5 相棒(2)
そのドラゴンは、やけにプルクラッタッターに馴れ馴れしかった。
どうしてこれほどこのドラゴンが馴れ馴れしいのかというと、まさに、プルクラッタッターがこの世界に落ちてきた時、プルクラッタッターの魔力によって生み出された存在だからである。
いわば、この子ドラゴンにとって、プルクラッタッターはお母さんなのだ。
この事実を知ると、プルクラッタッターは、そんな歳じゃないもん、なんて言うかもしれない。
実際、プルクラッタッターの歳なら子供が居なくても不思議じゃないしね。
けど、本当の本当に、このドラゴンはこの世界の存在ではなくて、プルクラッタッターが生み出した、プルクラッタッターの相棒なのである。
どうしてドラゴンの姿をしているのかというと、この世界で、このサイズで存在でき、この世界の人間が見ても違和感のない姿を取ったところ、こんな姿になったというわけだ。
真っ黒な身体。
真っ黒な翼。
小さな紅の角。
そして、その身体の大きさにしては大きな口。
尖った牙。
翼の大きな細身のドラゴンに成長するんだろうなと思わせるその風格は、なかなかのものだ。
それにしては、大きなどんぐりのような愛嬌のあるくりくりおめめは、確かに、プルクラッタッター由来のものだった。
「なっ……え?なんか……喋って……」
あまりの驚きに、プルクラッタッターが混乱する。
だって、不自然じゃないか。
あんなあまり器用じゃなさそうな口で、人間の言葉を喋るなんて。
中に人が入ってるんじゃないかと思うくらいだ。
着ぐるみみたいな作りじゃなくても、ほら、どこかにスピーカーが隠されているとか。
けれど、ドラゴンはどう見ても、その口で喋っていた。
「僕は、君の相棒ドラゴン、ロケンローだよ」
「ろ、ロッケンロー?」
なんとなく勢いで、こぶしを突き出す。
それはまさにロックンロール。
「違うよ、ロケンローだよ」
違うらしい。ロックンロールではないらしい。
ただの、ドラゴンのロケンローだ。
「相棒って言われても……」
そりゃあ、愛着もない見たこともない生物に相棒だなんて言われても困ってしまう。
「僕は、君から生まれたドラゴンなんだ」
言いながら、一緒に付いてこようとする。
「ちょ、ちょっと待って!一緒に行くなんて聞いてない!」
プルクラッタッターが困った顔をした。
「でも、僕はプルクラッタッターの相棒だ。一緒に居るのは当たり前なんだよ?」
プルクラッタッターの肩の高さで羽ばたくこともせず浮いているそれは、やれやれといった風にポーズを作った。
パピラターが、
「確かに同じ魔力を纏っているし、嘘はついてないんじゃない?」
と助け船を出したので、そこでやっとプルクラッタッターの警戒心が少しだけ薄れた。
確かに、こんなかわいいドラゴンが相棒だなんて、ちょっとかっこいいけど。
信じでも……いいのかな。
目の前の出来事に混乱する。
けれど、次の一言で、プルクラッタッターの心は決まった。
「僕が居れば、魔法が使えるよ、プルクラッタッター」
魔法が使える?
ってことは、もしかして、このドラゴンが私に与えられたチート能力だったりするんだろうか。
ふむぅ……有り得ない話じゃないな。
ここでこの小さな愛嬌のあるドラゴンを置いていって、チート能力も使えずこの世界で生きないといけなくなっても困るし。
「わかった。信用したわけじゃないけど、ひとまず一緒に行くことにしよう」
そんなわけで、二人と一匹のパーティーが出来上がったのである。
◇◇◇◇◇
相棒ができました。
ちなみに、ロケンローは男の子です。
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