンション生まれだから珍しいんでしょね、うちはあそこが実家なのであそこ子供の頃からずっと住んでたから見慣れてるけど、別に無くなってもいいかな。あんまり郷愁は感じないわ、中に入ったことないからこれと言って良い思い出も無いし。あ、うちの旦那がね、あ、うちの旦那って婿養子だけどさ、うちの家に来たとき、となりの屋敷に誰も住んでないので、びっくりしたそうよ、都会育ちだからさあ、和風建築の、ええと、武家屋敷、って初めて見たんだって。やっぱり田舎は良いなあなんて言い方してたけどさ。」


「で、新築ビルって、あれ上はマンションになるの?」


「どうなんだろ?潰したときの解体業者の説明では、下はテナントになるとか?」


「飲食店?」


「わかんない」

「新築ビルってさ飲食店は入居させないそうよ、でもそれ用に作るときもあるって。

旦那に聞いた話だけどさ、都会の一等地のビルに居酒屋のチェーン店がいっぱいあるのって、1990年代のバブル経済崩壊後にビルのテナントが大量に空き家になったからだって。でチェーン展開してる居酒屋ってバックには総合商社や大きな卸売り会社が作った会社があるわけ、それだけ信用もあるので、テナント側は安心感もあったから、増えたってさ」


「色々裏事情あんのねえ、」


「チェーン店ってそんなものよ、る居酒屋チェーンを一代で発展させた経営者とか居ても後ろにはきちんと企業が出資してたりするってさ。あー、なんか美味しい料理屋とか喫茶店とかでもいいのにねえ、駅前まで行かないとチェーンの飲食店も喫茶店この辺にないでしょ?」


「でもあそこけっこう広くて駐車場も確保できそうだから、コンビニやファミリーレストランとか作られるとさ、車の出入りって夜遅くとか朝とか、近所迷惑になるのよね、でもさあ、あの武家屋敷ってさ、うちの祖父から聴いてた話はさあ、、」


「何々?」「ここから歴史の話になるけど、昔の怖い話って興味ある?」


「うんうん、」


スマホの電話の音が鳴る

「あ、もう行かなきゃ、小学校の子が帰ってくる時間だわ」


「あ、うん、じゃ、また。」


「こんどメールで教えてよ、その怖い話」



「あ、いいわよ」


     一か月後 同じ公園、同じ母二人


「回転寿司かあ、」


「何が良かった?」


「うん、回転寿司はちょっと休憩で入れる店と違うからさぁ」


「お寿司嫌い?」


「嫌いじゃないけど、あ、子どもは好きよ」


「この前、工事関係の人と店長とチェーン展開の地域なんとかマネージャーとか言う人がうちの家に来てね、”ご迷惑おかけしております”って、丁寧に挨拶に来てさ。

でね、これ。」


「あ、無料チケット、いいじゃないー?」


「でも二千円分よ?三人でこれだと足んないわ。けっこうケチね。別の近くのビルにカラオケボックスが入った時、無料チケット5千円分持って来たもの」


「そんなにぃ?}


「旦那の実家の近くにさ、チェーン店のケーキ屋さんが出来たとき、近隣の家庭一軒一軒いに大きなロールケーキ配ったって話あるわ。引っ越しって大事なのよ、新規にやってきた店は最初に廻りの挨拶が後々の大事な顧客になるのよ。」


「いいわねえ、うちの近くは住宅びっしりだから、なにも来ないし」


「でも飲食店は来ないほうがいいの、車がうるさい、家族連れの子供がうるさい、暴走族がやって来たり、酔っ払いはうるさいし、ゴミや油の匂いもあるし、

焼き肉屋や焼き鳥屋は煙凄いでしょ、ケーキ屋はずっとバニラの匂いきつい時有ると聞いたわ、あの、バニラってのは元々卵の臭みを消すための香料だそうだけどさ。でも


そんな事よりも、あの武家屋敷を潰した時、町内会長やうちの祖父も別の事を心配してたのね」


「ええ、前もらったメールでさ、うん、そんな歴史があったのねえ、私の親は知らなかったと言ってた。」


「まあ、地元では有名な話でさ、どうしてあの屋敷が誰も買われないって理由はそれらしいけどね。明治以降誰も住んでなく戦時中はあそこに防空壕作るって話があったそうだけど、周りの人はあそこは無理、って反対して」


「ふーん、、」


「で、この地区の区画整理の時もさ、役所が言うには、先々に、こういう古い建物はこの街ではあそこだから、重要文化財になるかもとか?言ったりして、ほら、五年前の地震って結構凄かったでしょ?あれで古い家潰れてたのに、あそこだけびくともしなかったのって、やっぱり呪いのせいかな?とか噂したりしてたけど」


「よく隣りに住めるなあ、、」


「だって、引っ越しした時知らなかったもの。そんな噂の家がそこにあるなんて。

まあ、うちは、はす向かいだからさ、玄関からは見えないし、二階はあっち側見える窓は閉鎖してさ、外壁にはさ、見えないけど、御札貼ってる」


「なんか変なことあるの?」


「んー、、と私は感じないからいいけど、あの屋敷の崩れた土塀の中に入った猫だったか犬だったか古井戸に落ちて死んだ、って話はあったわ、あ、かなり昔の事よ」


「井戸があるの?」


「昔の大きな屋敷って井戸があるのは普通じゃない?」


「建築の人が言ってたけど、井戸は使えるんだって。で水は今でも綺麗で水質検査したら使えます、って」 


「ふうーん、水道代助かるわね、飲食系は水道代凄いでしょうから」


    

   一か月後


同じ公園、同じ母二人


「昨日大変だったわね」


「うん、パトカーと救急車と、後から小さい消防車も来たわ、子どもは初めて見る消防車を喜んでたけどさ」


「で、どうだったの?」


「開店前で試食会があったそうなの、そこに招待された人と関係者の人が皆で倒れたって」


「何?食中毒?」


「そうじゃないって。失神で倒れて、椅子から床に転げ落ちて怪我した人が数人とか?」


「新聞には何も載ってないけど、酸素不足になったとかで。でも回転寿司屋ってそんなに火は使わないのに、おかしいなあ、って。営業中じゃなかったから、店のほうも関係者と招待者だったし事件にはならなかったみたいで」


「そんな、大騒ぎだったのに?」


「ええ、でもさ、町内で皆、話してて納得してる人いたのよ、あそこは回転寿司屋とか飲食店の営業は無理だろとね」


「そうねえ。元がねえ。これじゃ開店は無理ね」


     一年後


 同じ公園、同じ母二人の会話


「え?また?」


「そうなの、また回転寿司だって」


「別のチェーン店が居抜きで入るんだって」


「居抜きって何?」


「飲食店って内装や外装がまだ使えて経営者がやめたり潰れたりしたとき

そのままで、椅子やテーブル、厨房機器、食器なんか置いてるの。で別の経営者が借りれば、すぐ店を開けられるでしょ、掃除は大変だけど、改装資金もそんなに使わなくていいし。店の看板だけ変えるかな、そういう空き店舗を、業界では”居抜きの店”って言うんだって。」

「ふぅーん」


「で、あそこ回転寿司のテーブルとお皿を運ぶレーンが前のまんまなんだって。あの機械は高いそうだけど、もう外壁を建てるまえに運び入れたので、でかいレーンはドアから運び出せなくて、壁壊さないと無理なんだって。だから前の店閉めるとき、チェーン店側は上の機器だけ取り外せるところまで取って、動くレーンはそのままに置かれてたので別のチェーン点はそれが魅力だったみたいで」


「そりゃ別の業態の飲食店は入れないわよねえ」


「だけどさあ、また失神するんじゃない?」


「そうねえ、」


「新しい店の人がまた家に挨拶に来たら教える?前の店の惨劇、、あ、惨劇と言ってイイかわからないけどさ」


「態度によるわ。まあ、開店しても行かないけど」


看板を新規で作っている作業を眺めてる二人。


  一週間後 


 同じ母二人の会話  


「ねえ、新聞見た?」


「えっ。載ってたわね。」

「もおー、うちの町内がへんなことで有名になっちゃってー!嫌だわー。」


「市の保健所の所長が招待されてたようだけど、若い所長さんだったから昔の噂知らなかったのよ」


「やっぱり失神?」


「こんどは大やけどだって。逃げた人からじかに聞いたわ」


「出たの?あの、幽霊が?」


「いや、若い女性アルバイトに憑依してたらしいわ。」


「井戸水を使ったから?」


「そうじゃなくて、保健所の所長さんがさ、お寿司を食べてて、九枚、皿を重ねててさ、それを若い女性アルバイトが数えに来たんだって。招待されてんのにお皿の数数えに来たことだけでもおかしいでしょ? そしたらさ、アルバイトが急に変な声になって

♪いちまーい、にまーい、とゆっくりお皿を数えだしてさ、最後の九枚の後、

♪一枚足らなーい!ってアルバイトの顔が変わって、目がでんぐり返って白目になって騒ぎだしたとたん、店内の電源が落ちて真っ暗になって

カウンターに付いてるお茶用の蛇口がぜんぶ外れて熱湯が勢いよく出て、座ってたお客にかかったそうよ」


「あー、そういう攻撃できたのかぁ、」


「攻撃って言い方、何よ。笑えるわ」


「呪い殺されるパターンじゃないのねえ。」


「そうみたい。」


「じゃ、また閉店?」


「かなあ」


「店、居抜きになるかもね」


「うち旦那が怖くなって引っ越そうかって言ってるけど、まだローン残ってるし、でもうちの家は何の不思議な事も起こってないから、あとは子どもに寄り付かせないように言うだけかも」


「でもねえ、子供って怖いもの見たさってあるじゃない、ほんと気を付けて

ぜーーったい中に入ったりしないようにぃー、新聞記事を壁に貼って驚かせてるわ」


「うあー。そうかあ、でも、まさか、あの元の武家屋敷が主人の大事な皿を割ったことで折檻されたお菊さんが井戸に身を投げて死んだって話の舞台だったとはねえ」


「お菊井戸の伝説って全国色々あるし、芝居や歌舞伎、小説でも幾多あるのだけど、

ホントの舞台はここなのよね。時代は変わってその伝説は薄まっちゃって廻りもマンションや新しい住人とかは何も知らなくて住んでるけども、これから、また新しい都市伝説が出来るのかもね、、」


「その屋敷の後に、ぜったいお皿を使う回転寿司屋が来ると言うのも、なにかの因縁だわー。」


一か月後


二人の母の会話。


「え?また回転寿司?知らないの?前の店で何かあったのか、、」


「そうなのよ、たまたまスーパーの出入口に置いてるタダのアルバイト情報を観てたらさあ、従業員パート募集で、ここの店だったのよ」


「えー?というか、今流行りの事故物件ってわかってはいるのかなあ?」


「でさ、検索したのよ、どんな会社かって。 でわかったのがね、営業不振になった回転寿司チェーンが外資系ファンドに買収されたじゃない?そこだったのよ、

経営者は外国人。だから、わかんなかったみたいよ、、あの事件の事、、」


    半月後 二人の会話


「ちょっとこれ。」


「あ、ビデオ撮ったの?」


「うん、スマホで隠し撮り。観る?」


「観ない!呪いが移るわよー? こっちも憑依されるかも!」


「でも、私だけじゃないわ、他の近所の何人か若者もスマホ撮りしてたし」


「で、どうなったの?」


「外国から祈祷師連れて来たって」


「へー」


「でもね、それ日本でも新規のお店とかする時に店の中で祈祷することあるのよ、

ただ、日本の場合は真言密教で拝むそうだけど、キリスト教の、ええと何とかシスト」


「え?エクソシスト?それ、1970年代のオカルト映画であった悪魔祓い専門の神父のことじゃない?」


「そうなのよ来たのよ、黒塗りの車に乗って、黒塗りのカバン持ってさー」


「撮ったの?」


「入る時だけね、あと店の中でなんか唸るような声がかすかに入ってる。」


「で?」


「しばらくして外に関係者が飛び出て、救急車来た。」


「、、祈祷師、負けたの?」


「、、そうみたい。」


「で店は?」


「また居抜きよー」


「ありゃりゃー」


その後、うちの企業でどうにかしてやる!という経営者、沢山の企業の飲食店が借りては閉め、借りては閉めが続いた、

色々な宗教の祈祷、拝み屋、アフリカの呪術師までやってきて、お祓いをしたが、

異常な事件は続き、それが名物になってしまい、

今では、その店の中にライブカメラを置き、ネット経由で世界中の人が

祈祷とお菊の呪いとの闘いのライブを観られることになった。

皿が飛ぶ、箸が飛ぶ、椅子が飛ぶ、醤油のペットボトルが飛ぶ、ねりワサビが人の穴と言う穴に入り込んでいく、寿司生姜が目を襲う、祈祷師の体が呪いで吹っ飛ぶ、ベルトコンベアーが異常な速度で廻りある時には、コンベア自体が外れて竜のようにのたうち回り、祈祷師や関係者に遅いかかったこともあった。


すさまじかったのは、外資系の世界的ハンバーガーやチェーン店が入居した時である。持ち帰りだけだったので皿が無い。皿が無けりゃ化け物は出てこねえだろ、

と思って開店したら、お菊の霊は牛の霊を召喚させ、その店にぶち込み、

大量の牛の霊を暴れさせ、内装はぐじゃぐじゃになってしまった。


しかし、、、


その後、京都の有名なお寺が経営する精進料理のお弁当屋さんに落ち着いた。これもお皿が無く、動物霊も召喚できないので、お菊さんは手出しができないようだった。ライブカメラはそのままで置かれ、お菊井戸の水はペットボトルで売られ

店は菜食主義者の聖地として繁盛しましたとさ。


   よかった~よかった~。


                  終

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回転寿司の皿 しおじり ゆうすけ @Nebokedou380118

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