第53話【 堕ちた者達 】
【 ………よ……余は堕天使ワームウッド に仕える
【 本来、うぬ等では触れる事が出来ない存在だ 】
【 !!! 】
エルの頭の上で、モサミスケールが驚いた表情をしている。
【 厄災をもたらすと言われている堕天使ワームウッドにか!? 】
下界に厄災をもたらすと言われている堕天使のワームウッド。しかし、古の堕天使達は遥か昔に全て滅んでいるのだが……。
モサミスケールの反応に醜い魔物は、ゆるりと顔を傾ける。
そして、探りを入れる様に言葉を続けた。
【 ………、余は……絶対的な権力を有する悪魔に適用される、”
【
モサミスケールの驚く顔が、より一層歪んでいく。
モサミスケールは、さらに醜い魔物へと問いかける。
【 堕天使も悪魔も、遥か昔に滅んだはずじゃが 】
【 ……無へと遷移された奴等はな。だがそれ以外の方法で殺された悪魔は、余の様に数千年、魔力として漂う事となったが、その間に他の魔力を吸収して、形を想造する者もいる…… 】
エルとモサミスケールに衝撃が走る。
漂う魔力は目に見えず、その中の悪魔の魔力には年月を経て再生する者もいると言う事に………。
モサミスケールの顔が軋む。
【 お主は想造途中……と言う事か。でその悪魔が以前、
【 ……余の力は…生けるものを迷走させ、操る事が出来るのだ 】
苦しみながらも、醜い魔物がニタッと不気味に笑った。
そして………、突然声を荒げる。
【 混迷の魔術師リーゾックとは余の事だ! 】
<パパァーン>
混迷の魔術師リーゾックが埋まる地面に、いびつな赤い魔法陣が突如として現れ光りだす。
<ズドドドドッ>
幾重もの触手が魔法陣から放たれ、エルとモサミスケールの身体を……無惨に貫いた。
ダンジョンの天井へと押し上げられ、吊るされるエルとモサミスケール。
【 グワハハハハハハハー 】
エルとモサミスケールを見上げながら、高笑いする混迷の魔術師リーゾック。
【 うぬ等のコルディスコアも、余の魔力の糧として吸収してやる。有り難く思え!! 】
【 グワハハハハー、アーッハハハー 】
リーゾックの勝ち誇った高笑いが辺りに響く。
相手の力量を見極め、わざと興味を引く話を続けて隙を作り攻撃したのだ。
【 グワハハハハーウッ………ウギャウガッググッグオッウッ 】
悪魔の高笑いが、何故か突然うめき声に変わった。
「過信が作り出す不可視の時局。相変わらずだな」
貫かれ、吊るされていた赤い髪の少年の声が近くから聞こえて来る。
リーゾックが改めて、突き上げた触手の先端に目線をやると………何も……無い。
<グッ>
リーゾックの体内のコルディスコアが、また締め付けられる。
【 グフッゴブグウッ 】
激痛にもがき苦しむリーゾックは、自身の胸へ突き刺さっている腕が視界に入る。
そして、その先には赤い髪の少年が………。
【 !? うぬは……何故……… 】
「俺の混迷魔法に気付かないなんて、混迷の魔術師とは呆れたもんだ」
リーゾックは、エルに混迷魔法を掛けられていたのだ。その影響で頭が混乱し、エル達を触手で貫いたと思い込んでいた。
【 な、なにぃ……。混迷魔法は悪魔の中でも余しか扱えないはず! 堕天使でさえ………………… 】
【 !!?………!!!?】
リーゾックの目が痙攣しながら激しく波打つ。
【 …黒い翼……赤い髪………残虐で傲慢な魔力 】
『【 堕天使ルシファー!!!? 】』
【 いや、そんなはずは……… 】
<ズリュボッ>
リーゾックの胸から、鈍くこもる音が鳴る。
糸を引きながら振り上げられたエルの手には、コルディスコアが握られていた。
コルディスコアを体内から引き出されては、魔力を苗どころにしている魔物や悪魔は生きていけない。
狂気的な表情のエル……、瞳もまた赤く輝いて……。
爪が伸び、牙が生え、頭からは小さな角が。そしてまた一瞬だけ、黒い翼が……。
【 うぬは……悪魔か?……いや、その姿はやはり堕天使!!!? 】
リーゾックの目に焼付くエルの姿は、黒い翼が生えた生き物……堕天使と映っているのだ。
『【 ……余に混迷魔法を掛けているのか!? 】』
【 ………、余を殺しても……漂う魔力は消す事が出来ない。またいつか復活してやるわ…… 】
いびつな顔で……不愉快で恨めしそうに笑うリーゾックを前に、エルの口が猟奇的に歪んでいく。
「大丈夫だ。お前は無へと遷移させる」
【 !?……うぬは無の意味がわかってないな!無へと遷移させる事が出来るのは……… 】
<ズブズブズブッ>
白く輝く剣 “ 五大精霊の剣 ” が、リーゾックの身体に深く突き刺さる。
【 !?うグッ 】
「霊力を流し込めばいいんだろ!」
<バリバリバリバリッ>
【 ゴフグッ………な、何故!? 】
リーゾックの未熟な肉体へと、無秩序に霊力の波が流れ込む。魔力との打ち消しが始まり、激しい痛みをともないながら無へと遷移され、黒い煙が立ち上がる。
直ぐ横に有ったレッドゲートもその煽りを受け、バチバチと音を立て消えていった。
<ドックン>
リーゾックの心臓から、魔力が大きく弾け飛ぶ。
その心臓は……黒ずみ煙となり、二度と波打つ事は無かった。
黒い煙となり消え逝く混迷の魔術師リーゾック。
無となる過程で、力無く魔力が波打ちの終焉を迎える………。
その黒い煙が、最後に抱いた思いは………。
『【 身体に宿る2つの光……… 】』
『【 そうか、その施策を使われたのだな。
我らが王……堕天使ルシファー…… 】』
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