第46話【 変形する体液 】
<ゴポッ……>
モリンシゴーレムの体液が、崩れ落ちて退路を塞いでいた岩石の手前で滞留し、至る所で集まり始めていた………。
<ゴボゴボッ>
「ダンジョンの高低差関係なく、至る所で体液が集まっていくんだ」
マイケルの表情は険しく、不自然にゆっくりと流れる体液を目で追っていた。
クラウディーはみんなの顔をゆっくり見渡す。
エル以外のみんなが元気な今、行動に出なければと考えていたのだ。
「このままここにいては危険だ。やがて体液から出る黒い霧でこの場は充満するだろう。」
「何があるか分からないが、進むぞ!!」
そのクラウディーの指示に、力強くうなずくカークスギルドのメンバー達。マスターの指示は命令ではなく、“ 生きる為の望み ” が滲み出ているのが分かっていたからだ。
ダンブールがエルを背負い、みんなと一緒にダンジョンの先へと進む。
後ろを警戒しているのは、クラスBで剣術士のマイケルと、クラスCで回復魔法剣士のリース。
みんなは警戒しながら、何が待ち構えているか分からないダンジョンの先へと進んで行く。
<ゴポッ…ゴポッ……>
後で滞留している体液が、波打つ様に振動している。
マイケルは、その動向が気になり振り返りながら注視していた。
『あれは何なんだ? いったい……』
「不気味ね……私達が到底勝ち目のないモリンシゴーレムが消えて、体液だけが流れ出るなんて……」
リースが心配そうに眉を下げ、その様に不安な思いが口から溢れ出る。
軽くうなずくマイケルは、滞留する体液を嫌う様に見つめていた。
「あぁ…。このまま消えてくれればいいんだけどな……」
<ゴプッ…>
<ゴプゴプッ…>
<ゴグプッ…>
「……えっ?………」
小さく溢れるマイケルの声。
滞留し集まっていた体液が至る所で変色しだしたのだ。そして赤黒い肉の塊になり、徐々に盛り上がってきた。
「な、何だ!? 嘘だろ……」
盛り上がった赤黒い肉の塊に……目や耳、鼻や口が……。そして、醜い手足が生えてきたのだ……。
「ひやっ…」
それを見たリースの口から、小さな悲鳴が上がる。
その数は………20体程に………。
<ゴポッ………>
「な、何だ? 分裂してたのか??……」
「ク、クラウディー、モリンシゴーレムは分裂してやがったんだ!! ヤバいぞ!」
マイケルは全体に警戒を呼び掛ける様に、大きく叫んだ。
「なにぃ!?……」
クラウディーは、今このまま戦う訳には行かないと判断し、とにかく前へ進む事を優先した。
「みんな走れ!!!」
それぞれがダンジョンの奥へと警戒しながら走っていく。
後ろでは……、赤黒い肉がモリンシゴーレムへと………。
1番最初に現れたモリンシゴーレムより遥かに小さいが、ゴブリンデフォーム程の大きさはある。
ただ、力の差がどれ程あるのか分からない……。
流動しだす皮膚や肉体。見え隠れするいびつな骨格………。
<ペタッ…………ペタッ……ペタペタッ>
醜く腕や足を伸ばし、2足や3足、4足や無数の手足と、形の違うモリンシゴーレムの群れが……ゆっくり歩き出す……。
地面を這いずる魔物、ダンジョンの壁に引っ付く魔物、そして……上まで登って行く魔物………。
<グオゥ、グオゥッ>
鳴き声なのか、うめき声なのか……それすら分からない音がダンジョンに響き渡る。
そして………。
<ペタッ………>
<ペタッ………>
<ペタッ………>
<ペタペタペタペタペタペタペタッペタペタペタペタペタペタペタペタッペタペタペタペタペタペタペタペタッペタペタペタペタペタペタペタペタッ>
這いつくばった様な醜い走り方で、突然勢いよく走り出した。
「……………は、走って来たぞ!! 逃げろ!!」
声を上げるマイケルの顔が……引きつっている。恐怖を煽るモリンシゴーレムの走り方に……怯えが増していくのだ。
クラウディーを先頭にして、必死に走るメンバー達とアルガロス、カルディア。
しかし……ここはダンジョンの中。
走り出して少しすると、広い空洞にはなっているが、行き場の無さそうな所へと行き着いてしまう。
クラウディーが回りを見渡しているが、岩ばかりなのだ。
「くそっ、道が…」
「行き止まりなの?」
ナイーサも同じ様に見回しているが、やはり無機質な岩ばかり……。
逃げ場の無い場所に追いやられたカークスギルドのメンバー達……。
後ろから迫る……、モリンシゴーレムの醜い姿が……、
みんなの瞳に映っていた………。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます