6 この世界では戦う必要がある(1)
二人と一匹は、街道を歩く。
プルクラッタッターは、もしかしたら、パピラターが魔法で歩きやすくしてくれるんじゃないかと期待していた。
だって、どう見ても10代の女の子が、こんなどっち側の先も見えない道を一人で歩くなんて大変なんじゃないかと思ったからだ。
だから、歩きやすくなる魔法か何かがあるんじゃないかと思った。
例えば、ちょっとだけ浮いてるとか。
もしくは、パピラターの靴に何かファンタジックな仕掛けがあって、……ちょっとだけ浮いてるとか?
プルクラッタッターはパピラターの足元をじっと見てみたけど、まあ、浮いている感じではない。
……ということは、こういう世界の人間だから、めっちゃ足腰強いのか。
「どうしたの?」
視線を感じたパピラターが、プルクラッタッターの方を振り返った。
「次の町まで、どれくらいなのかなって。思って」
「ああ、そうね」
ふむ、とパピラターは考え込む。
「このペースなら、1時間ってとこかしら」
「…………」
プルクラッタッターは、妙な顔をした。
もしその顔をパピラターが見ていたら、思い直してプルクラッタッターをここに置いて行ってしまうかもしれないような顔だった。
魔物と間違えられていたかも。
けど、幸いな事に、プルクラッタッターのその顔は、パピラターに見られることはなかった。
よかった。
プルクラッタッターが妙な顔をしたのには、理由がある。
パピラターが“1時間”なんて言葉を使ったからだ。
それは、私が知っている1時間と同じものなんだろうか。
こんな魔女が存在する世界でも、時間は時間なんだろうか。
それとも、何故か理解し会話できてしまっているこの状況を鑑みて、もしかしたらこの世界独自の時間事情が、プルクラッタッターの理解できる単位に勝手に翻訳されているのかもしれない。
もしくは……、この世界の人間が、実際日本語を話しているんじゃないかという仮説。
そんなことを考えていると、プルクラッタッターの顔は余計に妙な顔になる。
実際、プルクラッタッターが言葉を理解し、会話できてしまっているのは、この世界に落とされた時のギフトだった。
この世界では、もちろん日本語は使われていない。
この世界に落とされた時に、気まぐれな愛の女神からプルクラッタッターに渡された能力なのだけれど、プルクラッタッターはその時気を失っていたので、その事を知らないのだ。
気を失っていたせいで、結構大事な情報を知らずに生きなくてはいけなくなったプルクラッタッター。
ファイト!
◇◇◇◇◇
確かにわかりやすく翻訳されてはいるのですが、時間の計り方は同じだったりします。
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