私は魔法学園で運命に抗う
らみゅら
第1話
爽やかな風が吹く街道を歩き、私は目的地へ向かう。
周りには自分と同じ柄の服を来た男女が、
同じ目的地へ向けて歩いている。
楽しそうに会話を弾ませている者もいれば、緊張と顔に書いてある様な者まで、雰囲気は様々だ。
しかし一度見た情景には何も感じないものだと、心の中で思う。
それに、もう直ぐ終わってしまうことだ。気にしても仕方がない。
そうして考える事を辞めようとした時、私より少しだけ後ろの方が何やら騒がしくなった。
何が起こったかは私には分かっているのに、不思議と体がそちらを向く。
騒ぎの中心には三人の人物がいる。体がぶつかった事で、互いに謝罪を求めている様だ。
主に声をあげているのは、橙色の髪色をした陽気そうな少女と、金色の髪色をした、いかにも貴族の坊ちゃんを想起させる小太りの少年。
「ぶつかっておいて謝罪の一つもないわけ!?」
と、少女が怒鳴る。
「その女が俺にぶつかって来たんだ!そっちこそ謝罪をしたらどうなんだ?」
と、少年が言葉を返す。ぶつかった人物は今だに地面座り込んでいる。どうやら足を痛めてしまった様だ。
「それに俺は貴族の長男だぞ?俺の言う事が間違ってるって言うのか?」
少年がさらに言葉を続ける。
その言葉で頭に血が上ったのか、少女は右腕に力を込め、少年に殴りかかろうとする。
しかし、少女の攻撃は少年の前に現れた透明の壁によって阻まれてしまう。
「なっ!?」
少女が驚いた表情で言葉を放つと、少年はそれに続けて言う。
「危ないじゃないか。貴族に攻撃しようなんて、恐れ知らずなのか、それともただの馬鹿なのか、どちらにしろ貴族の子供は既に魔法の英才教育を受けている。ただのパンチが通じるわけないだろう?」
そのセリフを聞いて私は少し呆れる。
あの程度が英才教育の結果?その程度で?その程度の魔法で何が出来る?
コイツの未来はもう決まっているが、それでもこの現状は嘆く他ない。
まあどうしようもない事を嘆いても仕方がない。
そう思いながら結果を見守るためその場に留まる。少女は透明な壁を破ろうと何度も拳を叩きつけている。
「無駄だよ。お前がどれだけ攻撃しても意味なんかない!」
嘲笑う少年。しかしそれを気にも止めずに少女は拳を右へ左へ突き出し続ける。
・・・遂には少女の拳から血が滴った。
その時、倒れ込んでいた少女が叫ぶ。
「もうやめて!ティルの手が・・・」
その制止の声に橙色の髪の少女・ティルの手が止まる。
「でも、リンに怪我をさせたコイツを許したくない!絶対謝らせる!」
そもそもこの言い争いの原因は小太りの少年にある。先ほどと同じく透明の壁の魔法を使ってあたかも衝突した感を作り出したのだ。
そしてこの結末は少年が魔法で二人の少女を吹き飛ばして終わる。
そう決まっている。
そしてその後の二人は・・・
二人は客観的に見ても美しい部類に入るだろう。
その手の価値は相当なものになる。
・・・未来が見えるというのは退屈だ。自分が干渉する事で変化した先の未来すら見える私は、世界の終わりを見て全てがどうでも良くなっていた。
「私は大丈夫だから・・・もう謝って学園に行こう?」
リンがティルにそう言い聞かせる。
しかしティルはまだ怒りの絶頂にいた。
「そうした方がいいんじゃないかぁ〜?魔法が使えないお前に勝ち目なんてないぞ〜?」
少年が更に煽る。
するとティルは更に苛立ち、
「うるせぇよ!このクソ豚が!!」
と言いながらもう一度殴りかかる。
「お前・・・ここで殺してやるよ!!!」
その言葉と共に小太りの少年は魔法で少女を吹き飛ばそうとする。
終わったか。
私は振り返り、目的地へ向かおうとする。
やはり意味なんて・・・
・・・数秒が経ち、私は背後の異変に気づく。
そんな馬鹿な・・・
そんな声を出してしまいそうな程私にとって衝撃的な出来事。
私はこんな未来を見ていない・・・!
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