第49話【 魔物の巣窟 】
<ギィャッギギッ>
<グオゥッ、ギギッギギッ、バフウフウ、ギャオウ、ギギギッ、ゴリゴリジャリッ、グオゥ、グオゥッ、グルルルルー、ブシュッブシュッ、バフガグウ、ギャウッギギャウッ、グオゥグオゥッ、バホウッバホウッ、ブフーブガフー、ギャルルルル、ダホゥッホゥ、ギャギャギャブフー、ヴァググー、グオゥッ、ギギッギギッ、バフウフウ、ギャオウ、ギギギッ、ゴリゴリジャリッ、グオゥ、グオゥッ、グルルルルー、ブシュッブシュッ、バフガグウ、ギャウッギギャウッ、グオゥグオゥッ、バホウッバホウッ、ブフーブガフー、ギャルルルル、ダホゥッホゥ、ギャギャギャブフー、ヴァググー……>
突き刺さる様な、数多くの魔物の雄叫び………。
魔光石の淡い輝きが広がる空間に、数多くの魔物の雄叫びがこだまする。そこは見渡す限り……凶暴な魔物の姿で埋め尽くされていた。
彼等が飛び出た先は……、あらゆる魔物がうごめく……、広いダンジョンの中だったのだ………。
奥には激しく渦巻く赤いゲート………。
その横には………玉座の様な物に座る………崩れた身体の醜い魔物がこちらを見ながら鎮座していた…………………。
<ガグルルルー>
唸り声と共に、邪悪な魔力の波が飛んでくる。
<ドフンッ>
強烈で邪悪な魔力の波が、彼等の身体を簡単に突き抜ける。
戦意喪失……、そんな生易しいものじゃない。
死刑台に貼り付けられた様に身動きとれず、ただただ……目の前の光景を、弱者として受け入れるしかなかった………。
ここは比較的魔力濃度が穏やかなブルーモン領内にあるバルコリン地域。いくら魔力濃度が高いエレティコス秘境と言えど、それらを遥かに越えた魔物達が徘徊していい地域では無い………。
自分達の力ではどうする事も出来ない無力感が、クラウディーを押し潰す。
「レッドゲート……。バランスが……メチャクチャだ………」
各国のオートノミー管理局が躍起になって、地域毎の魔力濃度のバランスを把握し、討伐依頼や調査依頼を頻繁に繰り返して抑え込んでいたのは、情報収集により的確にハンターを配置する事によって、地域の安全を最優先に確保する為なのだ。
しかし……それが崩れてしまうと………。
ダンジョン内に生臭い臭いが漂い鼻を突く。
辺り一面魔物の肉片や血で埋め尽くされている。
ここでは、魔物同士の共食いがおこっている様だった。
玉座の様な物に座る、崩れた身体の醜い魔物。
その横にレッドゲートがある。繋がる先の地域の魔力濃度が、非常に強い事を示している色だ。
<ゴボオ……バチバチッ>
そのレッドゲートから魔物がバチバチと魔力に弾かれながら出て来た。
見慣れない魔物。ただ……カークスギルドの誰よりも……遥かに強いと分かるくらい、邪悪な魔力を放っていた。
玉座に座る崩れた身体の醜い魔物が、素早くその魔物に手を伸ばし、頭を掴んた。
<ギャウオオオー>
逃げようと雄叫びを上げる魔物。
しかし、醜い魔物の触手が素早く伸びて、胸に刺さり、その魔物のコルディスコアを心臓から簡単に引きちぎったのだ。
<ブチブチブチッ>
コルディスコアを抜かれ、投げ飛ばされる魔物。
触手の先に付いたコルディスコアを………、醜い魔物が自身の口の中に入れた。
<ゴクリッ>
食べたのだ………。
投げ飛ばされた魔物は……回りの魔物の餌となり形を失っていく。
クラウディーは、醜い魔物に目を凝らしていた。
「コルディスコアを食べてやがる……。何の為に………」
「魔物の巣窟……。ここはあのレッドゲートから出て来た魔物達で埋め尽くされた空間なのか………」
「それにあの崩れた魔物……、奴がここのボスか」
動く事すら奪われ、ただ立ち尽くす彼等の前に……。
<ドスーン、ドスーン……>
1体の顎の大きな魔物が彼等の前に出て来た。
強烈過ぎる魔力が身体から放たれており、身動き出来ないメンバー達。
魔物の名称はトロゴコング。クラスAに匹敵する凶悪な魔物だ……。腰には斧の様な武器を下げ、身体は何かの魔物の外骨格の様な物をまとっていて、強者の風格漂う出で立ち……。
特出するのは……知恵を持ち、考えて行動する魔物なので、クラスSが数人がかりでないと倒せないと言われている程だ。そして、骨まで捕食する為、トロゴと名付けられた経緯がある。
そのトロゴコングが、彼等の目の前で歩みを止めた………。
そして、醜く口を開ける。
<グオゥグオオゥッグギャオゥウオグ……>
聞き取れない魔物の唸り声が、メンバーをさらに恐怖へと引きずり込む。
<ギギギッギャウオオッグオゥグオオゥッ……>
クラウディーは、恐怖から来る苦痛に顔を歪めながらも、何とか頭の回転を保とうとしていた。
『な、何か喋っているのか?……』
玉座の様な物に座る崩れた身体の、醜い魔物が……指を伸ばし、何かを口ずさむ。
<ゴウルジャルル………>
すると、トロゴコングの目が赤く光り、何かに取り憑かれた様にこもった声でまた口が動き出した。
【 ……<グギッ>罪深き…人間…… 】
クラウディーの驚いた顔が、トロゴコングの赤い瞳に映っている。
「魔物が……喋った?………」
みんなは目を見開き、目の前で起こっている現象を理解出来ないでいる……。
色んな経験を積み、あらゆる資料や古文書等を見聞してきたが……喋る魔物がいるというのはみんな聞いた事がないからだ。
トロゴコングがさらに迫り、続けて喋ってきた。
【 小さな魔<グギッ>力を持つ……<ググゥ>罪深き人<グゥ>間 】
【 お前達に興味は無<ギギッ>い。仲間で殺し合い、最後まで生き残った<グギグゥ>奴は逃してやる<ゴグッ> 】
みんなの中に衝撃が走る。魔物が喋る事も衝撃だが、自分達を虫けらの様に扱うその言葉。
決して受け入れられない暴挙を、トロゴコングが凝視しながら、彼等の仲を試す様に吐き捨ててきたのだ。
危険な状況の中、クラウディーは必死に頭を整理していた。現状把握……。窮地に立たされていても、いくら恐怖にさいなまれていても、冷静さを失っては、先の道は見いだせないからだ。
『不自然な喋り方……』
『こいつが喋ってるんじゃ無い…。あの……奥の奴が操っているのか?……』
クラウディーは、レッドゲートの横、玉座の様な物に座る醜い魔物を睨んでいた。
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